第11話 実戦訓練
朝早く、普段ならそろそろ起きる時間だったが、練兵場に実戦訓練に参加する者達が集合していた。80名の高校生と、各々のサポーター、騎士団の兵士100名ばかりだ。
弁当をサポーターの分と2つ渡され、収納に入れるように言われた。
クラスメイトはやはり皆落ち着いていた。
馬車に乗り整然と出発していく。
クラスメイトに話し掛けられていたがセリカは上の空だ。適当に相槌を返していた。
セリカはドキドキしていた。遂に助けられるからだ。早く着かないかなと心が逸る。
他のクラスメイトを置き去りにする罪悪感はない。既に彼らの魂が死んでいると確信していて、もう手遅れと思うからだ。
そして森の入り口に着いた。着いた順に森に入る。入り口に待機している騎士団達から伝えられた。お昼と二時間後、更に一時間後に上空に派手な魔法を放つ。最後の魔法で打ち切り、馬車の所に引き上げるようにと。
サポーターは基本的に自分の身を守り、こちらの質問に答えるだけだ。流石に対処できない者が出た場合は介入するそうだ。
今回はパーティーを組まされていた。前日の訓練に参加した半分がそうだった。
セリカの所は女子オンリーで、セリカはアタッカー兼ヒーラーだった。
森に入るのも整然と入る。
森に入るとほぼ同時にオークが数匹き現れたが、どうにか押し返し、慌てて逃げ戻ってきた。
追って来たのは騎士団が捌く。
まだ心の準備が出来ていなかったのだ。
森に入り一分も経過していなかったからだ。
仕切り直して森に入る。セリカが先頭だ。セリカは先のオークが怖くて少しちびってしまった。初の実戦が盛りが付いて鼻息が荒かった奴らだったのだ。犯される!この恐怖だった。
セリカは志郎の大体の居場所が分かる。早くそちらに向かいたいが、中々に思うように行けない。
森に入り20分か30分位経過した頃だろうか、パーティが分断された。急に横からオーがの群れが現れたのだ。
セリカはパニックになり駆け出す。何とか志郎のいる方向へ必死に。
冷静にするつもりだったが、本気で叫びながら逃げ出していた。
「イヤー来ないで!嫌だー 」
と叫んで走ったのだ。
程なくして志郎を探し当てた。正確には志郎が探し当てたのだ。セリカは涙した。王子様に見付けて貰ったのだと。
ついついその胸に飛び込むが、皮鎧の感触しかなかった。頬擦りするんだったとちょっと後悔する。
志郎はセリカの背中を軽く叩き、引き離した。彼は冷静だった。
命が掛かっているので事前に話していた通り急いで服を脱ぐように言われるが、外でしかもキスすらした事の無い男性の前だ。好きな相手とはいえ恥ずかしくて手が動かなかった。当たり前である。男性経験の無い少女にはハードルが高過ぎた。しかし、相手は見越していたようで、
「ごめんな。君の命が掛かっているんだ。後から恨んでくれ。」
志郎が頼んでいたのはナンシーというエルフ?の物凄く胸の大きな美人だ。きのうは見なかった者だった。
どうやら女性陣の中で上の立場で、周りの昨日見掛けた過多や、違う方達にセリカの服を脱がすようにお願いしていた。
セリカは少し抵抗したが、皆に無理矢理脱がせられてあっという間に裸にされてしまった。ごめんねと優しく声を掛けられた。
恥ずかしく胸と股間を必死に手で覆う。
志郎が様子を見ていて裸になったのを確認し、セリカの前に近付いてくる。一瞬だけ体を見たようだが、じろじろとは見なかった。セリカは恥ずかしく、しかも先の下着が気になって仕方がない。誰かが肩を掴み、
「クリーン」と唱え、
「匂いも取れたから大丈夫よ」
と言ってくれていた。
確かに股間は濡れていなかった。逃げる時に恐怖で失禁していたのだ。彼の前に立つ時に恥をかかさないようにしてくれたようで、有りがたかった。
ただ、事前に逃げる時に失禁でるならするようにと言われていた。偽装がより確実になると。だから、失禁は命じられた事をしただけに過ぎない扱いで、言いつけを守り、恥ずかしい事をさせたねと謝られ、セリカは救われた。
彼はおもむろに手の下に手を潜り込ませ、セリカの左胸を直接触った。セリカは目を瞑る。恥ずかしかったからだ。志郎は奴隷契約を再実行し首輪を外した。
