【第6話】青井翔
俺は深山先生と話した放課後、独りで家に帰った。
別に赤茶色の雨が降ることもなく、高円凜々花の家に行くこともなく、俺は家路についた。
★
翌日、朝礼が終わった朝。
三枝さんがみんなに文化祭戦争について説明する。
「今日から、G+コースとの戦いが始まります。まず、コンセプトについて話し合いたいのですが。」
楓が手を上げる。
「やっぱりRPGじゃない?かぐやが得意なのはストーリーが入ってくるゲームだよ。」
三枝さんがメガネをクイっとあげる。
「私も、RPGが第一候補でした。他の意見はありませんか?」
「俺はいいと思うな。」
「俺も賛成。」
「いいんじゃないか?」
全会一致で決まった。問題は、誰がシナリオを考えるか、だ。
「シナリオは、三枝さんがいいと思うな。本とかよく知ってるだろうし、発想力ありそうだから。」
楓が、小さい体で、手を上げて言う。
三枝さんが笑った。
「いいですよ。私、こういうのやりたいと思ってましたから。」
「じゃ、三枝さんに任せようか」
亮も頷く。三枝さんが輝けるのならいいんじゃないのかと、俺も思った。
だけれど、青髪が目立つ少年
「三枝、本当にできるのか?」
青井は昔から乱暴で、毎度俺の対岸に立ち、勝負を吹っ掛けてくるような奴だった。
それでも、嫌な奴ではなかった。意地を張ってるだけで、心は優しいと俺は感じていた。
俺は立ち上がる。
「その言い方はおかしいと思う。三枝さんが、こんなにやる気になっているのに、それを削ぐのは、違うと思う。」
三枝さんは、下を向き、亮と楓は静かに俺と青井を見ている。
「そうだな、俺が悪かった。」
青井が、俯いた。
その日、青井は独りになった。
深山先生の影が、教室の入り口に映っていた。
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