九章 「デート」
キャラメルポップコーンの甘い匂いがする。僕は君を映画館の前で待っている。
君をデートに誘ったのだ。あれから君は少しずつ元気になっていき、いつもの明るさに戻った。その後僕たちは付き合うことになったから、一緒に出かけたくなった。
君が映画を観に行きたいと言っていたから、映画館に行くことにした。二人でしたいことを一緒にするのが一番いい気がすると僕が提案した。
男は待つのが当たり前と前に読んだ本に書いていたから、僕は三十分前に来ていた。これでも僕は恋愛初心者なんだ。内心そわそわしていて落ち着かない。
君は時間ぴったりに来た。ワンピースに薄いコートを羽織り。可愛らしい格好だった。
「時間ぴったりとかさくらさんらしいね」と僕が言うと、そうかなあと笑っていた。
「ごめん、待たせたね。どの映画見る?」
「今は泣けるこの恋愛ものかハラハラするあのアクションものが人気らしいよ」
僕は映画館の前にあるポスターを指差して説明した。どちらも今メディアで取り上げれている映画だ。
僕たちはわざとあらかじめ何を見るか決めてこなかった。
その場で二人で楽しみながら選びたいなあと二人で決めたからだ。
エスコートするのは、僕たちにはどうもまだ慣れていなくてくすぐったかった。
「やっぱり理央くんとは恋愛映画を観て一緒に感動したいかな。どうかな?」
「僕も恋愛ものは好きだし、それにしようか」
女の子ような感性を持った僕はやはり恋愛ものは好きだった。
感動という体験を二人で一緒に味わいたかった。
僕たちはまだまだ初めてのことばかりだ。
これからそれをゆっくりと積み上げていきたい。
二人で映画館の中に入った。中はもう暗くて静かだった。
二人とも静かなタイプだったから、映画館デートは間違いなかったねと君に話すと、楽しみだなあと目を輝かせていた。
映画が始まると、スクリーンに視線が集まっていた。
僕はやはりその映画を観て泣いてしまった。 君にはいっていなかったけど、僕は涙もろくてすぐに泣いちゃうんだ。
君はいい話だよねと優しく見つめてくれていた。
そんな温かい雰囲気がすごく心地よくて、僕はずっと君の手を握った。
君はしばらくうつむいたあと、しっかり握り返してくれた。
こうしてまた、初めてが増えていった。
映画館を出たところで君は、歳をとった老夫婦をじっと見つめていた。
僕はどうしたのかと聞こうとしたら、じゃあ行こうかといつもの調子に戻っていた。
僕は君の手を引き寄せ、抱きしめた。心が綺麗な分弱い君を守るかのようにしっかり抱きしめた。また弱ってしまうのは嫌だった。
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