第4話
亡くなったと聞いてから私はただ動かなくなったおばあちゃんに声をかけ続けた
死んでしまったことを受け止めたくなかった
受け止められなかった
だっておばあちゃんは本当に穏やかな顔をして眠っていたから
何度も声をかけたけど目を覚ますことはない
それが悲しくて辛かった
それからの流れはあっという間だった
お葬式やらお通夜の手続きで両親は忙しそうに、気だるそうにしていた
おばあちゃんの知り合いはたくさんいたし、おばあちゃんの兄弟もたくさんいたはずだが、式は私達家族の間だけで行われた
こんなときでもおばあちゃんの兄弟には連絡も入れない両親が憎くて仕方なかった
両親は式が終わってからもずーっと遺産の事ばかり気にしていて別れを惜しむだとかそんな感情は全く感じていないらしかった
結局遺産もおばあちゃんは私の大学受験のためにたくさん残してくれており、他の姉弟や両親よりも多く手に入るはずだったが、当然その他家族はそれを快く思わず「今まで役立たずなお前をここまで育ててやって面倒を見てやって私達に恩を報いるべき」と訳のわからない理由をつけてお金を搾取したいようだった
当然私は拒否していたが逆らえるはずもなく、私の大学受験に使われるはずだったおばあちゃんからの遺産は両親やその他家族に使われてしまった
私はただおばあちゃんのいない部屋に一人佇んで泣くことしかできなかった
おばあちゃんと過ごした日々はあっけなく崩れて私だけになってしまった
それから私は両親に内緒でバイトをするようになっていたが家事をする人がいなくなったという理由で私は召使いのように家事をさせられ、バイトもクビになった
ご飯を作れば不味いと言われ、掃除が出来てなければ使えないと罵られた
勉強にも身が入らず早めに休もうとすると他の姉弟から休んでんじゃない、私達のために働けと言われ寝る間も惜しんで家事をこなすしかなかった
その間、姉弟はグースカ寝ていたり恋人と電話をしていたのをよく目にしていた
最初は目について腹も立てていたが、受験を控えていた時期にはもうどうでも良くなっていた
家事をさせられているせいで成績はガクッと下がり卒業も危ういと言われるほどだった
そのことで両親に呼び出されることもあったが、話が終わって帰宅すると暴力を振るわれ罵倒され続けた
大学への入学費用も蓄えがなかったし成績も話にならなかったため、私は就職を選択するしかなかった
進みたい道があったが、家のことをしていく内に思い出せなくなり、目の前が真っ暗になった
私は一生この人たちに振り回されないといけないのかととても苦しかった
おばあちゃんにただ会いたいと願うことしか私にはできなかった
見も心もボロボロだったがギリギリのところで留年は免れ、晴れて卒業できた
私は就職の道を選んで必死に職を探した
私にはこれと言って特技がなかったせいもあって小さな工場で体を張って働くことしかできなかった
他の面接も受けたがどれも内定をもらうことはできず工場を選ぶしかなかった
幸いその工場は同じ作業を淡々とこなす内容だったせいもあって勉強ができなかった私にも簡単にできる内容だった
そこの職場での対人関係もあまり良いものではなかったが実家を出るためだと自分に言い聞かせてなんとか25歳になるまで必死に必死に働きぬいた
両親に大半の給料を搾取されたが、少しのお金は両親や家族にバレないよう、卒業後に内緒で作っておいた口座に少量入れてちょこちょこ貯めていた
自立するためだと言い聞かせてやってきた
しかしお金にがめつい家族はそれを見逃したりしなかった
結局内緒で作った口座も両親や姉弟にばれてしまいすべて取り上げられた
私には人権がないのだと感じた瞬間、もう耐えられなくなって取り上げられた時家を飛び出した
もう心も体も限界だったのだ
ボロボロのまま、私はただひたすら走り続けた
自分に生きている価値を見いだせなかった
死ぬことしか考えていなかった
あとのことなど何もかもどうでも良かった
私は無意識におばあちゃんがキャンプへ行ったという山を思い出しそこに向かった
おばあちゃんのところへ行くことで必死だった
(おばあちゃん、ごめんなさい。私はもう疲れた。おばあちゃんに会いにいくね)と心の中で亡きおばあちゃんに向けて語りかけた
吸い寄せられるままその山に向かっていた
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