第14話

日曜日の昼過ぎ。

母さんが俺の部屋の扉をノックしてきた。気力が無くなっていて、気持ちが沈んでいた。金曜日からずっとこの調子だ。飯も食わず、布団を被り、部屋に籠っていた。金曜日、病院から帰ってきて、数時間後にスマホから着信音が流れてきた。スマホを取らなかった、いや、取れるわけがなかった。土曜日も日曜日の今日も着信音が流れてきたが取らなかった。

「あんたに電話だよ」

母さんは、部屋に入ってこないで、用件だけ言い残し、去っていく。

俺は、ふらつきながら階段を下りて、電話を耳に近づけ、ぼそぼそと小さい声を出す。

『佐久間君。大丈夫?何度も連絡したのに出なくて、心配したの』

相手はミズキ先輩だった。

「ごめん。気持ちが沈んでて......出ることが出来なかったんだ」

俺の口から弱々しい声が出る。

『私のこと、だよ...ね。わた、しが...私、が......』

「ミズキ、先輩。ごめん。かけてきてくれて、ありがとう。近いうちにお邪魔して良いかな...」

『いい...よ。佐久間、くん』

通話がきれて、部屋に戻ろうとしたところ、後ろから母さんが抱き締めてきた。

「えらいね、あんた。私の自慢の息子だよ」

俺に優しく、そう言った母さん。

じ...まんの、息子か。母さんにそう言ってもらって、少し胸のうちにあった黒いものが消えていくのを感じた。

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