第5話 悪の企み(2)


 水希はもう一度スマートフォンを取り出すと、インターネットに繋いだ。電波障害さながらの通信速度にはやる気持ちを抑えながら、ようやく表示された検索ページに素早く文字を打ち込む。

 すると開いたページには速報の文字と共に日本人が続々と謎の病で倒れ、不慮の死を遂げているニュースが一面に記載されていた。医療機関が早くもパンク状態だということ、司法解剖も追いついておらず死因の特定が未だ進められていないこと。


 そして……エニアが関与している可能性があるという憶測の一文。


「やっぱり、今日本人が続々と原因不明の病で倒れてるらしい」

「原因が分からない以上日本は真っ先にうちの国を疑うでしょうね。全く、たまったもんじゃないわ」


 不服そうにため息を落とすシャルベットに水希は返す言葉も見つからず、黙って画面をフリックするしかなかった。

 そして記事の中で被害のほとんどが成人済みの大人だということを知る。思えば学校でも病に倒れたのは生徒ではなく教師だった。それを伝えると、クレイルは眉間に皺を寄せた。


「先ずは知能が高い人物から排除、か。ペティの人間が考えそうなことだ」


 水希は懸念した。

このまま病が進行し、大多数の大人が命を失ってしまえば知識が無い若者が国の過半数を占めてしまう。感情だけで動いてしまう若者の暴動が波及はきゅうしてしまえば、日本とエニアは間違いなく対立することになるだろう。


「これは早いうちに手を打つ必要がありそうだね」


 自分の国が巻き込まれる可能性があるというのに、どこか他人事のようにも聞こえるクレイルの言葉。しかし孤立しているエニアにはこの状況を打破する術がないと言っても過言ではない。そういった意味では、行く末の手蔓てづるは水希に託されているのかもしれない。


「でも何をすれば……」

「何って、君にはそれがあるじゃないか」


 そう言ってクレイルは水希のスマートフォンを指差した。

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