第5話 魔王の真実。
1、
ダンジョンでの戦いは基本的にマッスルが前に出る戦術をとることになった。
これはマッスルの防御力が高いのと、マッスルのスキルを使った時のスタミナの消費量によるものだ。
簡単に言うとマッスルは疲れずらい。
これにより前衛としての立ち位置を常にキープできるのだ。
つまりタンクタイプと呼べるものだ。
今日の戦いでマッスルは挑発スキルで敵を引き付けられるようになった。
「鬼さんこちら~、屁の鳴るほうへ~。」
全裸の漢がケツを向けてお尻ぺんぺんしながら屁をかまして挑発してくれば、知能の低い魔物でも頭にきて殴り掛かるだろう。
後ろで見ているリズたちですらちょっとイラッとしたほどだ。
まぁ、そんな感じで敵を引き付けるマッスルだが、全裸なのに硬い。スケルトンの持つ剣やゾンビの爪なんかでは傷一つ付けることができないのだ。
これに加えてマッスルはアビリティーの攻めの素質で、攻撃力も高めなので寄ってくる奴を次々倒す。
使ってみてわかったことだが、どうやらマッスルのアビリティーにはカードに記載されない隠し要素があるようだ。
で、
マッスルが前衛を張るので、リズとミャンマーはその後ろから魔物を攻撃する。
ミャンマーは弓矢での攻撃、それと時々マッスルをすり抜ける魔物に突撃して近接攻撃。
ミャンマーには矢を回収するスキルがあるらしく、一定の距離なら使った矢を手元に戻して再度攻撃できるのだ。
とはいっても、矢が壊れては使えないので壊れないように魔物を射抜くミャンマーの技量あってこそのスキルである。
そしてリズだが、
「ファイアーボール、ウインドカッター。」
魔法剣士のクラスで得ていた初級魔法で使えるスキルの魔法で攻撃する。
「バニッシュメント。」
それに加えて、神聖魔法も使えるためにスケルトンやゾンビなどのアンデットに効果的にダメージを与えていく。
結果、この日のクエストでは3人とも無傷で済み、多くの魔石とそこそこドロップアイテムを手に入れたのだった。
「いにゃ~、今日はそこそこの稼ぎになったにゃ~。」
「魔石の買い取り額もなかなかでしたし、ドロップ品の剣とかも売れましたね。」
「剣としてはクズでも素材にはニャルからにゃ。」
冒険者ギルドに報告して、ドロップアイテムを道具屋に売りに行った後、宿屋にすぐに向かわず3人は街をぶらぶらしていた。
「ところでレベルアップポーションってどれくらいになるんだ。」
「マッスルさん、それこだわりますね。」
「レベルアップは大事だろ。それこそ冒険者の義務じゃないのか。」
「にゃははは~、確かに大事だがにゃ、レベルにこだわりすぎると伸び悩むですにゃよ。」
「そうなんですか。」
「そうにゃ。レベルは上がれば上がるほど上がりずらくにゃるからにゃ。」
「えぇ~。レベルってポーション飲めば上がるものじゃないんですか。」
「お前、これは常識だぞ。」
「マッスルさんに常識は語られたくない。」
「いいかにゃ、レベルアップポーションは、……長いからLUPでいいかにゃ。」
「異議な~し。」
「ははは……ワタシもいいです。」
「それでLUPは1つ飲めば1つレベルが上がるものじゃないにゃ。LUPそのものにも質の差があるがにゃ、アレはEXPというものを取り込むためのモノにゃ。」
やっぱ経験値じゃんか、と思うマッスルだったが黙ってミャンマーの話を聞くことにした。
「EXPは個人差があるにゃが一定値溜まればレベルが1つ上がるにゃよ。」
「じゃぁ、いっぱい飲んでレベル上げしましょう。」
「……無理にゃ。」
「へ?」
「LUPにはひどい欠点があるにゃ。」
「……それってどんなのだ。」
「不味いにゃ。――――ひどく不味くてイッキに飲めたモノじゃないにゃ。」
ガクッ。
どんな副作用があるのかと心配したマッスルがズッコケかけた。
「あちゃぁ~、それはきついですね~。」
