第3話 学園編3

突然だがこの世界は中世レベルの文明水準である。当然魔法の影響もあり技術的には凄まじく進んでいる領域もあるのだが根本的な社会の仕組みは中世だ。そして貴族制や魔族との戦争の影響もあり、かなり封建的というか閉鎖的な社会である。


そんな社会での商売はどんなものか?当然考えるまでもなく縁故が優先され、既得権益ガチガチの世界となる。


我らがヴェルムス学園の購買部もご多分に漏れず学園の購買担当と縁がある業者が独占契約をしていた。その商品が良いものであったら良かったものの、値段の割に品が良くない。しかも品揃えが悪い。当然のように生徒からの評判も悪い。そして生徒会長は購買の改革をしたいらしい。


俺がこの学園に入学してから半月の時点で得たいた情報である。そして俺はこのをものにした。奨学生の立場である俺はまず最初に金が必要である。奨学金は授業料と最低限の生活費しか出ないからだ。


既得権益ガチガチの世界に喧嘩を売るのは一見悪手に見える。もちろん完全な新参者が攻め入るにはまずい領域であることは事実だ。ただし、既得権益同士の抗争に形を変えてしまえばやりようはいくらでもある。


ということで早急に金が必要だった俺は生徒会長と取引をして、そして購買部は我らの手に落ちた。コンサル料+月々の売上の5%が俺の手元に入ってくる形になって。


以上が噂の背景である。


「で、そんな噂を聞きつけたドゥニ先輩は俺に何のようですか?」


ちなみにこのドゥニ・カラックスさん。ネクタイの色を見る限り先輩のようだ。雰囲気はチャラめ。持ち物、身なりから中堅貴族か。。。?


「まずは噂が本当かどうか確かめたい。」

「そんな噂知りませんって言ったらどうしますか?」


おれがニヤリと小馬鹿にした感じでいうと先輩は苦笑。意外なリアクションだな。先輩、かつ貴族なら平民で後輩の俺のこの態度、気に入らないはずだけど。


「まぁそう言うだろうなって思っていた。噂から推察していた性格通りってところかな。」

「へぇ?機嫌を悪くしないんですね?」

「まぁな。今回は俺が頼む側だ。それに俺としてはお前があれをやったとほぼ確信している。」

「その根拠は?」

「まずは噂といったが、本当にごく一部にしか流れていない。大半の生徒は購買がよくなったなーくらいしか気づいていないだろうな。」

「ふむふむ。それで?」

「少し話はそれるが、購買に課題感を持っていたのは生徒会長だ。そのことはこの学校の噂好きなヤツならだいたい知っていた。」


俺は頷き、黙ったまま話を促す。


「だから最初に購買の品揃えが変化したとき俺も生徒会長がなにかしたか?程度にしか思わなかった。ただ冷静に考えるとそれは無いと思ったんだよ。違うな、正確にいうと生徒会長が直接動いたならもっと派手なことになっていたはずだ。その時点で違和感をもった。要するに生徒会長に協力者ができたか?ってことだな。」

「なるほど。確かに生徒会長の武勇伝からすると今回のケースは違和感を感じますね。でもそれだけでは僕がやったことにはならないのでは?」

「そうだ。もちろんこれだけじゃ情報は足りない。で、ここから結構地道に調べたわけだよ。購買の商品のラインナップ、仕入れのルートや納入業者なんかも調べた。そしたらバートン商会が出てきたわけだ。もちろんバートン商会そのものは今回直接出てきてなかったが、バートン商会傘下の中規模商会だな。あれは。」

「詳しいんですね?」

「まぁな。たぶん気づいていると思うが俺の実家は貴族だが中堅どころだ。政治的には大した力は無いが代わりに情報は大事にしている。とくに市場のな。」

「なるほど、それは魅力的ですね。」

「まぁそれはさて置き、バートン商会はたしかにデカイ商会ではあるが帝都ではそこまで強い影響力をもつ訳ではない。そんな商会が偶然この学園の仕入れ業者にいきなりなることは少し考えにくい。そこで思い出したのがバートン商会総帥の娘が今年の新入生にいたことだ。」


俺はドゥニ先輩の話を聞きながらニコニコしていた。この人は良いな、、、周りがよく見えている上に情報の組み合わせ方が良い。


「そこからその新入生を少し調べてみたが彼女自身は生徒会長に接触した感じもなかったし、商売上の駆け引きができるような印象も受けなかった。まぁ勿論人は見かけによらないケースも多いが、あの子はほんとに素直で良い子みたいだな。大事にしろよ。」

「先輩、話がそれてます。」

「わりぃわりぃ、そんな顔赤くすんなよ。まぁそれは置いといて。いずれにせよ俺が見つけた線上で怪しかったのがユーナ・バートンと同郷のコウ・サギサワだったわけだ。彼女との関係性も踏まえてな。」


これは隠すだけ時間の無駄か、、、


「なるほど、良くわかりました。大正解です。正直こんなに早く誰かにガッツリバレるのは想定外でしたが。」

「まぁ普通に見てるだけじゃわからんわな。今回は俺も急いでいたから真面目に調べたわけだ。」

「それで用ってのは何ですか??聞くだけ聞きましょう。」


俺がそういうと先輩は少し悩んだ表情を浮かべたが、こう切り出した。


「実はとある悪徳商会を潰したい。」

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