第4話
羽衣と目が合い、俺は彼女から目を逸らしてしまった。
何やってんだ俺は、目の前の状況に集中しなくては……
「羽衣、あさ美と交代して
「えっ? 撤収するんでしょ?」
羽衣は自分の出番は無いと思ったのか驚いている。
「あの数が襲って来たら勝ち目は無い、用心の為だ」
「ねえ、なんでさっき『うわっ』って言ったの?」
「言ったっけ?」
俺は何の事だと言わんばかりにはぐらした。
「言ってたじゃん、もしかして任務中にイチャついてた?」
「なんでそうなるんだよ」
「だって顔赤かったし」
羽衣は頬を膨らませて不満げな態度を示す。
「よし、バイクの所まで戻って帰るぞ」
羽衣の小さな胸の感触に慣れていたから、あさ美の大きな胸の感触にビックリしたなどとは口が裂けても言えない。
「得意のはぐらかし?」
背中に激痛を感じた、羽衣は俺の背中を強くつねって問いかけを無視した制裁をして来た。
小学校の玄関前に停めておいた2台のオフロードバイクまで3人は気配を抑えてたどり着き、あさ美と俺はバイクに跨り次々にバイクのキックスターターを蹴りエンジンを掛けた。
あさ美が先に走り出し、羽衣が俺のバイクの後ろに跨り直ぐ後を追いかけた。
後方を確認したが屯田兵中隊本部は静かなまま、奴らに気付かれてはいない。
正面を向きあさ美を見るとバイクの背後に黄色に光る複数の獣が急接近していて、俺は驚きを隠せなかった。
「あさ美! 気をつけろ! 後ろから来てるぞ!」
犬? 狼? いや狐…… キツネ型の魔物、
「羽衣! 頼む!」
「分かってる!」
スローモーションが始まり、腿のホルスターから右手でハンドガンを抜くとガンが赤く輝く。
左手にハンドガンを持ち換え、右手でアクセルを開け、あさ美を追い、野狐を狙う。
羽衣の力でゆっくりとした景色が流れるが、標的も自分も動いているので容易には狙えない。
あさ美に迫る野狐、彼女の直ぐ傍に銃口を向けねばならず緊張が走る。
バイクに乗るあさ美に野狐が次々に飛び掛かり、俺はトリガーを連続で引く。
間一髪で3体の野狐を倒したが、次から次へと野狐が現れ、あっという間にハンドガンの1マガジンを撃ち尽くした。
マガジンキャッチボタンを押し、空マガジンを路面に落下させると、羽衣が弾切れを予測していて、ホルスターに刺さっているスペアマガジンを抜いて下側からハンドガンに叩き込んだ。
スライドが後退したままのハンドガンをリリースし、初弾が装填され再び野狐に狙いを定める。
あさ美がバイクをジグザグに走らせ野弧の攻撃をギリギリの所で回避しているが限界が近い。
俺はスタングレネードをあさ美のバイクと野弧の間に投げつけ、閃光と共にその間に割って入る。
野狐をこちらのバイクに引き付け
一旦意識が剥がれて、羽衣が聞いて来た。
「なんか策はあるの?」
「無い!」
「最悪」
「飛ばすぞ!」
羽衣は俺の体にギュッとしがみ付き、時間を加速させる。
時速145Kmでのスローモーション、このバイクの限界速度で野狐を引き離しにかかる。
「ついて来てる! ヤバいよ浅波!」
迎え撃つか…… 残弾は1マガジン15発、やれるはずだ。
「羽衣! そこのスーパーの中に入ったと同時にスタングレネードを使え!」
「分かった!」
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