第2話
スケート場の正面玄関前で追手を次々に倒す人影が見える。
孤軍奮闘する凪チーム、麗香の能力は計り知れない。
凪の体に触れずに重なる意識。
麗香自身も結界を張って仲間を助け、退路を作る。
2台のピックアップトラックがスケート場の正門前に突入し援護しながら生き残りを回収する。
4チーム8人がトラックの荷台に飛び乗ると直ぐに車両は走り去り、写巫女数体が追いかけていく。
何も出来ずに傍観していただけの俺と羽衣は現場に取り残され、奴らに発見されれば命は無いだろう。
「羽衣、撤退するから静かにバイクに乗れ」
俺はライフルを片付けながら彼女に指示した。
2人はバイクに跨り、エンジンを掛けた途端にマンションの駐車場から走り出した。響いたエンジン音で奴らに気づかれるかと危惧したが追手は無いようだ。
『凪、こちら浅波。合流するので位置を教えろ』
バイクを走らせながら無線で何度か呼びかけたが反応は無い。
「羽衣、円山に戻るぞ」俺は凪との合流を諦めた。
「浅波さん…… ごめんなさい」
羽衣は俺の背中に頭をコツンとぶつけて謝った。
浅波さんなどど羽衣に言われたのは初めてな気がした、よほど彼女は憔悴している様子で、何時も罵倒されている身からすると調子が狂う。
「何だそれ、いつもの元気は何処に行ったんだ?」
「私が役立たずだからこんな事に……」
「羽衣のせいじゃないだろ、あそこで俺達が加勢出来たとしても結果は何も変わらない。あの規模の敵は予想していなかった」
「でも」
「羽衣が無事ならそれでいい、次の作戦で挽回しようぜ」
バイクの後席で羽衣は無言で俺をいつもより強く抱きしめ、円山に着くまで黙っていた。
球場内の作戦指揮所に戻ると生き残った討伐隊は先に戻っていて、帰還した俺たちに冷ややかな視線を送った。
「岬! よくもまあ、のこのこと戻ってこられたな」
麗香が羽衣を激しく責める。
「皆、すまない。今日は剥がれが酷く役に立てなかった」
未帰還者は間違いなく死亡している、言い訳など出来ない。
第一討伐隊は損耗が激しく再編成が必要になったが、能力のある人材はそう簡単に補充出来ない。
ここにいる羽衣でさえ16歳という若さだ。経験値が少なく戦場で心を乱し、能力者が剥がれを起こす事例は珍しくはない。本来であれば羽衣は訓練生の身分だが、人員不足で昇格せざるを得ない状況だったのだ。
作戦に参加した隊員は能力の消耗も激しく、2日間の休暇を与えられた。
羽衣は休暇中姿を見せず、話によれば布団からほとんど出なかったらしい。
休暇明けに再編成のメンバーが発表され掲示板に貼り出されたが、その中に俺と羽衣の名前は無かった。
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