第36話

しばらくすると、桜が亮介の待つリビングに入って来た。




「紹介するわ神様の角を…入って来て」



えっ、えぇ~~!!!!!


 えぇ~~~!???????



文字通り僕は驚愕した!何故か男だと思っていた神様の角は女性で、何より驚いたのは桜が2人になったからだ。




「驚いたでしょ! 彼女も桜よ、亮介と同じ世界の…」



亮介


「やっぱり…いたんだ…」



元の世界 桜


「はじめまして」



… 元の世界の人…やっと会えた…しかし、桜レベルが2人なんて世界のバランスは大丈夫なのかな?


まぁ、僕が考えても仕方ないか …



亮介


「君は、どうしてこっちに移されたの?」



話し掛けられた瞬間に元の世界桜のスイッチが入って、今後の展開に重要な意味があるはずの亮介の転送理由を直ぐにでも知りたいと亮介の質問に質問で返す。



元の世界 桜


「ごめんなさい、先に貴方はどうして移されたか知ってるなら教えて欲しいんだけど」



質問返しの桜に軽く苛立つが素直に答える亮介。



亮介


「えっ…まぁ、なんて言うか神様いわく2つの世界はバランスで保たれてると、こっちの亮介の影響力はその世界のバランスを崩すほど強力らしい…


 そんな亮介が消されたため世界のバランスが乱れ崩壊しそうになった…


 そこで神様はもう1つの世界…そこでは何の影響力も無い僕をこの世界に転移させ2つの世界のバランスを保つ、そう言ってた…」



話し終ると真っ直ぐ元の世界桜を見つめる亮介。


 次は君の番だと言わんばかりの視線を送る亮介を見て元の世界桜の代わりに逆転世界桜が答える。




「この子は、私が呼んだの…だから自分では転移の理由がイマイチ謎なの…」



亮介


「え~~~!!桜が!?」



盛大に驚く亮介に桜があわてて補足する。




「あっ、ごめんごめん! 私が神様に頼んで転移してもらったの」



亮介


「神様は僕しか転移してないって言ってたけど…」



亮介は神様以外で転移させる能力がある者… 


 神様が昔から戦ってると言ってた悪魔かも知れない存在を意識したが、それは逆に元の世界桜からすると逆転世界に呼んでくれた悪魔かも知れない存在が神様と言う事になる…



 お互いの神様は敵同士そう考えると2人の桜は亮介の敵になる…僕の知らない神様に転移して貰ったのかとは聞かずに、警戒しながら様子を伺う亮介。



すると桜と桜がアイコンタクトを取る。   


 


亮介の発言から、神様が2人居ることを彼は知らないのだと判断したは2人の桜は、亮介まだ何も知らない可能性が高いと思い、少し考慮するが意を決して逆転世界の桜が話しだす。




「それは… 亮介の神様と私の神様は別人なのよ…」



… やっぱり、僕の神様にとって悪魔かも知れない存在が桜達には神様 …



亮介


「桜の神様…」



少し緊張した感じの亮介を見て話題を反らす様に元の世界桜が話し出した。



元の世界 桜


「私はこの世界に呼ばれた事に感謝してます… 元の世界は私には生きづらかった」



亮介


「まったくだ! 僕も全くそのとうりだよ」




「転移された別世界の亮介に最初に気付いたのは彼女だよ」



亮介


「こっちに来てどれくらい?」



元の世界 桜


「三年ぐらいです」



亮介


「元の世界の人と話したくなるよね」



元の世界 桜


「……私には、真実を話せる桜が居たから…そんなに気にならなかったけど、亮介さんは誰も話せる人が居なかったんですよね」



亮介


「そうなんだ… でも結局、信用出来ると思った人に話しちゃったけど信じて貰えなくて…」



3人が少し沈黙すると、ウソぐらいの気まずい空気になり焦る亮介。



亮介


「えっ…なになに、でも大丈夫だから心配しないで」





「…私達、2人が会えば信じるんじゃない?」



桜の申し出に亮介は、もうすぐ神様に会うから大丈夫とは言えない…そう感覚的に思い、桜が何で2人で自分に会いに来たのかを確かめようとする。



亮介


「なるほど… でも…その為に来た訳じゃ無いよね…何か話があるんじゃない…」



桜の目に何か冷たい物が宿るのを感じた亮介が僅かに身構えて桜の言葉に集中する…




「あなたが、両方の世界を知る者として聞きたい事があるの…」



聞きたい事と言われ、小さくうなずく亮介…桜の隣で元の世界の桜も神妙な面持ちで亮介を直視している。


 



「人間に生きる価値があると思う…」



… えっ、なっ…なに??? なんだ…哲学? 




亮介が答える前に、更に話し出す桜。



「あなたは、分かってるはず!2つの世界を見て人間の価値観の曖昧さを… こっちでは美しくあっちでは醜い…


 そう…ブスだと蔑まされて来たもう1人の自分に会った時、顔を見た時… 悲しみで涙が止まらなくなった…」



元の世界桜


「私も、泣いた… でも私の涙は喜びだった。 もう1人の自分…何て言うか、この人は紛れもなく自分だと細胞レベルで感じたの。そしてもう1人の自分は悲しみや憎しみ何て感じないで生きている…私もそうやって生きて良いんだ!


 一瞬でそう思えて涙が止まらなくなった…」




「気が付いた時には、2人で抱き合って泣いてたの」





同じ自分で天国と地獄だが、その2人が抱き合っているその場は間違いなく2人だけの楽園だった。



元の世界桜の悲しみを感じて泣いた桜は、抱き合いそのぬくもりに元の世界桜から感じた悲しみが癒された。


 元の世界桜は、抱き合いそのぬくもりに生きていく希望を感じて喜びに泣いた。






「亮介も人間の曖昧さを感じるでしょ…人間はそんな曖昧な物の為に命まで奪う最悪な生き物…」





… まいった…正直、まだまだ有頂天で楽しんでるのに…こいつらぁ… どんだけネガティブなんだよぉ~~ …




亮介は桜達の感情に面食らって上手くリアクションを取れないでいたが、ある程度合わせるのが得策と考える。






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