第14話玲奈の日常 side玲奈

「おにーちゃん行ってきます」


「行ってらっしゃい」




 と言い、私は、私の通う『太陽中学校』の校門をくぐった。


 この学校はなぜか、同じ大学の付属校なのに中高一貫ではなく、一つの私学の中学校だ。私はあまり勉強が得意ではないので、エスカレーターという制度のないせいでおにーちゃんと同じ高校にいけるのかが、少し心配だ。


 まあ、そんなことはさておき私は、久しぶりにおにーちゃんと登校ができて嬉しかった。


 おにーちゃんとは中学1年生のときに一緒に登校して以来一緒に登校できていなかったからだ。


 中2の夏休みから、おにーちゃんはぐーたらしはじめてそれ以来いつもぐーたらしている。


 昔はいっぱい遊んでくれたのに、今では2〜3ヶ月に1回ぐらいしか遊んでない。その原因は私にもあるかもしれないが、あんなに中の良かった兄と遊べないのは普通に悲しい。


「ネガティブ思考おしまい。」


 私は自分の両頬を叩いて自分に活を入れるそして、玄関に入った。




「玲奈!あの格好良い人誰!」


 玄関に入った途端友達の那留が私にすごい形相で問い詰めてきた。


「私のおにーちゃんだよ。」


「今度紹介して!」


 やっぱり来た。那留は面食いで、おにーちゃんを見たら食いついてくると思っていたが、やっぱり食いついてきた。おっと、平常心平常心。こういうときいつもはなんともないんだが、おにーちゃんが取られると思うとついクチが悪くなってしまう。


「機会があればね…」


 一生来ないであろう機会の約束をする。絶対にしたくない約束でも日付や日時を約束しなければどうとでもなる。と、ネットで見たことがある気がする。


 私達は話しながら教室へと向かった。







「玲奈はダンジョン行った?」


「行ったよ〜」

「良いなー羨ましいなー。私も早く15歳になりたいよ〜」


「8月入って直ぐだから良いじゃん」


「良くないって。こんなことしてるうちにみんなLvガンガン上がっていくんでしょ。」


「まだ誰一人としてレベル上がってないみたいだから。大丈夫だよ」


 そう、海が【先駆者】の称号を入手したように、ダンジョンでスライムやホーンラビットなんかを倒しとところで、得られる経験値はたかが知れている。


 なんせ10歳くらいの子供でも倒せるほど弱いんだから、そんなやつを倒したところでどうやって『経験』を積めば良いのか…


 これにも一人例外がいるが…




「マイレディ。さっきに男は誰何だい?」


 めんどくさいやつが来て私はため息をつく。


 この初っ端から頭のおかしいことを行っているやつは、美谷光(みたに ひかる)すべての女子は自分のことを好きだと思いこんでいる頭のおかしいやつだ。


 一度もこれと同じクラスになったことのない女子たちは、無駄にルックスのいいこいつに絡まれている私をなぜか嫉妬するが、一回同じクラスになったやつは皆こいつのことをただののりのいいヤツとして認知している。



「私の大切な人。だよ」


 間違ってはいない。だから私は悪くない。もしおにーちゃんがこいつに絡まれたら、おやつでもおごってあげよ。


「なっ!!」


 ナルシストはいまのを真に受けたようで化石みたいに固まっている。ちょっと面白い。


 これを気にちょっかい出してこなければいいのに。


「あの男の【ジョブ】は何なんだ。僕は火炎魔術師だぞ。」


「【錬金術師】って言ってたよ」


「戦えないじゃないか。そんなやつに君はふさわしくない。そんなやつと縁を切って僕と一緒に…」


 急にしゃべるのをやめてどうしたのかと思ったが、私の手刀がこいつの首元に当てられていた。


 自分では冷静でいたつもりだったが、冷静でなくなっていたようだ。


「くっ、な、なら、今度その男と僕と君とで一緒にダンジョンに行って」


「え、やだよ」


考えるよりも先に答えが口から出ていた。そんなに私はこいつのことが嫌いだったのか、びっくりだ。




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