黒い水の杜
目を覚ますと、Mさんがぼくの顔を覗き込んでいた。目が合うと、彼女は微笑んで、安堵の表情を浮かべる。これは夢だろうか?ぼくは死んだのか...。
「良かった、生きてた...。」
Mさんの言葉で現実に引き戻された。身体を起こすと霧はもう晴れていて、池は波一つ立たず静かになっていた。Mさんは良かった、良かったと言いながら、ぼくにしがみついている。これで終わったんだろうか?全身ずぶ濡れで、なんだかどっと疲れたような感じがした。光が眩しくなって、一気に景色が白くなっていく。サーっと血の気が引いて、Mさんの膝の上に再び倒れ込んだ。池の方に黒い影が見えた気がした。
次に目を覚ました時は、白い天井とカーテンレールが見えた。自分が寝ているベッドサイドの窓からはあの旧い校舎と裏山が見えた。外からはあの社は見えなかった。Mさんはベッドにもたれて寝息を立てていた。どうやらぼくは、病院運ばれて、彼女がずっと付いていてくれたようだった。
ベッドサイドテーブルの上に、コンビニで買ったと思しきスイーツが置いてあり、その脇にあるメモ紙に女性らしい字で、起きたら食べて、と書かれている。これもMさんが用意してくれたんだろうか?どれくらい時間が経ったのか、窓からはもう夕陽が差込んでいた。
「ん...良かった、起きたんだ...」
Mさんは眠たそうな声で話した。彼女の顔には眠っていた時についた跡が残っていた。
「顔に、跡がついてるよ。ふふっ」
「やだ、恥ずかしい!もう...ふふっ」
2人で一頻り笑い合うと、本当にやっと終わった、という感じがした。ぼくやみんなはきっと、あの女の子に魅入られていたんだ。Mさんがみんなを助けてくれた。今回もまたそうだった。
「じゃあ、また明日来るわね。」
Mさんがにこりと笑って席を立った。ぼくが彼女を見送ろうとベッドから降りようと、彼女が座っていたあたりに足を下ろした時、ぴちゃりと音がした。
「これは...黒い水たまり...?」
社 QAZ @QAZ1122121
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