第8話
放課後。
俺は、拓海に先輩のことを伝えていない。
「佐久間。また明日」
俺に手を振り、体育館に向かう拓海。
「また明日な。拓海」
拓海と別れた俺は保健室に向かう。
自販機で飲み物を買う。
保健室の扉を開けると、先輩の声が聞こえた。
「佐久間君、来てくれたんだ」
優しい笑顔だった。
「えー、もちろんです。鞄はここにないですよね...」
「うん。そうなの」
「頃合いになったら、とりに行きましょう。先輩」
学校がもうすぐしまる時間になり、二人で慌てて、先輩の鞄をとりに行く。
俺と先輩は並んで、帰っていた。最初は世間話を振って、会話のキャッチボールをしていたが、話題がなくなり二人は無言のままコンビニに差し掛かった。
「あの、聞いても...いい、かな」
「何をですか、先輩」
「ごご、ごめん...なさい。あっあの、昔に、何か...あったの。佐久間君」
俺の声が少し低くて、先輩は怯えた、先輩の身体がビクッと小さくふるえたのが目に映り、小さく謝る。
「ミズキ先輩。怯えさせるつもりはなかったんだ、ごめん。何もないよ」
俺達が向かっているさきは、俺の自宅だ。
ミズキ先輩の家には両親がいない。亡くなったとか、離婚してどちらかと住んでいるということではなく、今日一日仕事でミズキ先輩だけらしい。不安で眠れないかもとのことで、泊めてあげることになった。
俺の自宅に着いて、玄関扉を開ける。
「さあ、ミズキ先輩。あがってあがって」
さきにミズキ先輩をあげて、二人でリビングに入る。
「ただいま。母さん、絆」
「お邪魔します」
先輩は緊張しているようだ。
「おかえり。えっ、彼女さん。もしかして」
「付き合ってないよ、母さん。ちょっとあって」
「あっ、兄貴。ごめん、今日は」
頭を深々とさげる妹。
「こっちも悪かったよ、絆のことをお前って言って」
妹の頭を撫でる。
俺と絆、母さんと先輩の四人で夕飯を食べた。
母さんは、俺と先輩にしつこく質問を投げてきた。
夕飯を済ませ、風呂はミズキ先輩から入っていく。
俺と先輩は風呂を済ませ寝間着を着ていた。
ベッドで並んで座っていた。ミズキ先輩の寝間着は俺のを貸した。ミズキ先輩色っぽかった。
「佐久間君に妹がいるとは思わなかった。仲よさそうだね、妹さんだけじゃなくお母さんとも」
「ミズキ先輩が思ってるようではないです」
俺は、目が泳いでいた。目のやり場に困った。
少し沈黙が流れ、先輩が沈黙を破る。
「佐久間君、お願い。私を抱いて」
「ちょちょ、ちょっと待ってください、先輩。いきなり、何言ってるんですか!できませんよっそんなこと。自分の身体を大事にしてください」
俺は、先輩を説得する。
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