No.14 帰宅

レイド達は刑事の2人に追われながらもなんとか逃げ切ることに成功し、レイド宅にいる。

「ふーなんとかなった」

レイドは椅子に腰をかける。

「お疲れ様ー。病み上がりなのに大丈夫だった?」

ヒメカが心配そうにして、レイドに近寄る。

「まあ、今は取り敢えず」

レイドはそう言って、先の出来事を思い出していた。

(あの吸収の剣は初めて見た上に、中々当たりだったな。まさか、俺にもまだ見たことない種類の剣があったとはな。この調子だと、まだまだありそうだな)

そんなことを思っていた時だった。

ピンポーン

チャイムが鳴った。

「えっ??!!」

ヒメカが不安そうな顔をする。

それを横で見ていたレイド。

(今までにこれでさまざまなトラブルが起きてきたからヒメカが身構えるのも分かる)

レイドはそんなことを思いながら玄関に向かう。

空中にフィールドを広げ、チャイムを押した人物を確認する。

「ただいまーーーー」

そこにはレイドにとっては、当たり前の人物がいた。

レイドは玄関まで行く。ヒメカも来るように言う。ヒメカは首を傾げながらも、レイドの言うことならとついて行く。

ウィーン

玄関のドアが開く。

そこには1人の女性が立っていた。

その女性は沢山の荷物を抱えている。

身長はレイドよりも少し低い。髪の色は茶色。髪型はショートで、前髪はデコを出すように分けている。

「ただいまぁ!」

「おかえり、母さん」

玄関のドアを開けた人物はレイドの母親だった。

「・・・お邪魔してます」

ぺこり

ヒメカはレイドの後ろからひょこっと現れて、レイドの母に挨拶をし頭を軽く下げる。

「あらぁ〜。あなたがヒメカちゃんねー」

「はい?」

「あなたのことはレイドに聞いてるわー。まあ、帰り道で初めて知ったんだけどねー。でも、よろしくねー」

「わ、私こそここに居候させてもらってる身なので…よろしくお願いします。改めて自己紹介させてもらいます。ヒメカ・プリンセスです」

「こっちこそよろしくねー。あたしの名前は、マイヤ・マジア!よろしくね、ヒメカちゃん」

「はいっ」

ヒメカは元気よく返事をする。

その様子を見て、微笑むマイア。

「取り敢えず、母さん中に入りな。荷物は持つし」

「あら、ありがと」

レイドは母の手荷物を代わりに持つ。

「これって…」

「お見上げ。後で、ヒメカちゃんも交えて開けましょ」

「いや、母さんは行ってきたでしょ」

「いいでしょうー」

「クスクス」

こんな親子の会話を見ていたヒメカがクスクスと笑い始めた。

「どうした、ヒメカ?」

「…いいなーって思って」

ヒメカはどこか遠くを見るように言った。

グッ

マイアは一気にレイドの耳元にまで頭を移動させる。

ボソボソと耳打ちをする。

「彼女、何かあったの?一応、ある程度のことはあんたに聞いたけど」

「まあぁ…早くに母親に亡くしてるらしい」

「そっか…」

「詳しいこと後で」

「よしっ!!」

マイアは突然を気合を入れるように拳を握り、大声を出す。

耳元でいきなり大声を出されたレイドは耳を塞ぎながら、微妙な顔をする。

その様子を見ていたヒメカは首を傾げながら、何をしているのだろうかと不思議そうに見ていた。

トコトコ

まだ荷物を抱えたままの状態でマイアはヒメカに近づく。

ガシッ

マイアはヒメカの方に腕を置く。

「これからあたし達は家族みたいなものよ!遠慮は要らないわ!」

「・・・」

この時、ヒメカが何を思ったのかは誰にも分からなかったがマイアに言われた言葉に少しだけ目を見開いて、すごく嬉しそうな笑顔の表情をする。

それをマイアは飛びっきりの笑顔で返す。

その様子をレイドは外から見ていた。

(少し、気がかりだったことだったが、杞憂に終わったな)

