第5話

たどり着いた山への入り口は草が周りを覆っている割に車の通ったあとがあるせいか歩きやすかった

全く人が利用してないわけではないように思えたが、周りには人の気配は感じない

私は躊躇することなく山を進んでいった

どれほど歩いたか確認する術がないことに気がついたがそんなこともどうでも良かった

長いような短い時間をぼーっとしながら歩いていると開けているところに出た

どうやらここがおばあちゃんの言っていたキャンプ場のようだ

相変わらず人の気配は感じない

いくら開けているとは言っても草は生い茂っている

キャンプ場として利用している人はいないようだった

私は何かに引っ張られるような感覚を感じながらも抵抗することなく先に進んでいく

私の腰ほどまである草をかき分けながら進む

長い長い時間をかけて歩いていく内に目の前に何故か縄が括りつけられている木があった

私はそれに疑問を持たずに近づきその縄の下にちょうどよくあった切り株の上に立ち、縄に手をかけた

そのまま首のもとへ縄を持っていくと……


「やめなさい!!幸!!!!!」


突然大きな声で名前を呼ばれ、ハッと我に返った

何かに誘われるまま、私は首を吊ろうとしていたのだ

自分の犯そうとしていたことを想像し突然怖くなり体がブルブルと震えだす

呼吸は自然と荒くなっていく

(私、今本当に死のうとしていた……)

現実に耐えきれず人生を手放そうとしていたのだ

震える体を鎮めようと必死に深呼吸をしようと試みたけれどうまく息が吸えず浅い呼吸を繰り返す

でも何故か体に酸素が入っていく感じがせず、それでも息をしようとするができない

(ど、どうして…?息ができない…苦しい……)

ヒューヒューという音が聞こえている

(やっぱり…私…このまま…死んでしまうの……?家族に認めてもらいたくて…頑張って…生きてきたのに…命を棒に振ろうとしたから…?)

苦しいからか、努力が報われず辛いからかはわからないけれど、両目から涙が溢れていく

(おばあちゃん……私…どんなに頑張ってもダメだった……。ごめんね……)

苦しさに意識が囚われて、私はそのまま気を失ってしまった

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

森の住人たち ヒペリカム @japonicasophora

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