第46話
亮介
「これは…もう、悪魔の手先で間違いないんじゃないか?」
美麗
「そうね…」
美麗は亮介の問い掛けに答えながらユミカを見た… ユミカは、強い意志を感じさせる眼差しで美麗を見返す。
ユミカ
「悪魔の異次元に行く最初のチャンスね」
悪魔の異次元に行って神様に電話すれば全ては終ると…そう思っていた…
しかし、3人が集まってから神様に電話を掛けたが神様は出なかった…神様だけがたよりの3人は不安と神様への不信感がつのるはず…なのにユミカは悪魔の異次元に行くと言う。
美麗は、神様に電話すれば大丈夫と言う事が不確実になった今、ユミカを行かす訳にはいかないと思った。
美麗
「バカな事言わないで! 神様は電話に出なかったでしょ!そんな状態で悪魔の異次元に行くなんて自殺もんだわ!」
亮介
「僕は、神様を信じてるけど美麗に賛成だ。 何故、神様が電話に出ないのか理由を、ハッキリさせてからじゃないと異次元に行くのは危険過ぎる…」
ユミカ
「かもね、だけど… 2つの世界のバランスを崩されたら全ての人が死ぬ…私が失敗してもまだ、あなた達が居る」
美麗
「よく聞いて、この戦いは犠牲者なんか求めない! 皆で生きる為の戦いなの…」
美麗の〝皆で生きる為の戦い〟に眉を動かし少し険しい顔をするユミカ。
ユミカ
「よく言うわ…最初から犠牲者ありきの戦いじゃない! でも、それを認めたのよ…だから、私が犠牲を嫌がる何て出来ないわ!」
ユミカは、亮介が居なければ今の自分は存在しないと思っている…だから例え別世界の亮介でも、犠牲にすると決めた時から何かあれば自分も犠牲にならなければと考えていたのだ。
亮介
「なんだよ…その、犠牲者ありきって?」
美麗
「えっ、具体的な事じゃない…例えば2人の桜とか…そういう人達は犠牲者だと思うの…」
美麗が微妙に誤魔化した時、亮介のスマホがメールを着信した。
差出人を見ると、しゃべるなと書いてある…亮介は人差し指を口にあてジェスチャーで2人に話さないよう指示した。
メールを開くとやはり神様からだ。
〝桜が来るぞ、ワシとの関係を悟られるな〟
亮介は黙ってスマホを見せた。
ユミカ
「それでか…」
ユミカは神様が悪魔の気配を感じてここに現れなかったのだと悟った。
ユミカ
「私達どうする、居ない方が良いかな?」
美麗
「居るのはバレてそうだし…このまま雑談、かな…」
ユミカ
「ん~そうだ! 亮介の精神鑑定の話しようよ」
美麗
「そうね、あとブス専の謎の解明もね」
久々に爆笑する2人に亮介が安堵していると会議室にノックの音が響く。 3人が扉に目を向ける…桜だ、緊張する3人とは対照的にリラックスしてるのか無表情の桜。
桜
「どうしたの…驚いた…? あんなメールの後だからね、でも怒ってないから大丈夫よ」
亮介
「何しに来た、もう会わないって言ったろ」
桜
「そうね…でも、もう一度伝えたくて彼女達が居るのも好都合だわ」
ユミカ
「好都合?冗談じゃないわ、私は最悪に気分悪いけど、誰に呼ばれてここに居るの。 この2人が私が居る時に桜を呼ぶ筈無い、警備員のお世話になる前に帰れば」
敵対的な2人にまるで動じない桜の表情は入って来た時と変わらず無表情だ。
桜
「もう亮介から聞いたと思うけどこの世界は2つある…」
まさかの告白に動揺するユミカと美麗。
亮介はしてやられたと思った、この状況で2つの世界の話をしたら自分が黙ってる訳には行かなくなる…
それは神様の存在をユミカと美麗に話すと言うことでこの2人が神様と関わる事になり悪魔にユミカと美麗が警戒されると言う事だ、そうなると神様の作戦は使えない。
悪魔側の開き直った姿勢に腹を括った亮介が話し出す。
亮介
「だからどうした… そんな事、誰も信じないぞ!」
桜
「誰も…? あなたは信じるも何も知ってるでしょ」
亮介
「くっ…」
桜がユミカと美麗に問い掛ける。
桜
「あなた達は信じてないの?」
腹を括った亮介とは裏腹に美麗とユミカはしらを切る。
美麗
「なにそれ…これから亮介を精神科に連れて行こうと思ってたとこだけど、あんたも行く?」
ユミカ
「そうね、ここまで来ると流石に可哀想だから連れていってあげるわ」
