第4話 運命の人の放逐

 セリカの朝の目覚めは胸騒ぎがで不安だった。何かしら大変な事が彼に起きたのでは無いかと嫌な予感がしてならない。


 支給された町娘風の動きやすい服に急いで着替えて、食堂に向かう。


 スカートの丈が踝近くまであり、セリカはちょっと不満だったが、今日はオリエンテーション?だから仕方はがないのかな?と思いつつ食堂に向かって行く。場所は部屋にあった案内に書いてあった。


 食堂に着くとセリカは遅い方で既に殆どの者が座っていた。


 セリカは昨日の彼を探すも見当たらない。嫌な予感しかしないが、クラスメイトが話掛けて来た。


「セリカどうしたの?なんか浮かない顔をしているよ?それより聞いた?あのサラリーマン追放されたそうよ!」


 セリカは耳を疑った。

 サラリーマンと言えば彼だ!愛しの彼が追放とは由々しき事態だ。


「由実!一体何があったの?」


 語気を強めたセリカに由実と言われた女生徒は


「まったく持って不潔なのよ!きのうのルシ何とかいうお姫様が居たでしょ!?あのお姫様の部屋に忍び込んで犯そうとしたそうよ!幸い未遂だったそうだけど、それであのリーマンを何とかいう森に放逐するんだって。魔物?が多くいるというから、実質的に処刑よね!私達の中に性犯罪者がいたなんてまったく嫌だわ!」


 セリカは違和感を感じた。


 確か男子は騎士団の宿舎を割り当てられていたのだ。

 城の中は広くまるでまるで迷路だからお姫様の部屋なんて絶対に分からないし、まず城の中に忍び込めない。

 例え忍び込んでも、お姫様の部屋の場所も分からないから、探している間に誰かに見付かる。警備もあるだろうから、絶対に辿り着けない。


「あり得ないわよ!城に入るのも、例えば侵入したとしても、お姫様の部屋にまで辿り着けないわよ!おかしいしわよ!彼はそんな人じゃないわ!分かるの!」


「どうしたの?知り合いだった?私も剛士達から、宿舎のあいつの部屋に兵達が突入しての大捕物だったのを見たって聞いただけよ!」


「彼にお姫様の部屋にまで行き、強姦して部屋に戻るなんて不可能よ!それまでに捕まるわよ!うちの男子にしてもそんな事出来るようなのはいないわ!彼には特殊な力でも有るって言うの?」


「し、知らないわよ!何むきになってるの?それより、私王様に呼ばれちゃったの!王妃になったりして!今晩王様の寝所に行くのよ!」


 セリカは絶句した。おかしい。彼の事もそうだが目の前の由実も変だ。

 確か隣の地区の高校に彼氏がいて、のろけ話をしょっちゅう聞かされている。


「ゆ、由実?あなた彼氏が居るよね?どうしたの?」


「あんな奴知らないわ。玉の輿よ!玉の輿!私もお姫様に成るのかな!うん、今晩きっと口説かれるのよ。既に王妃様は亡くなられているんだって。私が王妃様になったりして!」


 セリカは他の生徒と話すも大体一緒で彼が放逐されて、既に城から連れ去られたと聞かされる。


 男子は男子で何故か王に忠誠を誓っていて、中には付き合っているカップルが居たが、彼女を王に抱いてもうと訳の分からぬ話をし出す者ばかりで、本来ある異世界に来た事の不安や怒りを訴える者がいない。セリカは


「お兄さんどうか生き延びて下さい。そして私を白い馬に乗っていなくても良いから助けに来てて!折角好きになった途端に死んじゃうなんて嫌だよう」


 と声に出せない心の叫びをあげ、震えていたのであった。


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