No.3 奇跡
「レイド、お願いがあります。私を守ってください。そして、父の野望を阻止するために私に手を貸してください!」
ヒメカは身を乗り出して、勢いよくレイドに向かって力強く言葉を発した。
「…俺はそこらにいるただの中学生だぞ。もし、お前のいうことが本当なら俺なんかじゃ対処することなんてできないだろ」
レイドは冷静な言葉を投げる。
「そんなことはありません!」
「なんでそう言い切れるんだ?だって、俺はお前の話だとたまたま助けたに過ぎないだろ?」
レイドは少し不満そうな表情をしてヒメカに聞き返す。
「そういえば、まだ話していないことがありましたね」
「話していないこと?」
「はい。私が何故、あんなところに蹲っていたのかという理由です」
(たしかに、今までの話だとあそこにまで筋が完全に繋がらない)
レイドが顎に手を当ててそんなことを考えているとヒメカが口を開き話しを始める。
「私は父の怪しい言動を見て行動することを決めました。まずは、施設から出ることを決めました。あそこにいたままでは何もできず、何も変わらないと思ったからです。そして、私はある日施設から脱出する計画を実行しました」
「脱出…」
「私は施設がどこにあるかなどの細かい状況を知りませんでした。なので、兎に角闇雲に施設を片っ端から調べまくりました」
「…ほんとに好奇心旺盛だね」
レイドは無表情で言う。
「そしたら、流石に私の行動に怪しさを感じたのか、父が動き出しました」
(この子、アホの子か何か?確かに、見た目はちっちゃいけどこんな感じの雰囲気…いや、朝食の様子やベットのことを考えると全然あり得るか。流石に考えてなさすぎるだろ)
「私は父の能力か科学か何かよくわかりませんが創造して作られた纏(とう)の幻獣?に追いかけられました」
え?!ここにきてやっと纏について話題が出てきた!このタイミングで??1話の冒頭で説明的に出てきたのにも関わらず、1話2話と全く話題にすら出てこなかった纏がやっと!!
ごほんっ。俺が今思ってたことはなかったことにしてくれ。
「私は必死に逃げました。その結果、施設の1番端っこにたどり着くことに成功しました?」
(ん?なんか違和感あるような…気の所為か?)
「そしたら、そこにドアがあって開けることができたので開けてみたら目の前には海が広がっていたんです。よく見たら私が住んでいた場所は岸壁の上にあったんです!施設の高度は思った以上に高く、下の海までかなりの距離がありました。私は少し身を乗り出して下を見ました。正直、これはいけないと思いました」
(今の話を聞いた限りだとどこかの孤島かなんかにいたのか?でも、今までの経緯を孤島に住んでいて崖の上に施設がある、そして、周りに海が広がっていてそう簡単には逃げれないと考えると…)
レイドがそんなことを頭で整理していると
「話ちゃんと聞いてますか?」
むぅ〜と、少し頬を膨らませてヒメカがレイドを問い詰める。
「ああ、聞いてるよ。ちょっと考え事してたんだよ」
こいつ、ペラペラといろんなこと俺に話してるけど大丈夫か?今話してる話超重要事項じゃないか?てゆうか、今回もあんまり話進まなくないか?もういっそ、ヒメカの話は最初から全部の語りで良かったじゃないか?
「それじゃあ、話の続きをしますよ?私が岸壁を眺めてると父の放った幻獣、というかロボットみたいなやつを・・・」
「おい、ちょっと待て。情報を増やすな。幻獣じゃないのか?ロボットなのか?」
「いや、なんというかオーラを纏ってたから」
「じゃあ、ロボットがヒメカのことを追いかけてたという認識でいいのか?」
「ええぇ」
「そうか…」
「話戻しますけど、いい?」
「ああ、続きをしてくれ」
「私は追い詰められて、この身を海に投げ出しました」
「はぁぁ??」
(何、無茶やってんだ?親御さん絶対心配してるだろ。てゆうか…)
「よく生きてた。ヒメカのいた場所が孤島とかだったら元いた島に流されて戻るか、近くに他の島とかあってそこに漂着するくらいしか助かる方法がないのに。てゆうか、ここまでたどり着いたことが奇跡だろ。ありえないレベルだ」
「え、そうなの?」
ヒメカは惚けたような顔をしてレイドに聞く。
「そうだよ。明らかにイレギュラーな状態なんだ、よくここに辿り着いたな」
ここで、この星と地域の解説を入れさせてもらう。この星の名前は地球という。歴史的背景を述べさせてもらうと、この作品の時間軸は2020年から50年以上経った地球が舞台となっている。全てが現代と変わっている。全てに纏が応用され、さらにAIや機械が導入され人間を補助している。現在、レイドは地球という星の昔日本だった場所にいる。この時代には国の概念はなく、言語も世界で統一されている。AIによって導き出された、生物達が生きていく上での最善の政策を施し今日までに至っている。
「私、海に身を投げ出して流れ着いたのがここの街だったんです。私は港に打ち上げられました。目を覚ましたら何処にいるのかもわからず路頭に迷いました。私は計画性もなく身を投げ出しましたから、何も備えはありませんでした」
(ん?最初、計画的…なにもなかったことにするか。なんか、こいつ可愛いな。まあ、確かに見てくれも十分だが中身もまた…俺が会ったことがないタイプだ)
レイドはクスクスと笑い始めた。
俺がクスクスと笑ってくるとヒメカは俺のことをジーと見つめてくる。
「ん、なんだよ」
「・・・なんで笑われているか理由が思いつかないので」
「…話の続きを聞かせてくれ」
「…なかったことにする気なんですね。わかりました、話の続きをしましょう」
(油断した…)
レイドは少し照れたような顔をした。
「1つ補足をさせて貰います。私がここまで生き残って来れたのは私の能力のおかげだと思います」
「能力?お前、能力があったのか?」
コクっ
「私も教育で纏については学んでいます。私の能力の1つである“天使の手助け”が常に発動して、私が困った時に運命を操作して少し助けてくれます。多分、そのおかげでここにしっかり流れ着くことができたんだと思います。いえ、まず私が海に流されながら生きていたこともきっとこの能力が補助していたからだと思います」
レイドはヒメカの話を聞いて驚愕の表情を見せる。
「運命に干渉する能力?」
(なんだその能力…とんでもない能力じゃねぇか。まず、能力のことをペラペラと喋っていいのか?)
