【第6話】青井翔

 俺は深山先生と話した放課後、独りで家に帰った。


 別に赤茶色の雨が降ることもなく、高円凜々花の家に行くこともなく、俺は家路についた。



 翌日、朝礼が終わった朝。


 三枝さんがみんなに文化祭戦争について説明する。


「今日から、G+コースとの戦いが始まります。まず、コンセプトについて話し合いたいのですが。」


 楓が手を上げる。


「やっぱりRPGじゃない?かぐやが得意なのはストーリーが入ってくるゲームだよ。」


 三枝さんがメガネをクイっとあげる。


「私も、RPGが第一候補でした。他の意見はありませんか?」

「俺はいいと思うな。」

「俺も賛成。」

「いいんじゃないか?」


 全会一致で決まった。問題は、誰がシナリオを考えるか、だ。


「シナリオは、三枝さんがいいと思うな。本とかよく知ってるだろうし、発想力ありそうだから。」


 楓が、小さい体で、手を上げて言う。


 三枝さんが笑った。


「いいですよ。私、こういうのやりたいと思ってましたから。」

「じゃ、三枝さんに任せようか」


 亮も頷く。三枝さんが輝けるのならいいんじゃないのかと、俺も思った。


 だけれど、青髪が目立つ少年青井あおいかけるが立ち上がった。


「三枝、本当にできるのか?」


 青井は昔から乱暴で、毎度俺の対岸に立ち、勝負を吹っ掛けてくるような奴だった。


 それでも、嫌な奴ではなかった。意地を張ってるだけで、心は優しいと俺は感じていた。


 俺は立ち上がる。


「その言い方はおかしいと思う。三枝さんが、こんなにやる気になっているのに、それを削ぐのは、違うと思う。」


 三枝さんは、下を向き、亮と楓は静かに俺と青井を見ている。


「そうだな、俺が悪かった。」


 青井が、俯いた。


 その日、青井は独りになった。


 深山先生の影が、教室の入り口に映っていた。

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