第10話
「おいおい、これで本当に大丈夫なのか?」
「大丈夫大丈夫。森の中で勝つには色々準備がいるんだよ。あ、カレン、そこの足下気をつけて。罠あるから」
「いつの間に…?」
歩きながらだよ? 一応ぽこぽこ罠を作ってきているけれど、誰も引っかかってないところを見るに追跡はされてないみたいだ。
「ラクに勝つには準備はしっかりしないとね。…よし、こんなもんかな? じゃあ改めて作戦を説明するよ」
あらかた準備を終え、みんなで敵の班の気配を感じられる位置に待機する。
「まずはカレン、敵に大きめの魔法をお願い。これは仕留めるのが目的じゃないから正直当たっても当たらなくてもどっちでもいい。目的は分断だ」
おそらく向こうもこちらと同様で初めましてのチームだろう。それに加えて森の中だ。うまくいけば簡単に倒せるかもしれない。
「わかったわ。その後、私は退けばいいのね?」
「そう。その隙に俺が少なくとも一人を狩る。残り三人…ないし二人…うまくいけば一人になったところで、さっき仕掛けた罠が生きてくる。キャロルは悪いけど今回は囮役。逃げているだけでいい。
追ってくる相手はガジとカレンで退きながら牽制ってことで。理想はキャロルを追っていると思ってる敵を俺とガジで挟み撃ちして順番に狩る…だけど、そこまで拘らなくていい」
「わかりました…逃げるだけならなんとか…」
「全滅させなくてもいいのかよ?」
「いいんだ。大切なのはこちらの被害を最小限にして相手にダメージを与えること。トドメは俺らが刺してもいいけど、そこはどちらでもいい。まずは四人揃って生き残ることを考えよう」
全員が頷くのを見て、俺は一旦みんなから離れていく。
カレンのタイミングに合わせて奇襲をかけないといけないから気付かれないように近づかなきゃいけない。とはいっても、こいつらだったら余裕だろうけど。
敵がいるにも関わらず警戒もしていない。ピクニックにでも来ているのだろうか?
拍子抜けするくらい簡単に敵の近くまで来ることができた。あとはカレンが攻撃するのを待つだけだな。
「なあ、もう休もうぜ? 結構歩いたしさあ」
「何言ってるんだ。まだ拠点も見つけていないじゃないか」
「どこだって同じよ…私も疲れた…」
危機感の無い会話。何の準備もできていない姿勢。父さんの前でこんな風になろうものなら一瞬で拳が飛んでくるだろうな。
あの人は本気で常在戦中を素でいっているからね。
ご飯を食べている時だろうと、寝ている時だろうとあの人が警戒を解いているのを見たことがない。
ちなみに母さんはその逆。何の警戒もしていない。きっと父さんがいるからだろうな。あの人がいれば何の問題もないって信じ切ってるのが伝わってくるよ。
などと考えていると、少し離れたところで急激に魔力が高まった。やっと開始か。
「穿て!」
「あぶなっ」
カレンの声が聞こえたと思ったら、俺の目の前に大きな雷が落ちた。
どんな条件付けしてんだこの魔法!? 一直線にこっちに向かってきたぞ!? 避けるのが遅かったら当たってたわ!
「なんだ、敵か!?」
「まとまるんだ! どこから攻撃が!?」
「何今の光!」
「落ち着いて! まずは…っ!?」
「ごめんね、お疲れ様」
幸い、雷を見ることができた者はいなかったらしく、混乱したところで一人終了。雷のおかげで発生した土煙に紛れて攻撃できたのが大きかった。
土で作った針を心臓部に突き刺したところで光に包まれて消えていった。
やっぱり普通の人相手ならちゃんと刺さるんだよね。父さんがおかしいだけだ。よかったよかった。
「一人やられたぞ!」
「あ、あそこに敵がいる!」
「ひぇっ…!」
見つかったのは予定通りキャロルだ。顔が強張ってるけど、演技だよね? ちゃんと逃げれるよね?
少し心配になったが、キャロルは背を向けて一目散に逃げていく。よかった、意外と足が速い。
「逃げたぞ、追うんだ!!」
「お前が指示すんなっての!」
と、男二人が一足早く駆け出していった。というわけで標的は残った女の子だね。
「私もいくわ…あれ……ぐっ…!」
「大丈夫、死なないらしいからさ」
懐から出した剣で喉を突く。ちゃんと鞘に入ってるから心配しなくてもスプラッタなことにはならないよ? 流石に抜き身の剣でそんなことしないよ。
頭に血がいっている男たちはキャロルをエサだと思って追っていったし、この子は喉を潰したから助けを呼べない。
「とりあえずこれでリタイアだね」
プス、と土で作った針で首を突き刺す。一応ここを刺しておけば体が動かなくなるんだけど…あ、よかった。ちゃんと倒した認定されたようで、光に包まれ消えていった。
いやあやっぱり土の魔法は便利だよねえ。簡易的な砦も作れるし即席の武器も作れるし。俺みたいに静かに戦う場合はとても重宝する。
さて、森に消えてったみんなを追いましょうかね。
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