No.2 事実

ぐぅぅぅ〜

誰かのお腹の音が鳴った。

しかし、周りを見れば一目瞭然であった。ヒメカが顔を赤めてお腹を抱えていた。

「まあ、後の話は朝食でも食べながらするか…」

俺がそういうと彼女は目を輝かせて俺を覗き込んできた。物欲しそうな顔をしていた。

「ふぁぁぁ」

キラキラ〜

(目が輝いてる…相当、腹減ってたんだな…)

「とりあえず、この部屋から出ようか」

「はい…」

ヒメカは大人しく返事をし、レイドとヒメカの2人は部屋を出た。

「そこにテーブルとかあるだろ。そこの椅子に適当に座ってくれ」

俺は彼女に対して指を使って示してあげる。

「はい」

ヒメカは素っ気ない感じの返しをして椅子に座る。


レイドはキッチンに行き、調理を始める。

俺はそこで初めて気付いたのだが、自分の服装が何故か私服?普通、寝る時は寝ることに適した寝巻きを着るものだ。しかし、何故か俺は着慣れた薄い桜色のTシャツに赤線の入った紺色のパーカー、下は動きやすい黒に限りなく近いグレーのジャージ。

レイドは少し頭に手を添える。

(俺はこの格好で昨日の夜何をしてたんだ?全く記憶を思い出せない。なんでだ?確かに、俺はこいつに話した通りのことしかしてないはずだ。なのに、記憶に欠損があるような感覚がある。この格好のことについて一切覚えていない…どう言うことなんだ?)

俺はそんなことを考えながら朝食を作っていった。


チンッ

「お、パンも焼けたか。ちょうど俺もおかずできたところだしちょうどいいな」

レイドはそんなことを言いながら、皿にサラダと目玉焼きをよそう。次に、パンに手をかけて皿に乗せる。

「よし、できた」

テーブルに2人分の朝食を並べる。

「はぁわぁぁ」

ヒメカはヨダレを垂らしながら料理を見つめる。

「ヨダレ垂れてるぞ」

「はっ」

ゴシゴシ

ヒメカはレイドに指摘されてヨダレを拭う。

「それじゃあ、食べようか」

「うんっ、お腹ペコペコ!」

2人は手を合わせ、「いただきます」と合掌し、朝食を食べ始めた。

パクッ

「んん〜〜美味しい〜」

ヒメカは美味しそうにたっぷりとバターを塗った食パンを頬張る。

(この子は本当に美味しそうに食べるな)

レイドはそんなことを思いながら朝食を口に運ぶ。

2人が朝食を食べ終わるとレイドは片付けを始める。

カチャカチャ

皿が重なる音が聞こえる。

「あ、私も手伝います!」

「いや、いいよ。押しかけみたいな感じだけど、一応お客さんだしこんなことしなくても大丈夫」

「そ、そうですか…」

「まず、やることもそんな無いし」

彼女が少ししょぼんと縮まっているのが見えたが、俺は事実を述べているだけなのであまり深く考えないでほしい。

この世界には完璧な食洗機があるため、片付けと言ってもやることは少ない。

この世界のこの時代の食洗機は、スキャナー型で、そこに食器物をかざすと自動的に食器を洗い、乾かし、テレポートで棚に片付ける、これら全てをたった1秒でやってくれる。科学の発展と纏の補助によって可能になっている。もしかしたら、逆かもしれないけど。

レイドはさっさと片付けを終えて、先ほど朝食を食べていた場所に座る。そして、ヒメカと向かい合う。

「朝食も終わったことだし、本題に入ろうか」

レイドは真剣な表情でヒメカを見る。

しかし、ヒメカはそんなレイドの様子はどこ吹く風のようにキョロキョロと周りを見渡しいている。

「ほかにご家族とかは?」

少し申し訳なさそうに上目使いでヒメカはレイドに聞いた。

「父親は仕事で宇宙を放浪中。母親は友達と3泊4日の旅行で今は家に居ない。金曜日から旅行に行ってるから帰ってくるのは月曜日だな」

俺は淡々と聞かれたことに対して答えた。

きっと今頃俺のことなんて忘れて楽しんでるんだろうな。俺の頭の中に母さんの楽しそうな顔が浮かんでくる。家のことを全てほっぽって旅行に行くとは流石に俺も予想できなかった。だから、家事等全部俺が1人でやっている。まあ、今の時代楽だから特に苦になることもないがな。

「今日って何曜日ですか?」

レイドはヒメカに曜日を聞かれてフィールドスクリーンを立ち上げ、念のために曜日を確認する。

(曜日がわからない?てゆうか、デバイスウォッチ*持ってないの?)

*腕時計型のフィールドスクリーンを表示するためのデジタル器具。

デバイスウォッチの機能としてフィールドスクリーンが存在する。デバイスウォッチは私達読者の世界でいうところのスマホに位置するものだ。

「今日は土曜日だよ。学校も休みだ」

(正直学校が休みの日でよかった…そうじゃなかったら見知らぬ少女を1人家に置いたまま学校に行かないといけない状況になってたかもしれないからな。今日ほど本当に今日が土曜日でよかったとこれ程思ったことはない)

