第29話

ネットに投稿されたディンラバのオフィス内の動画に亮介と幸之助が凍り付く…


 匿名の投稿だが完全にこの中に居る奴だ。亮介がナナを悪く言う動画…カメラの角度からすると夏希と幸之助の秘書だが…


 みんな夏希だと思っている、幸之助のスタッフは匿名だろうと何だろうとすぐに特定されると分かっているから軽いイタズラでもそんな事はしない。




幸之助が亮介の好みに思いを巡らす。



… 夏希は、亮介がナナを嫌ってる動画を上げた…これは、ナナに亮介の彼女はお前じゃないって言ってるのか…? 自分が愛されてる自負があるのか…どうやら亮介は夏希を抱いてるな、タイプだってのは本当の事かも知れない …



亮介が愕然と夏希を見つめていた。


 夏希は視線を感じつつも目を合わせない。


 前置き無しに亮介が夏希を問い詰めた。



「何で、こんな動画あげたの…」



「えっ…何の事…」



夏希の顔の前にスマホを突き出して動画を見せる。



「これだよ」



少しとぼけたが、開き直って答える夏希。



「だって、私の事が好きだって言ったじゃない。それともやっぱり嘘だったの!」



幸之助のオフィスと言うこともあり構わずに口論を始める2人。



「答えになってない!僕の言ってる事は全部ほんとうだ!僕が聞いてるのは何でこんな動画を上げたかだ」



「じゃー何でナナちゃんは、あんなに堂々と好きだって言うの!」



感情的な夏希は亮介との会話が成立しない…動画をなぜ上げたと問う亮介に“何でナナちゃんは、あんなに堂々と好きだって言うの”と問い返す。


 亮介の“僕の言ってる事は全部ほんとうだ”に対しての返しで亮介の最初の質問は完全にスルーして自分の話だけを進めようとする。



あきれた亮介は、少し冷静になり先ずは夏希の質問を片付ける事にした。




「いいだろう…先に夏希の質問に答えてやるよ。ナナが堂々と好きだって言うのは何なのか? こっちが聞きたいくらいだ! ただ、根本的な所は有名になりたいからだと思ってる…目立ちたいんじゃないか」



「ナナちゃんは、もう有名になってる…むしろスキャンダルは避けたいはず、なのに告白なんて…亮介を本当に好きだからよ!」



「ばかなっ、でも僕にはその気がない」



「だから私が分からせてやろうと思った!それだけよ!」



なんと、結果的に亮介の質問の答えが出た!



夏希が最初に答えなかったのは答えまでのプロセスが大事だと考えての事だった。


 


考え込む亮介…



幸之助


「なるほど、女の考察か… 後先考えずに伝えたい女心…夏希ちゃんの言う通りかもよ」



亮介


「だとしたら、逆効果もいいとこだ!」



夏希


「あの子は亮介に愛される自信があるのよ…私は自信なんか持てない…」



夏希の様子に神妙な顔をする亮介。



亮介


「幸之助、3人だけで話せないかな」



亮介の表情にただならぬ物を感じた幸之助は社長室に案内した。




幸之助


「ここなら誰にも聞かれないぞ」



亮介のカミングアウトが始まる!



… 黙ってるのも、もう限界だ…ちょうど良い機会かも知れないな …



亮介


「たぶん信じられないと思うから、信じてくれとは言わない…だけど最後まで聞いて欲しい…」



何の事か分からない幸之助だが、真剣な眼差しで亮介の話を聞く。



「僕は間違いなく山上亮介だ…だけど君達が知ってる山上亮介とは別人なんだ」





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る