No.13 刑事

No.13 刑事


少し時間を遡る。

パスリとウワンテは炎を対処してすぐに病室を出た。

「どこに逃げたかな」

「先輩、なんでわざわざあんなことしたんですか」

「あんなことって?」

「能力使って炎に突っ込んだことですよ。あんなの相手が適当に目眩しに放ったものなんだから、無視して、2人を直接追いかければよかったじゃないですか」

「それはお前にも言えることだろう?」

「うっ、それでも、なんですぐに追いかけなかったんですか?」

「それもだよ」

「うっ」

「まあ、理由はある。なんとなく、泳がせた方が良さそうだと思ってな」

「…これ、仕事ですよ」

「分かってるよ。それじゃあ、あっちの方からあの2人のオーラを感じる行くぞ」

「はいっ」

スッ

返事が終わった瞬間に2人はその場からいなくなっていた。

2人は足を止める。

「ここらでオーラの反応が消えた。あいつら、オーラを消すことまでできるのかよ。益々、何者か聞かないといけないな」

「そうですね、先輩」

2人はレイド達が隠れている倉庫の扉を見る。

「ここにいるなんてことはないよな?こういう場所は管理者権限が必要となるもんな」

「でも、わかりませんよ。ここでオーラの跡が途絶えているので隠れている可能性を捨てきれません」

「それもそうだな。開くか取り敢えず試してみるか」

パスリが扉に手をかざすと

ウィーン

扉が開いた。

「おいおい、開いちゃったよ。これまずくね?」

パスリはウワンテにそう振る。しかし、

「・・・」

ウワンテは無視する。

「…俺の冗談には付き合わない、と。取り敢えず入って探ってみるか」

(・・・いや、普通にこれやばいだろ)

心の中でウワンテはそう思ったが、心の中にしまった。ウワンテは、本当であればすぐに病院側に連絡を入れなければならない事案だということが頭に過ぎったが、なかったことにした。



そして、今に至る。

「なんかここにいる気がするな。俺の勘が言っている」

入ってすぐにパスリは言った。

「真っ暗ですね」

「無駄なエネルギーは使えないからな。俺がオーラを感覚範囲を拡大させるから」

「はいっ頼みますよ、先輩」

「お前ちょっと俺のこと舐めてね?」

そう言ってパスリは部屋の中を探り始めた。

(見事に気配を消しているが無駄だぜ)

パスリはトコトコとゆっくり歩み始める。

「み〜つけたぁ」

パスリはホラーのような煽りでレイドとヒメカの2人に声をかける。

(見つかった!!)

物陰からパスリの顔が出てきて、レイド達のことを覗くように見ている。

「くぅぅ」

レイドはオーラを纏う。

「抵抗しない方がいいぞ」

パスリは警告しながら、先に能力で出した棒を持って構える。

レイドはヒメカを自分の後ろに守るようにして、自分の内側に寄せ抱き抱える。

レイドも能力を発動させる。

“剣の魔法(ソードマジック)”!!

右手に剣が具現化される。

右手に握っている剣は、長さは短剣より少しぐらい長く、刀身の太さは刀よりも太いぐらいだったが、刃の先が特殊な形をしていた。なんと、刃の先が丸みのある感じで欠けていたのだ。刃先が丸みを帯びている形をしてるのではなく、その逆の形をしていた。だが、剣は全体的に人に不思議や探求などを印象付けるような色をしていた。

(なんだ、この剣は?初めて見る)

間違いなく、この場で1番驚いていたのはレイドであったことは確かではあるが、謎の意味のわからない形をした剣を構えられたパスリも驚きと疑問が隠せない表情をした。

パスリは「その形に意味はあるのか」と直感的に考えた。しかし、そんなことを考える必要は

ないと体を動かした。

スッ

本当であれば、警察側の人間なのだから、捕縛と防衛以外に武力を行使してはならないが、本人の勘が攻撃して先手を打つべきだとパスリの体を、腕を、動かした。

スッ

レイドは、剣を横に構え、受けて立つ姿勢を見せる。

スススッ

パスリの棒とレイドの剣が交差した時だった。

思いがけない光景が2人の目の前に映り込んできた。

交差はずだったパスリの棒が、剣と接触したと思われる部分からまるでネギを切ったかのように棒の先が切れ、切れ端が宙を舞う。

「「!!!???」」

棒を振り下ろしたパスリも驚いたが、1番驚いていたのは、能力の主でありレイドだった。

(どういうことだ?あの棒は多分オーラでできているが、だかはと言って、棒を綺麗に切ることなんて…)

レイドがそんなことを分析している時に、自分の剣が目に入った。

そして、また驚かされた。

(そういうことだったのか!)

レイドの目線の先にある剣を見てみると先程よりオーラが増していた。

(この剣はオーラを吸収するんだ!)

だが、レイドはゆっくりと考察している場合ではなかった。

すぐに、自分が未知なるものと遭遇し、それについて頭を使った時間を使いすぎたと反省し、次の動きに移る。

スッ

レイドは中腰だった腰を上げる。

シュッ

それを見ていたパスリはすぐに反応し、剣を振り上げ対応する。

スッ

しかし、レイドが自分に接触するだろうラインをすぐに見極め、吸収の剣で棒を斬りつける。斬り付けられた部分は吸収の剣にオーラを吸収され、棒は吸収された断面で引き離される。

