第5話 講習

 セリカは焦っていたが、まず自分の身を守ろうとした。何故だか分からないが、いずれ助けられると確信している。正確には助けられると信じ込んで耐え抜こうとしていたのだ。


 心の拠り所となる筈だったお兄さんはもういない。

 既に妄想レベルで彼は美化され、白馬に乗った王子様なのだ。彼がいずれ助けに来る。それまで生き抜こうと、耐えようと健気に己に誓う。セリカは自信でもおかしいと感じてはいる。自分は慎重で一目惚れするなんてない筈だと。母親に言われている事がある。咄嗟の事や異常事態で人の本音が見える。彼は落ち着いて状況を咀嚼し、どうやって対象していくか考えて慎重になってるのが分かる。そんな彼がこの女を襲いに行く筈がない。持っていた。鞄も年季が入って使い込まれているが、丁寧に使われているのか分かる。親から引き継いだ。鞄だろうか?高級ブランドの筈だ。仕事で使うには最適だが、20万はするから、彼の歳では仕事用で普通は買える値段じゃない。だから謎の彼をよく知りたかった。また、体験した幻影?は妙にリアルで、理想の愛され方をしていたな、触ったり触られたりする感触が本当にそこにいるとしか思えないリアルさだった。


 昨日の王女が何事もなかったかのようにこの世界についての講習を始めるとして、神官?に講習を始めさせていた。

 今は会議室?といった感じの部屋にいて、長テーブルに座っていた。


 皆真剣に聞いている。

 セリカは目立たないよう、皆に埋もれるようにして行こうとしていた。


 ショックだったのはお兄さんの事は誰も話さなくなり、王女が触れもしないのだ。さも始めからそんな人はいないかのようだった。


 彼女は彼に触れた手の感触を思い出す。確かにそこにいたのだ。温厚で二枚目な顔が思い出される。今何をしているのか心配でならない。どうか生きて!と祈るだけだ。


 講習は魔物の話しだとか、魔法の話だ。

 昼は食堂にて食べたが良く覚えていない。


 その日は座学で終わった。

 翌日は魔法の訓練だ。皆何かの魔法を使えるようだ。

 セリカは火属性だ。

 また、空間魔法があり、物の大きさや袋の中を見た目と反して大容量にするサポート系を持っていた。

 これはギフトと言うのだが、実は彼女の能力はプラスがあるのだが、気が付くのはまだ先の事だ。


 翌日は練兵場にて魔法訓練と言われていて、支給されている冒険者用の服を着ている。


 各自に一人サポーターが付いていて、藁人形に向けて言われたように魔法を放つ感じだ。

 セレナはファイヤーアローとファイヤーウオールがだ対して強くない。尤も威力のコントロールが何故かわかるので、わざとしょぼいまほうで皆と同じ威力にしていた。


 スキルからサポーターに指導を受けながら力を付ける感じになると話していた。何故か男には女、女には男のサポーターだった。


 それから翌日は簡単な武器の使い方を教えられた。この世界は魔物が多く、街の外に山菜や薬草を摘みに行っても魔物と出くわす可能性があり、魔力切れになったりすると最後は武器で何とかするしかなく、例えか弱い女でも短剣位は使えないと街から一切出られないとまで言われた。貴族は別だ。護衛を雇うからだ。


 セリカは短剣を難なく扱えた。


 剣はパスして、槍を選んだ。サポーターが意外なと言っていたが、槍に似た武器を習っていたと話すと納得していた。


 薙刀を習っていてインターハイで8位の実力がある。現時点で生徒達と武器で戦わせたら最強だった筈だった。柔道の有段者はいたが、剣道はいなかったからだ。

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