いや、それくらい我慢しろよ。と思うマッスルだったが女性2人の「不味いの無理、」談義には元陰キャでは入りにくかった。
「え~、マッスルさん酷~い。」
「これにゃから男子は~。」
「サイテーです。」
「デリカシーがにゃいにゃ。」
なんて言われそうでしり込みしてしまった。
「……それな。」
これがマッスルのはさめた一言だった。
3人が街をぶらついていると、街の真ん中を流れる川にかかった橋にやって来た。
「おい、衛士を呼べ。」
そこで若干あわただしい男の叫びが聞こえて来た。
内容も不穏なものを匂わせるもので、何かの事件かと3人は足を止めた。
人は橋の下を覗き込むように集まっていた。
3人は1度橋を渡りいきり、対岸からその様子を眺めた。
すると、橋の下に身なりのいい人物たちが数人やって来た。
「おい、ありゃぁ
「銀翼の剣?」
「マッスルさん、銀翼の剣はこのパステル王国で5本の指に入るギルドですにゃ。」
疑問を口にするマッスルにミャンマーが説明してくれた。が、そもそもここがパステル王国だと知らなかったマッスルだった。
「へぇ~~~~~。」
結果、この返答である。
「それより何があったんでしょうね。」
3人が野次馬をしていると、
「くそう!まただ。」
「今月に入って5人目だぞ。」
「やはり魔王の―――
「だまれ!そんなはずはない。」
といった会話が聞こえて来た。
「どうやら冒険者が何者かにやられたようですにゃ。」
猫耳を生やしているだけあってミャンマーの聴覚は優れているようだ。
「冒険者がやられったって、ここ町中ですよ。」
「通り魔って話じゃないのか。」
心配するリズに、マッスルが可能性を聞いてみた。
「残念ながら人の仕業ではないみたいですにゃ。今の人は全身の血が抜かれていたみたいにゃ。」
「ヒッ。」
「それは吸血鬼にやられたってことか。」
「分からないにゃ。でも今回も含めて5人とも同じ死因らしいにゃ。」
「何か魔物が街に入っているんじゃないのか。」
「ギルドの上の方は否定してるけどにゃ。でも町の人は不安になって来てるにゃ。」
「明日は我が身、かもと思うと嫌ですよね。」
「今のところ被害者は冒険者だけだそうにゃ。」
「そうですか。ホッ。」
「いや安心すんなよ。お前も冒険者なんだから。」
「はっ、そうでした。」
「大丈夫かコイツ。」と、リズ以外の2人は思いながら、今日は宿屋に帰って美味しいものを食べることにした。
2、
うらぶれた路地にソイツはいた。
その姿は闇夜の中に隠れてしまっているがゴソゴソと聞こえてくる何かを引きずる様な、または何かをまさぐるような音がその体の大きさを感じさせる。
「じゅる、じゅじゅじゅ~~~~~~~るるるるるる。」
そして粘っこい液体が泡立つような湿った音が響いていた。
ゴソゴソ、じゅるるる、びくんびくん。
カリカリと何かをひっかく音が聞こえる。
しかし、それは誰かに聞かれることはない。
――――はずだった。
「そこで何をやっている。」
エリックはとっさのことに声が出てしまった。
「ぐぎゅらRRRRRAAAAAA。」
「ひ、あ……あ、ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ。」
路地の壁に大きく影が映し出される。
一人の怯えた男と、それに襲い掛かる人ではないさらに大きな異形の影が…………
3、
今日の朝食は昨日の喫茶店とは違う店だった。
どうやらミャンマーは毎日同じ場所で同じメニューというこだわり派ではないようだった。
しかし、――――――――朝からカレーみたいな食べ物は少し重い。
サプサという料理で、羊肉と多数の野菜を羊のミルクで煮詰めて、最後に多数の香辛料を混ぜ込むこの辺りの郷土料理らしい。「ウマウマ。」
それをミャンマーはパクパクと食べる。
スープよりもインドカレーに近いそれを固めのパンを浸して食べていた。
