第10話 浮気…?

私は気が狂ったように智をせめた。


『なんで泊まるの?ありえないでしょ?

それでなんでもなかったって本気でいってるの?』


黙っている智。


智はそういう時必ず黙ってしまう。


元々口数の多い人ではなかったけど、けんかするとなにも言わなかった。


本当に苦しかった。


智のことをもう、智として見ることができなかった。


そのタイミングで夏休みが始まった。


長い長い夏休み。

お互い実家に帰ることにしていたけれど、気が気でなかった。


帰りたくなかった。


離れたくなかった。


そして予感は的中。


帰省したことを境に連絡が途絶えた。


おかげで毎日眠れなかった。


ご飯もほとんど食べれなかった。


夏バテだよ、と母親には説明しておいた。


会いたくて会いたくてたまらなかった私は智の実家に足を運んだ。


『今から智の家にいくね。』


その時だけはすぐに返事がきた。


「だめだよ!なんで?!」


『会いたいからだよ。もう電車乗った!』


「駅に変な奴がいるよ!そこでおりたらだめ!」


『なんで?駅にいるの?迎えにきたの?』


「とにかくだめだから!」


駅には誰もいなかったし、智の姿もなかった。


私の気持ちを表すかのように雨が降ってきた。


智の家に向かいたかったけど、傘もなかったのでそのまま家に帰ることにした。


母親に会えた?と聞かれたけど、ううん、とだけ答えて部屋で泣いた。


もうだめだ。終わりだな、と思った。


高校二年生の時から二年回、楽しかったことも辛いことも、二人で過ごした。


本当に好きだった。


こんなに好きになったのは後にも先にもいない、智だけ。


愛してる、愛してる。

最後に会いたい…。


そう思っていた時だった。




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