レイドは冷静になってヒメカに質問をする。
「その能力の制約は?」
「んーと、分からないんですよねー。いつの間にか発動してるんです。私のはいつ発動しているのかも知覚できてません。でも、何かトラブルがあるごとに私は無事だったので能力が発動してたんだと思います」
(自身で能力の性質を把握し切れていない?無自覚発動タイプの能力か)
「でも、それだと色々おかしくないか?あと、俺とヒメカが出会ったのもその能力のおかげということなのか」
「…いえ、レイドと私が出会ったのは“天使の手助け”の力ではありません。そのことについても含めてお話を続けさせて貰います。まず、この“天使の手助け”という能力を過信してはいけません。能力が発動する時としない時があるんです。毎回能力が発動していれば私はこの身を海に投げ出す必要なんかなかったと思います」
「確かに…それはそうだな。その能力にはどんな制約をかけて能力を作ったんだ?」
レイドは納得した表情で頷き、ヒメカに聞き返す。
「…私をいざという時助けてほしいという願いをオーラにかけたんです」
(…たまにあるタイプか。自身の願いが強く反映されて、自分もよく理解していないが能力が発言してしまうという…)
「私にはもう一つ能力があります。それが“奇跡を起こす運命”です」
「そういえば、そんなこと言ってたな…え?能力?」
「はい、私には“奇跡を起こす運命”という能力があります。さっきの私がここに流れついてからの話をします。私はここが何処かも分からず露頭に迷っていました。そして、私は途方に暮れて蹲っていました。そんな時に、私は男の人たちに訳もわからず絡まれます。そこでレイドが私を助けてくれました。わざわざ寝床、食事と用意し私を今の今までここまで私を助けました」
「それがどうしたっていうだよ。そんなもん偶々だろ?」
(とゆうか、俺には記憶がないんだがな)
レイドは心の中でこっそりそう思った。
「これこそが“奇跡を起こす運命”なんです。私はあなたと出会ってそう感じました。あなたと出会ったのはただの偶然ではありません。運命によって導かれたのです」
「運命…」
レイドは驚きと呆然するようなことを言われて口を開けていた
「はい。私とレイドは出会うべくして出会ったのです。だからこそ、一夜を共にしました。私は何かを感じ取ってあなたと一緒にいたのです。そうでなければ私は今ここにはいません。私は感じました。私に奇跡を起こしてくれる存在として運命が導いたんです」
「な、なんで俺なんだ?」
「あなたには私の望むことに対して解決する力があると運命が私に告げたんだと思います。私にとって奇跡を起こす存在に運命は案内をしてくれたんです。でなければ、ここまでの流れはおかしいと思います」
「・・・」
「もう一度言います。私とあなたが出会ったことはただの偶然ではなく、私に奇跡を起こさせるために運命が導いたものなんです。私を守るために、そして、父の野望を砕くためにあなたの力が必要なんです!」
ヒメカは堂々と言い切る。
(いきなり、そんなこと言われても…)
「あなたの力を私に貸してください!昨日の夜の出来事も含めて、私はあなたと関わりを持つことは運命だったんです!!お願いします!私に協力してください!」
(突然そんなこと言われて『はい』と間髪入れずに答えられるやつなんていねぇよ。俺は特別な存在なんかじゃねぇ。だが…)
レイドは右手を胸の心臓のある箇所に当てる。
(何故かわからないが胸が高鳴る。俺はこれからもしかしたら踏み入ってはいけないところに行こうとしている。だけど、なんだろう。こうやって人に頼れられることは久しぶりだからか?なんか嬉しいな…)
レイドは目を瞑る。
そして、ゆっくりと目を開く。少し息を吸って宣言を述べる。
「ああ、いいぜ。お前のいうことを取り敢えず信じようじゃねぇか。ヒメカ、お前の身は俺が守ってやる!」
この時のレイドは真っ直ぐな目をしていた。
そう、レイドが失っていた筈の目をしていたのだ。
ブワン!!
「!!!」
レイドがオーラを体全体に纏わせて臨戦態勢に入る。
「レイドどうしたんですか?」
ヒメカはレイドの突然の変化に驚き質問する。
「ここに何者かがドアをすり抜けて侵入してきやがった!」
「何者かが??」
(ドアをすり抜けるなんて普通できない筈だ。そして、このすり抜けてきやがった野郎から生命とは違う何かを感じる!)
タタタ
レイドはドアの前に行く。
キキ
レイドは立ち止まる。
(どんなやつが…?!)
そして、レイドは両の目を見開いた。レイドの目に入ったのはそこにあった衝撃のものと瞬間だった。
ちょうど玄関のドアをすり抜け終わった直後の様子だった。ドアの前には人型の見たこともない幻獣が佇んでいた。
やっとペースが良くなってきそうです。バトルに行くまでがキツいなと思ってたので、安心してます。これからはストーリーの進捗テンポよくなっていくのでここでやめないで次も粘って頑張って読んでください!お願いします!
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