No.11 拘束

No.11 拘束

レイドはスハイに向かっていく途中に左手に握っている鉄の剣から鉄の塊を出し、投げつけ、移動しながらも攻める姿勢を崩さない。

レイドと違い、何の訓練も受けていないスハイやコテはこの状況に自分の体をどう動かせばいいかわからない。それによって動きが少し鈍くなり、最善の手を打てない。

(思ったより避けられてるな。大分攻撃してるんだけどな)

レイドは冷静な分析をしながら少しずつ距離を攻めながら詰めていく。

(くそっ避けるので精一杯だ)

スハイがそんなことを思っている時だった。

スッスッ

スハイの目の前に鉄板が突然現れ、道を塞ぐ。

「ぐっ…」

レイドがスハイの道を塞ぐように鉄の板を投げ込んでいたのだ。

「そろそろ終わりだ」

「くっ…」

スハイは鉄板を避け、横に逸れて逃げようとする。しかし、

「逃しはしない」

シュゥゥゥ

右手に握っていた風の剣で小さな竜巻をお越し、スハイを空に巻き上げる。

ドサッ

鈍い音がしながらスハイの背中が地に叩きつけられるように落ちる。

「ぐはっ」

スハイが地面に叩き付けられた感覚から意識を戻し、目を開いた時、目の前にレイドが無表情で立っていた。

「拘束させてもらう」

レイドの振り下ろされた左手の鉄の剣からH型の鉄板の塊がスハイの腕と脚を拘束する様に地面に打ち込まれる。

「これであんたの動きは封じれたな。次はあっちだな。あっちは制約で動けないからな。あんたがいなくなれば牽制も意味もないしな」

「お、お前そこまで読んで俺から…」

スッ

スハイの言葉を無視してレイドはコテの方に向かった。

(こいつら自分達のやってること理解しているのか?おかしいと思わないのか?マインドコントロール…)

レイドは思いっきり左腕を振るう。そこから、多くの板状の鉄の塊がコテに襲い掛かる。

シュシュシュ

コテはなんとか避け切る。そこで、コテは違和感を覚える。

(何故、これだけ放たれて攻撃が当たらない?)

そんなことを考えているうちにレイドはコテの手元に入ってきていた。

スッ

「くっ…」

(俺の能力で触れれば…)

コテは前に右手を出して、レイドに触れようとする。しかし、ほの手がレイドに届くことはなかった。

スッ

レイドの目の前に大きな鉄の板が現れる。

コテはその鉄の板に触れる。しかし、何も起こらない。その板はそのまま勢いよく押し出され、コテを押し飛ばす!

「ぐはっ」

ドサッ

コテが仰向けに倒れ込む。その瞬間をレイドは見逃さなかった。

スッスッ

グサッグサッ

すぐに手元でスハイを拘束した時と同じ型の鉄を具現化し、それを風で操り、コテの腕と脚を押さえ込み無力化を図った。

「これで取り敢えずはいいか」

「ぐっぐっ」

コテが必死に踠き拘束から逃れようとしている。

「力が強くてもちょっと時間かかるように挿しておいたからそう簡単には抜けないよ」

「・・・お前、俺達がこんなことしたのにも関わらず、さっき投げ込んでた鉄の板俺達にわざと当たらないように投げてたよな」

コテは抵抗を諦めた後、少しの間の後、レイドに聞いた。

「そうだよ。あんたらはただ利用されただけだから、傷つかれるいわれもないだろ」

「・・・俺達はやっていけないことをしたそれがわかっていたから、闇雲にだが動いた」

「なるほど、地球人にもまだそう言うもんが残っていたのか」

(それだけじゃあんたらの必死さは説明できないが、ヒメカの父親が関係してるんだろうな)

