第5話
写巫女があさ美を捕まえようと両腕を伸ばした瞬間、俺は刀でその腕に切りつけた。刃が腕にめり込んだがこいつらは物理攻撃では殆んどダメージを与えられない。逆に写巫女は切りつけられた腕で俺を跳ね返し、地面に吹っ飛ばす。
再びあさ美を襲おうと手を伸ばす魔物、俺は直ぐに地面を蹴って写巫女に斬りかかる。
間一髪であさ美と写巫女の間で攻撃を跳ね返すと、あさ美は恐怖のあまり地面にへたり込んだままの状態で浴衣の裾がはだけていた。浴衣から白い足が太ももまで出ていて膝はすりむいて血が滲んでいる。彼女は顔を背け、目を瞑り眼前で腕を交差させ防御姿勢をしていた。
「あさ美! 送ってくれ!」
俺は叫ぶと、あさ美が我に返り手を伸ばし、俺の背中に触れると日本刀の刃が紫色に輝きを放つ。
俺はそれを写巫女の真横から振り抜き、胴体を真っ二つに切り裂いた。
あさ美は立ち上がり俺の背中から力を送り続ける。
次々に襲い来る魔物を刀で切り裂きながら、同時に背中にいるあさ美を守っているのは奇跡に近い、集中を切らせばあさ美が倒され、あさ美が倒れれば俺も倒される。まさに一心同体での戦い。
援軍はまだ来ない、休みなく剣を振り流石に息が上がる。あさ美の能力もいつ枯渇するか分からない、頼む誰か早く来てくれ。
魔物の数が増え対応しきれない、野弧も壁の穴を超え次々と進入して俺達二人の周りを取り囲んだ。万事休すか、格闘戦で背後に回られれば回避のしようがない。あさ美の顔は引きつり、泣きそうな表情を浮かべる。
背中側のあさ美に野弧が飛び掛かり、間一髪で俺は獣の首を刀で跳ねると前側から写巫女が手を伸ばす。間に合わない!
俺はあさ美の前に立ちはだかり、死を覚悟した。その刹那、視界の端から黄色い閃光が走り、写巫女を吹き飛ばした。
光の来た方向を見ると宇垣小次郎が栗林綾乃と共に現れ、ハンドガンを撃った。
肉眼でも追える遅い速度の弾丸の輝き、軽い発射音、ガスガンで綾乃弾を撃っているのか?
「浅波! 今のうちに逃げろ! BB弾だから奴らを殴る事しかできない」
宇垣はそう言うとガスガンを撃ちまくり、俺達を包囲した魔物を払いのける。
囲いに穴が開き、俺は腰砕け状態のあさ美を強引に引っ張り何とか包囲を突破し魔物たちとの距離を取ることに成功し宇垣達の元へ駆け寄った。
宇垣は弾切れのガスガンに新しいマガジンを叩き込み間髪入れずに撃ちまくると、内部のガスが気化熱で冷え弾の出が悪くなり、奴らを追い払えなくなる。
宇垣はその刀を貸せと言って剣を受け取ると、綾乃の力を最大限にため込んだ眩い刀身で魔物に切り込んだ。
それを見て綾乃は言った。
「早く銃を取って来い!」
俺とあさ美は円山球場方向に駆け出し、俺は武器を取りに宿舎に向かい、あさ美には二重結界の円山球場内側で待つように指示した。
魔物は円山防衛陣のだいぶ奥まで侵入し始め、誰かが撃つ銃声が遠くで聞こえた。少しは反撃出来ているのだと俺は願った。宿舎へ全力で走っていると向かいから俺を呼ぶ叫び声が聞こえた。
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