第5話

月曜日の朝。

俺の横顔に息がかかるのを感じ、そちらに向くと妹が気持ちよさそうに寝息をたてていた。

なんで俺のベッドに妹が潜り込んでいるのかわからない。

俺は、頭が回らなくて、声をあげられなかった。

俺の胸に絆の腕がのっていた。白く細い絆の腕。

「あに...き......す...すぅ、すぅ。......すきぃ」

えっ、えっえっ!兄貴、好きだって。ね、寝言だよな。そんなわけないない。あるはずがない。

俺の頭の中を兄貴と好きの言葉がぐるぐるまわっていく。

「おいっ、絆。起きろ、起きろ」

俺は、絆の身体を揺する。

「うっ、うう......あぁ、あれっ。お兄ちゃん」

妹は寝ぼけているみたいだった。

「絆。ここは俺の部屋で、俺のベッドだぞ。俺のこと、お兄ちゃんって呼ばなかったか」

「あれっ。ここ、私の部屋......」

絆はパチパチと瞬きして、部屋を見渡す。

お兄ちゃんはスルーかよ。まあいいけど。

「違う。そう言えば昨日...兄貴のエッチ」

「昨日がなんだ。それに、俺は何もしてねぇ」

大きな声を出す俺。

絆は少し目を細め、

「妹の身体を触りたかったの。したいなら...」

艶かしい声で誘惑してくる妹。

俺は大きく手を振り、声を荒らげて否定する。

「そんなことねぇし。妹とするわけねぇだろ、やっちゃいけねぇことだよ。もっと自分の身体を大事にしろよ!てかっ、お前がしたかったんじゃねぇの。短パン穿いてないし」

俺が言うように上は着ているのだが、下はズボンなどを穿いておらず水色の下着を穿いているだけの格好の妹。

俺と向き合う妹は焦りながら言う。

「ちがっ、違うしっ。私はただ暑くて、寝るときはこういう格好なのっ」

腕を勢いよく振る妹。

「そのっ、頼むから早く下を穿いてくれ。絆」

絆は急いで周りを探すが無かったようで、目もとに涙を浮かべる。

「兄貴ぃ。うっうわぁーん」

泣き出した妹。

俺は妹にズボンを渡し、ズボンを穿く絆。

「兄貴。ありがとぉ」

部屋を慌てて、出ていく絆。

もうこんなことは勘弁してほしい。

俺は制服に腕を通し、ズボンを穿いて洗面所で顔を洗う。

リビングで朝食を食べていると絆が来て朝食を食べ始める。

キッチンから母さんが聞いてくる。

「あんた、妹に何かしたの。だめよ、手を出したら」

「手なんか出さないよ。大事な妹なんだから。女性を傷つける最低なことするわけないよ。なんですると思ってんだよ、母さん」

「それなら良いけど。そんなことしたら、私と父さんが許さないよ」

「絶対しないよ。絆も母さんに言ってくれよ、触られてないって」

「大事な妹...ぐすっ、うっううー」

また泣いてしまった絆。

俺と母さんは、絆が泣き止むまで色々なことをした。


絆が家を出てから、学校に行く。

教室に入って、机に突っ伏した俺だった。




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