「あれの解除法とかって…」

レイドはヒメカが閉じ込められている指差してコテに問う。

「知らない。スハイ…あっちのやつも知らない」

そう答えるとコテは軽く目を瞑る。

「分かった」

レイドは両手に握っている剣にオーラを込める。そして、ヒメカが捕われているボックスに攻撃する。

風による竜巻、斬撃、風圧。

鉄による物理攻撃。

いくら風の力をぶつけても、いくら鉄の塊をぶつけてもびくともしなかった。

「ヒメカ大丈夫か?」

捕われているヒメカにレイドは声をかける。

「うん、大丈夫。ついさっき体も動かせるようになったし」

「そうか」

チラッとレイドはコテの方を見る。

(つまり、こいつの能力は解かれたわけか。奴がキープしてたギリギリの距離から最後は吹っ飛ばしたからな。それで、制約が破られて能力が解除されたんだろうな。だが、このボックスはどうか。さっきのオーラを喰う幻獣のこともあるし)

レイドはその後、別な剣を具現化して試してみる。

・・・

時間だけが経過し、依然状況は変わらずにいた。

「ダメか…俺のオーラもかなり少なくなってるし、そろそろ警察来るだろうし、どうするかな」

レイドは左手に鉄の剣をキープし続けた。右手の剣を変えて挑戦していた。今握っているのは炎の剣である。

ボワン

レイドは異質なオーラをマンションの上階から感じ、上を見上げると、さっきレイドの住んでいる一室に現れた幻獣がレイドに向かって落ちてきていた。レイドの視界にもしっかりと幻獣が映る。

この時、レイドは目を一瞬見開き、幻獣を見て何かを閃く。

(あいつの特性はオーラを喰うこと…もしかしたら…具現化の物質系なら…)

ビューーー

ギィャャャャァァァ

バシッ

空から降ってくる幻獣をレイドは炎の剣で払い、地面に叩きつける。

それでも、幻獣の勢いがなくなることはなかった。すぐに態勢を整えて、レイドに向かってこようと構える。

「お前がなんの目的で創られた検討はつかないが、利用させてもらう」

レイドは薄気味悪い笑みを浮かべる。

ボワワン

そして、右手に握っている剣に大量のオーラを込め、集中させる。

それに反応して、幻獣は大量のオーラよ放たれている剣に噛みつく。

(予想通りだ。お前はオーラをより強く感じるところにいく)

レイドは噛みつかれたままの剣を

ダダダ

バンッ

ヒメカが捕われているボックスに押し付ける。幻獣と共に。

ガブガブ

幻獣は剣を喰い尽くそうと必死に噛みつき続ける。すると、レイドが無理やりボックスに剣わ押し付けていたこともあり、剣と共に巻き込んでボックスに幻獣がガリガリと齧りつくようになった。

「そうだ、いいぞ。一緒な喰らえ」

すでに剣はやつに大半を喰われたが、そのあと幻獣は夢中でヒメカを捕らえているボックスに齧りつく。

ガシガシガリガリ

「ヒメカ、俺の声の聞こえる方とは逆の奥の方に身を寄せてくれ」

「分かった」

「ボックスには出入り口がない。つまり、能力を解除するしかヒメカを救う方法はないと思っていた。だが、この幻獣はオーラを喰らう。具現化した物質系は、制約は軽いものが施されているのが多い。これもそれに準じていた。だから、試させてもらったら、案の定この幻獣が喰らい付いて、このボックスを破ってくれそうだ」

