シュウマツの過ごし方
1103教室最後尾左端
プロローグ
目を覚ますと、彼女がいなかった。
机の上に突っ伏して眠っていたらしい。どうやら原稿を書いている途中に寝落ちしてしまったようだ。長い時間無理な体勢でいたためか、身体の節々が凝り固まっている。幸い、机の上の原稿用紙やノート、パソコンに涎や汗のたぐいはついていなかった。
ふらつく足取りで自分の仕事部屋を出る。眠気覚ましに風呂にでも入ろうか。それよりも水を一杯飲むのが先か。そんなことを考えながらリビングにつく。つけっぱなしになっているテレビから機械音声の無機質な声が聞こえてきた。
「……ついに今週末に迫りました、小隕石衝突の詳細な時間が判明いたしました。時間は大体24時、日曜日と月曜日が入れ替わるあたりだそうです」
リビングはとても静かで、寂しく響くテレビの音が余計に静寂を際立たせていた。
あまりの静けさに違和感を持って、僕は彼女を探した。しかし、家中を探し回ったが彼女はいなかった。どの部屋も彼女がいないというだけで妙によそよそしく、僕を部外者のように扱った。
不安になって、僕は彼女の名前を呼ぼうとした。
でも、なぜか僕は、彼女の名前が思い出せなかった。
テレビからはまだ無機質な音声が流れ続けている。
「この放送を持ちまして、当テレビ局は予定しておりました全放送を終了いたします。今までご視聴本当にありがとうございました。皆さまどうか良いシュウマツをお過ごしください……」
僕は彼女を探しに外に出ることにした。
彼女がいなければ、僕は幸せなシュウマツを送ることができなくなってしまう。
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