第9話 大学生
私たちは大学生になった。
初めて一人暮らしをするその日は本当に寂しくて寂しくてずっと泣いていた。
何日か後に智も引っ越してきた。
その日は私の家に泊まった。
そこから二人で暮らし始めるのはごく自然なことだった。
智はかっこいい。
だからキャンパス内で見つけて手を振るたびに嬉しかった。
でもそこで見つけるのは決まって夏海の姿だった。
夏海は智と同じ高校から一緒に大学に進学してきた。
なんでわざわざ同じとこに来るの?
智に気があるとしか思えない。
本当にそんな気持ちで、やきもちでいっぱいだった。
そのうち私はすべて疑心暗鬼になっていった。
連絡が来ないと、夏海となにかしてるの?
と疑い
飲み会があるときくと、夏海も一緒?もしかして、まさか、二人なの?
と疑い
智にとってはとっても窮屈だったと思う。
そんな時、私は未だに掲示板を漁っていた。
彼氏もいるって書いたし、智以外はありえないと思っていたので本当に寂しさを埋めるためだけの行為だった。
そこで出会ったのが「おにぃ」とよばれる年上の男性だった。
最初はちょっとした書き込みから始まったけど、そのうち二人だけの専用ルームもできて、本当に昔の智のように、ぽんぽんとレスが来て、本当に楽しかった。
「りなちぃはなんでその彼氏とつきあってるの?」
『好きなの、大好きなの。でも全然わかってくれないの。』
「別れたら?そしたらりなちぃはもっと自由になれると思うよ?」
『自由?』
「大学生はもっと楽しいことあるよ!
その彼氏に縛られて、寂しいとか孤独だとか二年間もったいないよ!」
やっぱり大人の男性の言うことはなんだか違うように感じたし魅力的だった。
そのうち直メをするようになった。
おにぃは時間が不規則な仕事をしていていつ掲示板が覗けるかわからないから、いつでもメールしてね、と言われた。
本当に苦しかった。
智のこと、大好きだけど、智の気持ちが全然わからなかった。
不満しかなかった。
だから別れようかなとか何度も思った。おにぃの言うように自由になろうかな。
でも好きだった。
別れられなかった…。
苦しくて寂しくて好きだった。
そんな時、智が夏海の家に泊まったことを知った。
私の友達と智の友達が繋がってて、その経由で聞いた。
「ねー、りな!!今日智くん、どうしてる?」とメールが入った。
『なんか潤くんたちと飲み会って聞いたよ!』
「今、私潤といるんだよね…。智くん、多分夏海といる…。」
『!!』
嘘をついてまで夏海といたかったの?
「りな、大丈夫?潤も一緒だけどそっちいこうか?」
『ううん、二人の邪魔したくないから大丈夫!ありがとう!』
絶望しかなかった。
もうこのまま死んでしまおうかとさえも思った。
その夜智は帰ってこなかったし、連絡もなかった。
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