第11話 都合のいい女

その時智から着信があった。


私は智からの連絡を待つために携帯を握り締めていたのですぐにでることができた。


『どうしたの?』


おそるおそる聞くと


「今から大学の家に帰るけど一緒に帰る?」


『え?!え?!帰るの?!』


「うん、今日の16時の電車に乗る!」


『わかった!!私も急いで準備する!!』


あれだけ別れを意識していたのに、電話がかかってきたことが嬉しくて、会いたくて会いたくて、すべてを放り投げて帰る支度をした。


『お母さん、ごめん!!急に帰ることになったからごめん!!』


バタバタと準備をして駅に向かった。


いつもの智が見えた。


よかった、いた。


そのまま私たちは電車に乗り込んだ。


そして智の手を握ってポロポロ泣いてしまった。


『なんで連絡くれなかったのよ。』


「…電車だからさ、泣き止んで。」


口数の多い方ではない智がぽつんた言った。


そのまま私たちは無言のまま家に向かった。


そして家に着くなり自然としていた。


やっぱりしたかっただけなのかな?


私は求められるだけで嬉しくて。


なんでもいいから智のそばにいたかった。


もう彼女じゃなくてもいい、浮気してもいい、最後に私のところに戻ってきてくれたらそれでいい。


ずっとそばにいてほしい。

離れて欲しくない。


このまま時が止まればと本当に思った。

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