レイドがそんなことを思っていると

「そうですか…学校…」

ヒメカは顔を伏せてポツリとそう呟いた。

「で、仕切り直して本題入る。えーと、ヒメカは、なんで路頭に迷ってたんだ?」

俺はヒメカの目の前に座っているからヒメカの顔がよく見える。俺はヒメカの顔をジッと見つめて質問を投げた。

「あなたには全てを話さないといけませんね。今から話す内容は昨日語っていない内容です。心して聞いてください」

真剣な顔でヒメカは言い放つ。

レイドは唾を一度飲み込みヒメカと目を合わせる。

「それは話してもいいという合図ですか?」

「ああ」

「それでは話しましょう。私の全てを」

俺は息を飲んで聞き入った。

「私は隔離された施設で育ってきました」

「隔離された施設?」

コクっ

「そんなこと今の時代にあるのか?」

「ありました。私がそうなのですから」

(全てが整地されたこの環境でそんなことが起きているなんて…)

「話の続きをしましょう。私は、その、世界を全く知らずにその施設で日々過ごしていきました。そんなある日、私は施設を走り回っている時にあるガラクタ置き場を発見しました。それは私がまだ10歳の時でした。あの時は本当に好奇心旺盛だったので私は興味本位でそのガラクタ置き場に入りました」

ヒメカが真面目に話をしている時レイドはこんなことを思っていた。

(あの時は好奇心旺盛だった?前回『第1話であるNo.1 添い寝の時』、あなたは僕と夜を共にしたとかなんか言ってましたよね。初めてだったとか言ってましたよね。明らかにその表現間違ってますよね。今も十分好奇心旺盛だと思いますよ、俺は)

俺はこの言葉を心の中だけに留めた。

「何か失礼なことを思ってそうですね」

ヒメカがジッとレイドを睨む。

レイドは首を横に振り否定する。

「そ、そんなことはありませんよ」

「そうですか。それじゃあ、話の続きをします」

「どうぞどうぞ」

「私はガラクタに興味を示しました。今まで生きてきて、自分から何かを見つけ、手にするという機会はありませんでしたから。…それまでは、すべてを父から渡されていました。それもあり、私は見たこともないものに胸を躍らせました」

(…今回も話が進まなそうだな。作者、こんな内容だからやる気無くすんだぞ。俺とこの子に謝ってほしい)

レイドは心の中でこそりとそんな愚痴を漏らした。

「それで、私はガラクタだったけどほとんどのものが見たことも触れたことも無いものばかりで興奮して、何これ構わずものを漁っていきました。そしたら、1つ面白いものを見つけました」

「面白いもの?」

「はいっ。…と言ってもあの時の私にとってですがね。でも、それによって私の見聞は変わりました」

「何を見つけたの?」

「古い、デジタル端末です」

「デジタル端末?今で言うと、デジタルウォッチ、フィールドスクリーンにあたるもののことを言ってるのか?」

「そうです」

「そんな古いものがどうしたんだ?今じゃ、サービスがなされてなくて使えないと思うが」

「私も流石に使えないかな〜って思ってたんですけど、なんか使えました」

(なんか使えたんだ)

「それで、電源立ち上げて見たらインターネットや動画視聴が可能で私は食い入るようにその機械にのめり込んでいきました」

「おい、待てよ。インターネットなんてもの今の時代には存在しないぞ?」

「そうなんですよ。本当は使えないはずなのに、使えたんです」

(どういうことだ?インターネットは今から100くらい前に廃止され、新しいシステムが配信された筈だ。何故、使えたんだ?スペック的にも現代に追いつける筈がない)

「おかげで外がどうなってるとかわかったんです。私ってずっと施設で育ってきて施設の中での知識しか知りませんでしたからとても新鮮で楽しかったんです。そして、施設の外に憧れるようになりました」

(何かが引っかかるが…)

俺はそんなことを思いながら相づちをする。

「それから?」

「私は今まで知らなかったいろんなことを知りました。現代が、ものすごく発展し、超纏社会が展開してるなんて!もし、あのガラクタ置き場でデジタル機器を手にしていなかったら私は多分だけどこの社会に取り残されてたと思います」

「…ヒメカは親御さんに外のことは教えてもらわなかったのか?」

ヒメカは目を伏せる。

「…私の母親は私が小さい頃に亡くなりました」

「悪いことを聞いたな」

「いえ、過ぎたことです」

「じゃあ、教育の方は…」

「はい、父に教わりました。言語、教養、知識、生きるために必要な最低限のことを学ばされました。それ以上に父から教えてもらったことはありません」

「そうか…」

「それでは話を非常に大事な部分に移します。何故、私があんなところで蹲っていたのか、話をします」

ヒメカは今までの少し興奮した表情から一変して、真剣な目付きになる。

「まずは、私の父の話を少します。正直詳しいことは聞いたことが、いえ、聞けなかったのでわかりませんが、私の父は研究者だそうです」

「研究者?」

「はい。母からそう聞きました。詳しいことは一切教えてもらえませんでしたが。…だから、私はある日、父が何をしているのか気になって研究室を覗いてみました。そしたら…」

「そしたら、どうしたんだ?」

「父がこんなことを言ってたんです。『ふふふ、ははは。つ、ついに!これで世界を…!!』って、不気味なことをことを言ってたんです。考えてみたんです。父が何故、あの隔離させれた場所にいるのかを。もしかしたら、危険な実験をしてそれで通報されたんじゃと。そして、父はその実験を成功させてこの世界を牛耳れる力を手に入れたんじゃないかって」

(流石に話が突拍子がなさすぎじゃないか?)

「私は怖くなりました。でも、私1人では父を止める力は持っていない。そこで、私は考えました!私を守ってくれて父を止めてくれる人を!!」

ヒメカは勢いよく言い切った。




今回も全然進まなかったので、次回を楽しみにしてくださいw今回マジつまらなかった気がするのですが、これから3話4話5話と話が盛り上がってくる予定なので、頑張ってみ続けてください!お願いします🙇‍♀️

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