レイドは2人の微笑ましい様子を見ながら、目を閉じた。

レイドが目を閉じている間にマイアはチャンスとばかりにヒメカに今以上に接近し、耳打ちをする。

「2人の関係はどこまで進んでいるのかなー?」

ボッ

ヒメカは顔を赤くする。

「な、なんのことですか?」

ヒメカはレイドに聞こえないぐらいの小さな声で聞き返した。

「何言ってるの、そんなこと言ったって誤魔化せないわよー。あたしには分かる。2人はもうお付き合いとかしてるでしょ。もう、行くとこまで行ってるんじゃないのぉー?」

ニヤニヤとした表情でマイアはヒメカを攻める。

「わ、私達はそんな関係じゃありません。…今はまだ」

「ふふっちょっとからかってみただけだから」

「ん〜」

ヒメカは少し頬を膨らませて、「マイアさん意地悪ー」みたいな表情をする。

(ヒメカちゃん可愛いーー)

マイアは頭の中ではそんなことを思っていたが、声には出さないように我慢していた。

「ヒメカちゃんのことはあたし達がしっかりと面倒見るからねー」

「はいっありがとうございます」

「あーこれが娘ができた時の気持ちかぁ〜」

「あああ、マイアさん気が早いですよ」

「えーだってぇー」

ヒメカは少し照れた表情で、マイアを止める。本当に止めているとは思えない感じであったのは多分、第三者なら当然気づいただろう。

もちろん、目を閉じてすぐに目を開けて2人の様子をじーと眺めてたレイドも気付いていた。2人の様子を見て、レイドも少し恥ずかしくなった。

「レイド、あんた学校は?」

「え、母さん警察とか病院とかから連絡来て学校に休みの連絡入れてくれてたんじゃ…」

「ん?なんのこと?」

「まさか…」

「あーなんかやたらTELがあったけど、あれかー」

「じゃあ、俺無断欠席になってる上に、かなり学校に心配されてる?」

「まー大丈夫よー。今から休みの連絡入れるから」

「・・・」

マイアが学校にTELをかけて、休みの連絡を入れる。

(今更、連絡入れて意味は本当にあるのだろうか…)

レイドはそう心の中で思ったが、口には出さず心に留めておいた。




次の日。

「おはようーー」

朝からマイアの元気な声が室内に響く。いや、正確なことを言うと、部屋外から音が通る筈のない音断設備が壁には整っているから本当は声など届く筈がない。

何故、声が通り、響くのかと言うと…

「ちくしょー」

レイドは朝起きて早々に自分の部屋と母親の部屋との間に空いた穴を見つめていた。

(これが無ければ母さんから俺に対して直接的な接触がなくなるのに)

そんなことを思いながらレイドは昨日の寝る時のことを思い出していた。


「え、ヒメカちゃん、レイドと一緒に寝たいの?」

「はいっ。昨日も一緒に寝てましたし」

スッ

マイアは目線をレイドに移す。

「あんたこんな純情な子に何を吹き込んだの?」

マイアはジーと睨むようにレイドを見つめる。

「ち、違いますよ、マイアさん!私から望んだんです!」

ヒメカが必死に訂正を試みる。

「えっ、そうなの?」

「はいっ。なので、今日もレイドと一緒に寝たいです」

「でも、2人でシングルベットで寝るのは流石に狭いわよ」

「それがいいんです!」

ニヤッ

「なるほどねー。なら、止めないわよー」

ニヤニヤとしたマイアの表情を見て、やばいと察したレイドの嫌な予感は間違っていないことは先のこととこれからのことからも分かるだろう。


穴を見つめていたレイドは隣で寝ていたヒメカを起こし、部屋を出てリビングに向かう。

トコトコ

「おはよう」

「ムフフ、あなたたちまだ若いのにかなり行動的なのねー。お母さんびっくりしちゃった。まさかあなたにこんな可愛いお嫁さんが来るとはー」

ニヤニヤとした顔でマイアは言う。

「気が早いって」

「えー、夜あんなことしてたのに〜?全部、筒抜けだったわよぉー」

マイアはレイドにいじらしく攻める。

「・・・」

レイドは無言で椅子に座る。

「ちょっと無視しないでよー」

かまって欲しそうな声を出すが、レイドは無視する。

(この人は、いい歳こいて何やってんだか。いくつになっても心は乙女ってか)