セリカはやはり紳士だと感じだ。胸を揉まれても仕方がないのだが、揉まないし、エッチな目線で見ていないと感じたからだ。体を見たのもぐるっと1回転回させ、
「よし、怪我はなさそうだな」
と怪我をしていないか確認しただけだった。
聞いた事がある。冒険者は冒険中に異性の裸を見ても決して性的な目線で見事を禁止されると。急ぎで狭いテントにて着替えたりするからと。まさにその状態だと。しかも召喚から2週間で身に付けていると尊敬した。
しかし志郎の頭の中は
「我慢して揉まなかった。でも至福の触り心地だ。こんな時にも胸の感触を味わう俺って・・・・偉いよね!揉まなかったもん』
とアホな思考になっていた。セリカはとても綺麗な躰だ。胸は世界の宝と思う見事さ。そのままオブジェにしたいくらい。と性的な目でガン見されていたりする。しかし、ポーカーフェイスで表に出さないので、セリカはドンドン志郎を美化していく。
彼がひとこと一言呟いた
「綺麗だ」
セリカは赤くなり、
「しろうさんのエッチ」
と呟いた。ただ、この一言で少し和んだ。
下着を渡たされたので慌てて穿いた。
そして急いで皆で服を着せてきたのだ。
また
皮鎧を着させてくれた。セリカは志郎の視線が気になっていたが、志郎は収納から出した死体に服と装備を付けてその辺に放り出していた。おぞましい事を自分の為にしてくれていた。お花畑状態だったのを恥じ入った。
そして志郎は連れてきていたオークに死体を攻撃させた。死体の顔は予めて潰していたようで、元々どんな顔の者だったのか分からなかった。髪の毛は黒かったが。
ほぼバラバラに細切れで、最早誰の死体か判らないようになっていた。
セリカは直視出来なかった。この死体の主が自分の身代わりとは言え、何をしたのだろうか?死体に対する冒涜とも思ったか、誰かが、
「ふん。盗賊の末路としてはこんな物でしょう。最後に人助けができるのだから、むしろ感謝すべきよ」
と聞こえた。どうやら討伐した盗賊の死体だ。セリカは呆然としていたが、ナンシーと呼ばれたお姉さまが
「せりかさんとおっしゃいましたね。大変でしたね。ランスの保護下に入れば安心です。あの者の事は気に病む事は有りませんよ。盗賊ですから。晒し首にされないだけましなのですよ。さあ行きましょう勇者様」
と言われ、セリカはお辞儀した。綺麗な女性で、耳が人間のそれではなかった。歳は20にはなっていないが自分より上だと感じだ。感じの良い上品な女性だ。この人となら仲良く出来ると確信した。しかし、志郎は何をしたのだろうか?この女性はそんな簡単に男性に靡く人じゃない。清楚で心の綺麗な人だ。男性からモテルだろうと。ナンシーさんも志郎に心酔していると、愛していると確信していた。
志郎は隷属の首輪を適当に置いた。装備や服の残骸からセリカと判断できるだろうと呟いていた。
御丁寧にステータスカードも頭部付近に置いておいくとして、セリカに出させていた。どうやったか分からないが、偽装を施したようで、死亡のカードになっていた。
ニーベルングと呼ばれた女性が志郎に指示をされ、ステータスカードを懐から出してきてセリカに渡す。
志郎はセリカに早速カードに一滴血を垂らすように指示を出していた。
指から血を出し、カードに垂らしてセリカのカードを作成していった。
最後にセリカに断末魔の叫びをするように指示を出してきた。セリカは頷きながらありったけの声で、「ギャー」と断末魔の叫びを上げ、偽装を確実な物にしていった。
志郎は残りの魔物を勇者達が居る方へ突撃させて志郎を先頭にしてダンジョンへ向かうとの事で歩いていく。
念の為にトランスフォームで髪の色を金髪に変えるように指示が来た。これではセリカとは思えないだろうと。
名前も偽名に変えていた。セレナと。
セリカはセレナという名前がここで出てきて、全てが繋がった気がした。しかし、先程から頭が痛かったが、皆に伝える事が出来なかった。もう一人セリカを世話して護衛をしてくれる女性がいて、格好いいなと思うのであった。
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