第29話剣聖の憂鬱
ここはどこだ…
私は見知らぬ場所にたっていた。
私は…私たちはダンジョンを攻略してて…
ダメだ…記憶が曖昧だ。
もしかして転移系のトラップにでも引っ掛かったのだろうか。
転移系のトラップは基本同じ階層か、下の階層に転移させるトラップだ。
だからもし私のいる場所が100階層より下であれば私一人では到底太刀打ちできない。せめて同じ階層である99階層であれば道も覚えているのでこのフィフティニアの回廊から脱出することができるかもしれない。
私は甘い期待を抱いていた。
だが、現実はそうとはいかない。
まずここはボス部屋だろう。ボス部屋から出るには外からしか扉を開ける事ができない。もしくはボスを倒さないといけない。
1年前にリーンが転移魔法でボス部屋に入り、中から開ける事ができるのか試していたが、結果超級魔法を扉に向かって撃っても扉はびくともしなかった。
その爆風でボスモンスターであるミノタウロスが倒れたのですぐ開いたが、今このボス部屋にはボスがいない。
つまり出れないということだ。
ん?ボスがいない?ここで最悪な場面を想像してしまった。
「ありえないか…そんな事」
今までそういうことがあったという実例は一切聞いたことがない。
だから大丈夫だと思うが、今私の頭のなかにはもしそうだったら、と、不安が一杯でどうしようもない。
もしそうだとしたら私はここから出る方法がほとんど失われてしまうのではないか、もし人が来たとして私の望む職業の確率はほぼゼロに近いからだ。
【テイマー】が冒険者をするなんて前代未聞過ぎる。
冒険者の登録基準としてもおけられている試験の『戦闘』をクリアできないと思うし私が試験の基準をあげてしまったせいで余計クリアできなくなってしまったまである。
冒険者の非戦闘職の確率は1パーセントもないと一回聞いたことがある気がする。
私以外のパーティーメンバーは大丈夫だろうか。
賢者であり、一国の王女でもあり厄介な知識オタクのリーン。
常に魔術のことを考えて、有事の時以外王都での魔法の発動を禁じられるほどのマジックジャンキーのシータ。
お金大好きでお金を稼ぐために新たに宗教を起こしたお金大好きの聖女マリア。
あんまり記憶に残っていない聖騎士のケイト
そして我らがリーダーで天然マスコットの勇者レオナ。
今回のことはレオナが見え見えなトラップにさえ引っ掛からなかったら起こっていなかったことだが、というより
「『新たに生まれ変わる覚悟はあるか』って怪しさ満点の文字で書かれた紙がすぐそばに張ってあったのに何でボタン押すのかな~」
私はポンコツ勇者のことを恨んだ。
まあ、まだいまは悩むときではないので、考えることを辞めて収納の指輪から剣をとりだしその場で素振りをした。
私は常に剣をさわってないと落ち着かないのでなにもないときは常に剣を振っている。
職業は【剣聖】で王国騎士団長も務めている。飾りだが…
呑気に素振りをしているが、考えている最悪な事態に今なっている。
◆
ダンジョンのボスはボス部屋から自分の意思で出ることはできない
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