ある程度神様との関わりを疑っていた桜は、精神異常者と決め付けるユミカと美麗の不自然な態度に2人が神様と接触してる事を確信した。
桜
「どうやら、全て知ってるようね…」
亮介
「もう、騙し合いは要らないな…」
桜
「私達の邪魔をするのね」
ユミカは、幸之助に電話を掛けるとスマホをテーブルに置いた今の状況を知らせるためだ。
ユミカからの着信に幸之助が出ると返事はなく電話からは言い争いが聞こえる…
状況を把握した幸之助は車でニジTVに向かう。すると、興信所からメールで探偵の金田が尾行してると連絡が来た。バックミラーでは確認出来ないが、もうそこはどうでも良いと思い車を走らせた。
助手席には、電話を繋いだままのスマホを置いて桜と亮介達の会話を聞いている。
桜が人間の無意味さを説いて、亮介達の神様こそが悪魔だと言うと、亮介達が命を奪う者こそが悪だと交わる事の無い言い争が続く…幸之助はそれを聞きながらニジTVを目指す。
17:13
幸之助がニジTVに着いた。足早にエレベーターに乗り込み会議室を目指す。
エレベーターの扉が開ききる前に飛び出し会議室の扉を開けた。
一瞬、全員の視線が幸之助に向かうが直ぐに言い争いは再開された。
桜
「お仲間が増えたわね」
幸之助
「神様の事はバレた見たいだな」
亮介
「いや、これで話やすくなった…むしろ好都合さ」
幸之助と亮介の挨拶が済むと、会議室の扉が開き2人の男が入って来た… 館石社長と探偵だ。
館石はユミカを見張ってニジTVに来ていたようだ。
ユミカ
「どうやら、お仲間が増えたのはお互い様ね」
桜
「正確には、しもべだけど」
ユミカ
「傲慢ね… 容赦する気が起きなくてたすかるわ」
亮介
「兎に角、お前達と話す事はない…何の為に呼んだのか分からない友達も連れて直ぐに帰れよ」
館石
「まぁ、そう言わずに…話を聞いて下さい」
探偵
「お前らにとって、為になる話だぞ」
桜
「そうよ、あいつの…あなた達の神様の本当の狙い」
亮介
「本当の… どう言う意味だ?」
探偵
「お前らは神に騙されてるって事だよ」
館石
「そうだ… 特に亮介君は神に感謝してる分、他の者より信じ切ってるんじゃないか」
亮介
「… 混乱させるのが目的か?正直、お前達の話なんて信じる信じないの問題を通り越してる…人類滅亡なんて馬鹿げてるんだよ」
桜
「私達は滅亡なんて望んでない、人間を淘汰するだけ…」
ユミカ
「あなた、神にでも成ったつもり?」
桜
「私は神の代弁者… 神のお告げを説くだけ」
幸之助
「悪魔教の教祖だな」
館石
「もう、この世界に亮介君が2人居るのは知ってるよね?」
幸之助
「怪我させて無いだろうな!」
館石
「さぁ…だが間違いなく生きてる」
幸之助
「ほぉ~、世界を滅ぼしたいなら殺せば早いはず…なんで生かしてるんだ?」
桜
「悪魔の…あなた達の神の反撃を危惧した私達の神様の采配よ」
館石
「そして、采配は正しかった。
お前らの神は別世界の亮介でバランスを保った…」
桜
「でも…亮介と亮介がこの世界で出会えばどうなると思う…」
亮介
「どうなると思うだと!お前まさか2人の自分が会えばどうなるか知っててもう1人の桜を呼んだのか」
桜
「…正直どうなるか分からなかったけど自分が正気でいられる自信はあった、だから呼んでもらったの」
亮介
「正気だと…? 僕から見ると完全に2人とも異常だ」
館石
「まぁ、それはどうでも良いじゃないですか…それより亮介君あなたは、元の世界に戻されますよ」
幸之助、ユミカ、美麗が固まった別世界の亮介が神様の手で元の世界に戻されると言う事を隠して接していただけに亮介の反応に恐怖した。
亮介
「かもな…でもそれも有だと思う」
桜
「あの世界は、こっちを知った貴方にとって地獄じゃない?」
亮介
「…正直怖いよ、迷いもある… でも、間違いなく大切なのは生きる事だと思ってるんだ」
桜
「へぇ~、やっぱり普通と違うのね…」
亮介
「そうかな?」
探偵
「嘘だ! こっちでたくさん甘い汁を吸ったお前が元の世界に戻されて平気な分けないだろ!」
スマホを見ていた桜が叫ぶ!