そんなことを思っていながら、一声を出す。

「今日も学校休む」

レイドはマイアの話を無視して、ポツリと

「はぁ?何言ってるの?今日は特に何もないでしょ?」

「昨日、事情は話したでしょ。ヒメカを守るって約束したし、俺が学校に行ってる隙に何があるかわからないし」

「へぇーあなたにやりたいことがー」

マイアは特にレイドのいうことを咎めたりせずに、逆にレイドの発言に関心したような態度を示す。

「いい?」

「好きにしなさい。あたしは今日から仕事あるからいないけど。学校の方にはなんとか言っておくから」

「ありがとう…」

「あなたの生き生きとした顔を見るのは久しぶりだからね。それに、ヒメカちゃんのことも心配だし任せた!」

「おうっ」

その後、すぐにヒメカがまだ眠そうに目を擦りながら部屋に入ってきた。

「おはよう」

「おはようー。ヒメカちゃん、ああいうことはもっとあたしにバレないようにしないとね」

カァァァ

「バ、バレてたんですか?」

「当たり前でしょ?壁に穴空いてるんだから」

カァァァ

ヒメカは両手で自分の顔を恥ずかしそうに隠す。

朝はこんな会話をした。


母が仕事で居なくなって、レイドはある実験を始めた。

シュッ

光り輝く薄黄のレイピアがレイドの手元に現れた。

「光の剣か。これは見たことあるな」

レイドは剣を見つめてこれではないという表情をして首を横に振る。

「レイドは何をやってるの?」

ヒメカがその様子を見て、不思議そうに話しかける。

「ああ、ほら病院でオーラを吸収する剣を使っただろう?」

「うん」

「あの剣あの時初めて具現化したんだよ。俺、剣はもう大体全部把握してるつもりになってだんだけどもしかしたら、まだ、じぶんの知らない剣があるかも知れないと思ってとりあえず剣を出しまくって見てるんだ」

「あーそうなんだー。その今手に持ってる細い剣はどんな剣?」

「これは光の剣。いや、正確にはレイピアか。能力は光を操る。光の速さでの移動、発光、発光熱とかぐらいかな。使い勝手はあまりよくないな」

「光の速さで動けるのーー?それすごい力なんじゃ…」

「いや、直線運動にしか使えないし、コントロール効かないし、正直、あたりではないかな」

そんな風に言ってるうちに光の剣を捨て、次の剣を具現化する。話してる最中もずっとレイドはその作業を繰り返す。

シュッ

「どの剣ならあたりなの?」

「氷と鉄は当たりかな。応用がかなり効くし、使いやすいから。形の構成がしやすいんだよなー」

シュッ

「へぇ〜。出現確率の高い剣とかもあるの?」

シュッ

「比較的に炎、雷、水、植物、風、岩石の剣は出やすい」

「他に剣は何があるのー?」

ヒメカは興味深々な態度である。

「俺が知ってる限りだと炎、雷、水、植物、風、砂、岩石、酸化、老化、若化、磁力、鉄、氷、促進、液状化、気体化、光、闇、乾燥化、重力、引力、浮遊、空間、この間把握したばかりの吸収などなどだな。まだ言ってないだけで把握してるのもある筈だ」

「結構色々あるんだ」

「ああ、だから中々この能力は使い難い」

シュッ

「こ、これは?」

「どうしたの?」

ヒメカが問いかける。

レイドは自分が右手に握っている剣を見つめている。

「見たことない剣だ…」

(こんな頻発して、俺が把握しきってない剣が出るとは…剣の出すだけでもそれなりにオーラ食うからなぁ…)

レイドは自分が見たことない、使ったことのないその剣をマジマジと見て観察する。

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