第2話 お約束は破棄せよ

「もう、マジでありえないんですけど!!ねぇ、せんぱい!聞いてるんですか!?」


夜10時過ぎのファミレス。俺の目の前でキャンキャン騒いでいるのは我が社の学生インターンこと西原 誉。我が家の玄関先に座り込んでいるところを確保しファミレスに移送して約2時間。少し遅い晩飯を食ったことでどうやら彼女は少し落ち着いたらしい。


「はいはい、聞いてますよ。というかうるさい。少し静かにしろ。」

「もう!あの状況で!美少女が!家の前でボストンバックですよ!普通は家で話を聞くのがお約束でしょ!!」


元気になったのは良いがさすがにうるさい。そしてこのたった二言でわかるようにこの西原、性格が残念な感じの自称美人JDである。まぁそもそも。ベンチャーで、しかも学生のうちからインターンするようなやつが大人しくて儚げな美少女なわけが無い。


「わかった。わかった。とりあえず落ち着けよ。」

「全くわかってない!せんぱいは全くわかってないです!」

「はいはい。飲み物とってくるけど何がいい?」

「あ、じゃあオレンジジュースで。」

「はいよ。」


話を逸らすとケロッとしてオレンジジュースを要求してきた。いや、そこは私が行きますとかじゃねぇーのかよと若干イラっとしながらも席をたちドリンクバーへ。ボーッと飲み物が入るのを待ちながらこれからの事を考える。今でこそ少し落ち着いて普段の雰囲気が出てきた西原だが明らかに落ち込んでいる。食事をしている間はお互い最低限の雑談しかしていなかったので結局なんで彼女が我が家の玄関にいたのかは聞けずじまい。


オレンジジュースとコーヒーを手に席に戻ると外の様子を虚ろな表情で眺めている西原がいた。これはまぁ、さすがにほってはおけないが、、、めんどくさいがしゃーないか。


「はいよ。オレンジジュース持ってきたぞ。」

「あ、先輩ありがとうございます。」


俺が席に座るまで人が近づいて来たことすら気づいて無かったようだ。明らかに心ここにあらずという感じ。そしてさっき俺に絡んできたのも、まぁ空元気なんだろうな。お互い飲み物に口をつけて少し静かになる。この時間のコーヒーはミスったか、、、?


「ねぇ、せんぱい。」

「なんだ?」

「聞かないんですか?」

「何を。」

「私がどうして先輩の家の前にいたのかって?」


め、めんどくせぇぇぇ、、、、!!!盛大な心の嘆きを漏らさないよう、必死で面倒くさそうな表情を押し止める。時にこのサイコ野郎と会社の同僚たちから罵られる俺でも流石にわかる。いま面倒くさそうな表情をしては駄目なことくらいは。


「話したいなら聞く。」

「うん、、、」


やばい。そのリアクションも含めてめんどくさい、、、もう早くしてくれ、、、

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