桜
「みんな聞いて! 神様が今、こっちの亮介を連れて来る見たい…」
探偵
「こりゃ~、見物だな」
館石
「そうだな、2人の亮介が正気でいられるか」
悪魔側が亮介に鉢合わせのプレッシャーを与えていると、突然会議室の扉が開いた!
〝 ガッン 〟
元の世界桜が入って来た、亮介達は勿論、悪魔側も驚いた顔をしている。
桜
「なっ何しに来たの…?」
問い掛ける桜に無言で近付くとバッグから包丁を出して桜目掛けて走り出した!
元の世界桜
「亮介は殺させない」
完全に虚を衝かれた桜は避けきれず、誰もが刺されると思った瞬間〝悪魔〟が現れ2人が倒れた…
頭から2本の角を生やした神様と同じ姿の悪魔。
しかし、会議室に居る誰もが現れたのが神か悪魔か分からずにいる、ユミカは考えるよりも体が動いてスマホから神様に電話した、すると途端に神様が現れて悪魔の腕を掴んだ。
状況について行けなかった亮介が2人の神様を見て落ち着きを取り戻していく。
神様は悪魔と対峙さえすれば事を納められると言っていたからだ、どっちがどっちだろうともう安心だ。すると手を捕まれた悪魔は蒸気のように煙になり消滅する…
そして、その蒸気の中から逆転世界の亮介が現れた。
ユミカ、美麗、幸之助が叫ぶ!
〝りょうすけぇ~~!!〟
逆転世界亮介
「ここは…僕は戻ってこれたのか…?」
ユミカ
「お帰り」
逆転世界の亮介にユミカが美麗が幸之助が駆け寄って無事を喜ぶ。
逆転世界亮介は異世界に拐われると直ぐに仮死状態にされていたようだ。
館石と探偵は神様にもう悪魔の拘束はない好きに生きろと言われ、逃げるよう帰って行った。
それらを眺めていた亮介は長い夢から覚めたような顔をして立ち尽くしている…
〝 みんな嬉しそうだ… そりゃそうだよな恩義のある本物の亮介が無事に帰って来たんだから… でも、これで僕はこの世界に用無しになったな… 〟
亮介の心を読んだ神様が話し掛ける。
神様
「済まんな、理解してくれてるようじゃな」
亮介
「短い間だけど…良い夢見れたよ」
亮介の目から涙が溢れ出す
「あれ、納得してる筈なのに涙が勝手に… ハハッ、でも気にしないで下さい。神様のお陰で一生分の良い思いしたし… 何より生きる事に自信が持てるようになったからね」
神様
「そのいきじゃ、しっかりと人生を全うするのじゃぞ」
亮介
「うん、ありがとう神様。 みんなに気付かれる前に元の世界に戻して」
亮介がそう言うと空間が裂け異次元の暗闇に落ちる2人。
亮介
「あっ…夢の始まりの場所だ…
そしてここが夢の終わりの場所になるのか…」
神様
「悲しい言葉じゃな」
亮介
「誤解しないで下さい。 逆転世界と言う夢が終わり、元の世界の現実が始まる、だけど今度の僕はその現実の世界で夢を見る事が出来る…すでに目標も有るしね」
神様
「そうか、強くなったようじゃな」
亮介
「どうかな、逆転世界のみんなに優しくされる事で優しさを知り、僕自身も優しくなったんだと思う」
神様
「そうか…」
亮介
「さぁ、僕を戻して」
神様が元の世界に亮介を戻そうとすると亮介が1つだけお願いがあると言い出した。それを快く受けると神様は亮介を元の世界へと送り出した。
逆転世界
ニジTV 第一会議室
神様と亮介が消えた事に気付いたユミカ達はそれぞれが罪悪感を抱き逆転世界の亮介との再開に水を差していた。
ユミカが、ふと神様に電話しようとスマホを開くと神様の登録が消えていた。
ユミカ
「神様の電話番号が消えてる…」
慌てて自分のスマホを確認するがやはりみんな消えていた。
ユミカ
「ひどい…お別れぐらいしたかった…」
〝 それは亮介も同じ気持ちじゃ が…だからこそ別れの挨拶を避けたのじゃ 〟
突然現れた神様に驚きながらも疑問を投げ掛ける幸之助。
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