バリバリと幻獣はボックスを齧り続けて、ボックスに穴が空く。そこからこじ開けるように幻獣はボックスを喰いつくしていく。

ボリボリバリバリ

ボックスに大きな穴が空き、そこからヒメカの姿が露わになる。その様子をレイドは見て、すぐに声を掛ける。

「ヒメカ、ちょっと待ってろ!」

「分かった!」

ヒメカから返事が来て、レイドは頷いて歩き出し幻獣に近づく。

幻獣はすでに足元周りのところまでボックスを喰らい尽くしていた。

それを見て、レイドは判断した。

左手に握っている鉄の剣にオーラを集中させ、幻獣の口の中に差し込むように突っ込み、そのままヒメカとは反対側の方に振り払う。

「ヒメカ、ここから出るんだ」

「うんっ」

タッタッタッ

レイドの声に反応して、ヒメカは幻獣が開けた穴からボックスの外へ出る。

「後はお前の処理だけだな」

レイドはそう言って、幻獣を見る。

(どうすればこいつは消える?前のやつみたいにヒメカが触れれば能力が解除されるのか?いや、その可能性は低いか。なら…)

レイドは鉄の塊を幻獣に投げつける。幻獣にダメージのようなものはない。

(とにかく試すだけだ)

「ヒメカはもっと離れてろ」

「うんっ…」

「?どうした」

「レイド…」

「俺のことは気にしなくていい。オーラはだいぶ少ないけど、それ以外はなんともない。一番はヒメカの安全だからな。だから、離れててくれ」

「分かった」

ヒメカは返事をして、レイドの元から距離を取るために駆け出し離れていった。

「いくぞ、幻獣」

レイドは右手に剣を具現化する。ノーマルな西洋にあるような長剣が現れる。ゲームなどで多様化されるような見た目をしている。しかし、刀身は薄い緑色をしており、鍔は植物の蔓のようなものが巻きついているものが担っている。

(植物の剣か)

・・・

この後、レイドは何本か剣を出し、幻獣に触れて確かめてみるが、幻獣が消えることはない。

(やはり、前と同じようにヒメカが...ん?この幻獣はオーラを喰らうんだったな。なら、もしかしたら...)

レイドは自分の残っている少ないオーラを両手に持っている剣に注ぎ込む。

その両の剣を幻獣に投げ込む。

シュッシュッ

それは口の中に刺さる感じで入る。

カキンカキン

実際は刺さってない。

そして、レイドは幻獣に向かって走り出す。

(試してやる!お前がその剣で少しだけ動きが鈍くなっているところをつかせてもらう!)

タッタッタッ

ポンッ

レイドは右の掌が幻獣に触れる。

ホワン

幻獣はそして煙となって消えた。

(前の幻獣もそうだった。幻獣の目的となるものの対なるものに触れると能力が解除される。前のはヒメカ以外を対象としてたから、逆にヒメカが触れれば解除された。今回のは、オーラを喰らうことを対象としていた。だから、その逆に俺がオーラを纏っていない状態で幻獣に触れてみたら消えるんじゃないかと睨んで触れてみたが、正解だったようだ。纏の技術で体に纏わせるオーラを断ち切るものがある。それを使った。正直、生命を維持するために発せられているものがオーラだから、長時間体のオーラを断ち切ると、体に異常が出たりするらしい。まあ、オーラが極端に少なくなっても言えるが)

レイドがそんなことを振り返りながら思っているとヒメカに声をかけられる。

「レイドぉー」

声をかけながらヒメカはレイドに近寄っていく。レイドも言葉に応えようとする。

「ヒメ…」

レイドは言葉を言い終える前に体が脱力するように重心を崩す。

(あ、そうだった…俺、かなりオーラ使ったんだった…オーラが少なくなり過ぎた…さっき自分で言ってたのに…)

レイドはその場に通れ込んでいく。

先の思い言葉はレイドが意識を失う前に過ったものである。

ドサッ

レイドは地面に倒れる。

「レイド!!」

ヒメカはレイドに近寄り、少しレイドの体を揺さぶる。

「レイド、大丈夫??大丈夫??」

レイドの消えそうな意識中、ヒメカの言葉が頭に響く。

倒れた直後は開いていた目も地面に倒れてから、次第に閉まっていく。

ゆっくりとゆっくりと。

そして、レイドのまぶたが2つとも閉じ、光を閉ざした時、レイドの意識は完全に亡くなった。

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