第3話 僕

それは本当にいつも通りの一日だった。


朝起きて、ご飯を食べて、家を出て、友人と語らい、授業を受けて、帰路に着く。


特筆するような事件も無く、何らかの変化が有るわけでもなく、窮屈で広大なだけのこの世界。


たった一つの紛れもなく僕の為の、僕の自己満足の為にあり続ける世界。


流れる時、進む時代、廻る世界ほし


生きていても死んでいても対して変わりの無い、当たり前の人生。


そんな平凡で、退屈で、どうしようもない毎日は突然何の前触れも無く、








壊された────。







***

「まずは状況を整理しましょう」


夕食を食べ終え、僕は彼女こと如月きさらぎあおいに僕(もしくは彼女)の部屋に

徴収させられた。


「まずあなたの名前は?」


如月きさらぎあおい。さっきも言わなかった?」


僕こと如月きさらぎあおいは名乗る。彼女は訝しげにこちらを見ている。未だに混乱し続けているのがこちらからでも分かる。


「されたわよ。されたけどそれで『はいそうですか』ってなるわけないじゃない!逆に何であんたはそんな達観してるのよ。普通驚くところでしょ?」


「そう言われても、一応一頻ひとしきり驚いた後だから何とも…」


「そう…」


彼女は少し残念そうに溜め息をついた。

僕なんか、悪いことしたかなぁ?


「まぁ、分からないことについて話し合っていても仕方ないわね。それよりも最優先で決めなきゃいけないことがあるし」


「?」


首を傾げる。何かあったっけ?


「この部屋のことよ!私女子だよ?いくらあんたが『如月葵』だとしても、私からしたら赤の他人なの。知らない男と一つ屋根の下で一緒に過ごせるわけないじゃない」


「といっても、ここ僕の部屋だし…」


「なに言ってるのよ。ここは私の部屋よ」


現在部屋の中には当然だが僕が自分で勝った小説や小物だったりが偏在している、しかし同時に全く見ず知らずの物が置いてあったりする。


手鏡だったり、可愛らしいぬいぐるみだったり、テニスかバドミントンかのラケットだったり、それらがまるで二つ部屋を乱暴に糊付けしたようにそこらに存在している。


「取り敢えず先に風呂入ってくるよ。このまま話していたら朝までかかりそうだし。それに少し頭の中を整理する時間はいるでしょ?」


「まぁそうね…」


そうして僕はいつも通り『自分の』タンスを開け、寝巻きと下着を取り出した。いつも同じところに整理して入れているから余所見をしながらでも取り出せるのだが、今日ばかりはそれが仇となった。


彼女が見開かれた目でこちら見ながら頬を紅潮させていた。


僕は自分が掴んだ物を確認するとそれは男物のボクサーパンツではなく、女物の下着だった。


おかしい。なんでここに?


そんな風に混乱する思考を必死にまとめようとしていると、彼女は俺の手から下着を取り上げ、代わりに強烈なビンタを僕の頬にお見舞いした。


結果、僕の頬に紅葉型の後がしっかりと残ることとなった。



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