リズもミャンマーほどではないが普通に食べていた。
マッスルはそれを見て残すのも悪いと口にした。
草原が見えた。
あざやな若草が風にたなびく牧場に全裸で立っている自分の姿をマッスルは幻視したのだ。
ハーブのさわやかな香りが鼻を抜ける。
そして濃厚なミルクの旨味が堅いパンを解きほぐして麦の旨味を呼び起こす。
その後にはパンに使われたバターの甘みが口に広がる。
美味い。
一口食べたマッスルの感想はその一言だった。
見た目はマトンカレーに見えたのだがそうではなかった。使われているスパイスが別ベクトルなのだ。
ハーブ、ミントのような爽やかで爽快感のあるモノが多数使われているようだ。
見た目がカレー色なのはそのスパイスを一度乾燥させてから使っているからだろう。
紅茶と同じである。
乾燥させて発酵させたことで生にはない滑らかさが生まれて、ブレンドで互いを引き立て合っているのだろう。
そして玉ねぎを中心にした野菜たちが生み出す旨味によって味に奥深さが生まれているのだ。
例えるならば、スパイスたちが風にたなびく若草なら、野菜は若草が根を張る大地のようだ。
そして羊肉。
ルゥ?ルゥと言っていいのか分からないがカレーで言うルゥに当たるものとは別に仕込まれたであろう羊肉。
こちらには地球のカレーと同じようなピリッリッと辛味のある刺激的なスパイスが使われている。
この刺激が全体のアクセントになっていて、朝ごはんだというのについつい手が進む原因になっている。
気が付けばマッスルはお代わりをして、それも平らげていた。
「ご馳走さまでした。―――ふ~。朝から食べちまったぜ。」
「そういえば、マッスルさんってご飯を食べた後にそうやって手を合わせてますね。」
「これか。これは俺の故郷の風習で、食材や料理を作ってくれたモノたちに感謝をするものだよ。」
「へぇ~、てっきりマッスルさんの故郷は野蛮だと思ってましたが、結構文化的なんですね。」
「おい。なんで俺の故郷が野蛮だと思った。」
「いや、だって全裸ですし。」
「オレの故郷は誰もが全裸じゃない。それだったら勇者は俺だけじゃないだろう。」
「そういうもんですか。」
「そうなんだよ。」
「お2人共、今日はエルザちゃんに会いに行くと言っていましたが、いつ頃いかれるのですか。」
「そう言えば時間を決めてませんでしたね。」
「早くてもいいだろう。こっちはいきなり連れていかれたんだからさ。」
「それなら早速行くにゃ?」
「おう行こう。」
「たのもー。」
相変わらずみすぼらしいフルモンティー教会の扉を開けてマッスルが中に入ると。
「きゃ。」
教会の信者らしき女の人が服を脱いでた。
「ちょっとマッスルさんいきなり開けちゃダメでしょう。」
「そうにゃ、それと見てはいけないにゃ。」
そう左右から女性たちに叱られた。
だから出直そうかとすると、
「お、お待ちくださいませ。」
と、信者の人に呼び止められた。
「今すぐ司祭様をお呼びいたしますのでおかけになってお待ちください。」
「え、でもあなた着替え中。」
「わたくしが未熟なばかりに驚いて恥ずかしがってしまいましたことお詫びいたします。」
「何にゃそれ。」
「当教会では露出を多くすることが修行です。どうかお気になさらずに。」
「いや気になりますよ。」
しかし、リズのつぶやきはスルーされて女性は奥へと行ってしまった。
「にゃぁー、ホントに全裸を信仰してるんだにゃ~。」
「なんだ、ミャンマーは知らなかったのか。」
「街にゃかでは見かけにゃいからにゃ。」
「そうですね。街中で全裸とか普通はいませんからね。」
「ワタシたちは見にゃれ始めてるけどにゃぁあ。」
そうこう言っているうちにエルザを連れたスッタがやって来た。
「お待たせしました。勇者様。おや、そちらの方は一昨日はいらしゃらなかったですよね。」
