第2話
夜中に余りの寒さで目を覚ます。流石に寒すぎだろ、氷点下20度近いんじゃ無いのか? 真っ暗闇の部屋の中を布団代わりになる物を探したが、暗すぎて見つけられない。手探りで辺りをうろつくと脛を何か固い物にぶつけ俺は静かに苦痛に耐える。
2階のドアが開く音がして誰かが階段を降りてくる、LEDの白すぎる明かりが壁に反射し、目が光に慣れていない俺は顔をしかめる。
「浅波さん、いますか?」
あさ美がLEDランプをかざし、辺りを照らす。
俺の姿を発見したあさ美は困惑した表情で言った。
「浅波さん、さっきはごめんなさい、私、ビックリしちゃって…… 私大人の男の人に裸みられたの初めてだったので」
あさ美は俺と一瞬目を合わせたが直ぐに逆方向に視線を逸らした、もう怒ってはいないようだ、ただ彼女を目の当たりにすると瞼の裏にあの光景が浮かんでしまう。
「此処は寒いから2階に行きましょう」
あさ美に促され2階の部屋へ戻るとストーブは消えていたが室温はほんのりと暖かく1階とは大違いだった。羽衣は子供用のベッドに潜り寝息を立てている。小柄な彼女はアニメ柄の布団にくるまっていたので、まるで小学生の様に見えた。
「麗香さんの反応は確認出来たんですか?」
あさ美は麗香の体内に埋め込まれている発信チップから得られる位置情報の反応がこの周辺であったのか聞いてきた。
凪追跡にあたって唯一の手掛かりである麗香の位置情報は自衛隊が能力者に許可を得ず体内に埋め込んだ位置情報チップだけが頼りだった、能力者は危険な力を持っているので兵器同様に管理されていたのだ。
麗香の位置情報開示にあたって自衛隊は能力者全員にチップが埋め込まれていることを正式に認め、謝罪した。
しかしチップは摘出されず、自衛隊は継続して運用するとの一点張りで我々から不信感を買った。
麗香の言っていた妊娠出来ない体についても自衛隊は知らぬ存ぜぬを貫くので、試しに能力者の1人が力の維持のため飲むことを必須とされてきた薬を1か月断った所、生理が始まり自衛隊の嘘がまた発覚した。自衛隊は能力者の妊娠を抑制したのは円山での分娩設備が不十分な事と、妊娠による能力者の離脱により人員不足が起きるのを避けたかった為だと説明したが真意は不明である。
彼らは俺達に何か重大な事を隠しているようで信用できない。もはや自衛隊との信頼関係は地に落ちたが、装備も補給も彼らに頼っている以上我慢するしか無かった。
いっその事、人員も自衛隊で全て賄い俺達を解放してくれても構わないのだが、今の所彼らが自前で養成した代行者と能力者は北海道内にある最低限残された基地を魔物から守っているだけだ。
流石に防衛的観点から北海道をもぬけの殻にする事は出来ない、赤軍が周辺にいる以上警戒の手は緩めてはいない。
2日前に北見で麗香の電波を受信したが、電波が微弱すぎて位置は特定しきれていない、平時なら簡単に捜索できるのだが今は電力も限られたエリアにしか供給されていないので受信アンテナの数も限られ、満足な成果は得られていない。
海上自衛隊の対潜哨戒機が簡易アンテナを道内各地にばら撒いたが何れも反応は示さなかった。
「この辺りに居るのは確かなんだが、情報が不足している。地道に探しつつ明日ドローンが落とした補給品を取り敢えず回収するのを第一目標とするよ」
俺はあさ美に明日の予定を伝えると、今日はもう遅いから寝ようと言って寝袋に入った。
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