それによって、棒はレイドに届かず、攻撃は不発に終わる。

それを剣の能力の理解を終えていたレイドは隙を逃さずに立ち上がった勢いから、左脚でパスリの腹部に突き蹴りを喰らわせる。

スッ

ドッ

「グッ…」

なんとか、その場に耐えるパスリ。

スススッ

ドンッ

そこに右脚の回し蹴りをレイドは追撃する。

この攻撃でパスリは後ろに吹っ飛ばされる。

ビュンッ

ドカッ

壁か何かに背中を激突させた音が聞こえた。

「逃げるぞ、ついて来いヒメカ!」

ギュッ

レイドは物陰から出てきていたヒメカの手を掴み、左腕で抱え、その場を脱出する。

ヒュンッ

スッスッスッ

倉庫から出たレイドは迷わず階段の方にヒメカを抱えながら、走っていく。

ヒュンッ


その一瞬の間、パスリ達はというと、パスリが背中を痛がるように抑えていた。

「ウワンテ、お前なんで追いかけねぇ」

「あんな痛いげな少女を俺みたいな大人が追いかけられるわけないですよ、先輩」

「これが俺達の仕事なんだから、最低限の役目は果たせ」

「はーい。次からしまーす」

「はぁぁ。まあ、お前は次からしますと言ったら次はちゃんと働くからな」

「どうも」

「褒めてるように見えたか?」

「はい」

「それはよかったな」

「早く、追いかけないと。もうこんな話してるせいですよ」

「お前がきっちり追いかけとけば俺はお前のオーラを追うだけだったんだよ」

スンッ

そうパスリは愚痴を垂れながら、2人はその場から移動した。2人のオーラのする方に走り出した。


その頃レイド達は、階段の踊り場にいた。

「なんで階段が?」

「わざとだ。どの建物にも非常用として階段はある」

レイドはそう言うと踊り場にある窓を正四角形型に斬りつける。

すると、窓に纏わされていたオーラが剣に吸収され、無くなった。

「これでここの窓はただの窓になった。窓も纏の力で管理されてるからな。おっとこんなことを話してる場合じゃない」

レイドはそう言って、パリンッと音を鳴らして窓を割り、抱えていたヒメカを雑に外に投げつける。

ポイっ

「えっ?」

ヒメカは建物中にいるレイドに視線を送る。

「頑張ってオーラでガードしろ!俺もすぐに行く」

そんな言葉が帰ってきた。

「えーーー」

ヒメカが絶叫しながら、病院の窓から下に落下していった。

(俺も早く行かねぇと。あの2人が来ちまう)

レイドは窓際にある自分の痕跡であるオーラの通った後とも言えるオーラの跡を剣で吸収し、痕跡を消していく。一見言葉で表すと丁寧にやっているように見えるが、実際は5秒もかかっていない作業だった。この作業が終わり、窓際の細工が終わると、今度は踊り場から一気に下の階にまで飛び降りた。その飛び降りた階から、思いっきり腿と脹脛にオーラを込めて、先にヒメカを投げた窓に向かってジャンプする。

ボワワワン

ドンッ

そのままの勢いで、レイドも窓から飛び降りる。

シュゥゥゥゥゥーーー

と、レイドが読者から見て意味のわからない行動を終えたところで刑事の2人が到着した。異常な感覚がしたため、2人は止まる。

タッ

タッ

「窓が割れている」

パスリがそう呟く。

「外に逃げましたかね」

ウワンテがパスリに問う。

「ブラフの可能性もある。俺達に外に逃げ出したと敢えてアピールして、本当はまだ中にいて、逃げる備えをしているのかもしれない」

「確かに、その線も捨て切れませんけど、明らか過ぎませんか?ここからオーラの跡が途切れてますよ。いくらオーラを断てるからと言っておかしくないですか?」

「まあ、おかしいな。不自然だ。踊り場からは階段を全部飛ばして次の階に飛び降りている。で、その後の痕跡を確認するとオーラの跡はない。だが、踊り場に残っている跡には、窓際で何かしたようなものはない」

「まず窓を割るなんて普通できませんよ?耐熱、耐冷、対物衝撃などなどの特殊効果コーティングされてますから、そうそう攻撃が通じるとは思えませんけど」

「多分、奴が持ってた剣によるものだろう。俺の能力も何故かこの有様だからな」

「見事に切られてるー」

「呑気な言い方だ。俺は最初、能力の無効化みたいな能力かと思った。じゃなきゃ、能力干渉の関係からおかしいからな。一応、俺の能力はそういうやつだから」

「そうでしたっけ?」

「…話を続けるぞ。おそらくだが、奴が最後に出していた剣は、能力を無効化するものではない。無効化なら、触れた瞬間に俺の能力が全て解除されなければおかしいからな。結論としてはオーラに干渉する性質をあの剣は持っているのだろう。吸収、強制一部切断などな」

「原理はわかりましたけど、こんな悠長にしてていいんですか?追いかけなくていいんですか?」

「いや、いい。どうせ窓から逃げて俺達の目の届かないところに行った。どの選択でも俺達がこれから奴らを見つけるのは至難の技だ。だから、追うだけ無駄だ」

「了解。でも、あの2人だって逃げても無駄なことぐらい分かってるのになんで逃げるのかなー。警察は彼の住所は把握済みですから、自分の住居に帰るようなら一発でわかりますよねー」

「分かっていても逃げざるおえない理由があるんだろうな」

「どうしますか?すぐに行きますか?」

「いや、少し泳がせて様子を見る」

「でも、そんなことしたら調査部隊が来ますよ」

「そんなことは分かってる。だが、なんだかあの2人の様子を見てるとことを大きくしないほうが良さそうな気がする。だから、俺が後で警察の方に連絡して、俺達の担当ままことにあたらせてもらうことにする」

「そんなことわざわざするんですか?先輩らしくないっすね」

「なんか嫌な予感がするんだよ。他の奴には任せられねぇ」

「この時代にこんな珍しいことも起きるんですね」

「あの2人がそれだけイレギュラーな存在だと証明しているようなもんだ」

パスリは最後にそう言いながら、割れた窓を見つめた。

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