「初めましてだにゃ。ワタシはマッスルさんたちとパーティーを組んでいるミャンマー・リーゼルといいますにゃ。」
「これはご丁寧に、ワタクシはフルモンティー教会のグリーンの街の管区長をしています、司祭のスッタ・モンダといいます。そしてこちらが娘の、」
「エルザ・モンダ……です。よろしく。」
とミャンマーが挨拶をしていると、マッスルがエルザをじっと見ている。
「あ……あの、ボクの顏に何かついてますか。」
「いやな、少し顔色が悪い様だが。」
「そ……それは、その……寝不足で。」
「寝不足?どうした、ちゃんと寝ないとダメだぞ。」
「それはあなたが―――――い、いや……何でもない。」
「もしかして俺の質問がエルザを悩ませてしまったのか。それなら――――」
「ち、ちがう。ちがうんだ、そうじゃないんだ。」
エルザはうつむき自分の体を抱きしめながら絞り出すように答えを言う。
「その――――――が見えて。」
「え?何が見えるって。」
「だから、――――その、」
エルザは顔を真っ赤にして前髪で目をさらに隠して呟いた。
「だから、寝ようと目をつぶると……あなたの裸が目の前に見えて。」
(あ、これはダメだにゃ。)
(仲間になってもらうのは無理っぽいですね。)
エルザの答えにリズとミャンマーが心の中であきらめていた。
しかし、
「そうか、それだけ俺のことを考えてくれていたんだな。」
と、マッスルはポジティブシンキング。
「ち、ちが……」
「それじゃあ、さっそく俺の聞いたことを教えてくれ。」
そういっていたいけな少女に迫る全裸。
さすがにこれはアウトだろうとマッスルを止めようとした2人に、振り返ったマッスルがウィンクをした。
それを見た2人は、
(うっわー、超絶に合わない。)
(絶望的にゃ似合わなさにゃ。)
そう思いながらもマッスルの伝えたいことが分かった2人は、成り行きを見守ることにした。
「さぁ。」
マッスルが筋肉を強調する。
「さぁ。」
ポージングを決める。
「さぁ。」
1歩ずつ迫って来る。
それに怯えるだけの少女。
「エルザの考えていることが聞きたーい。」
「ボ……、い――――――ぁ。」
「聞こえなぁぁぁぁぁぁぁい、はい、もう一回。」
エルザの目の前で腰をフリフリするマッスル。
そこに響くブチッという何かが切れる音。
「まずはその目障りなものを仕舞ええええええええええええ。」
「プゲラ。」
ズドンッと、重い一撃が大きな声と共にエルザから放たれた。
そして崩れ折れる全裸。
「お……俺のタマタマがキンコンカンコンと終業の合図を鳴らしているぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ。」
ここに悪しき全裸は倒れた。
そこには1人の少女の悲痛な思いがあったことを知る者は少ない。
完。
「全裸は滅びんよ。何度だってよみがえる。――ガクッ。」
4、
「いい声出せるじゃないか。」
「え?」
エルザがその声に顔を上げると、
「そうやって自分の言いたいことを言やぁいい。おふくろさん相手だって遠慮するな。自分の生き方は自分で決めるべきもんだろ。」
親指を立ててエルザに笑いかけるマッスルの顏があった。
その顔は脂汗でびっしょりだった。
「……マッスルも痛いなら痛いって言った方がいいよ。」
「痛くなんかないやい。ただ、遠くで鐘の鳴る音が聞こえるだけだよ。」
そう強がるマッスルを見下ろしながらエルザは息を吸って吐く。
「す~~~~~~~~、は~~~~~~~~~。よし。」
そしてエルザは母親に向かい自分の思いを告げた。
「はぁ~~~、しかし残念だったねぇ~。」
「そうだにゃ~。ホッントに残念にゃ。」
フルモンティー教会からお暇したあと、ギルド協会に向かう道すがらにリズとミャンマーが口をそろえて言い募る。
「……………………。」
「ホントにもったいないったりゃ、ありゃしないわ。」
「せっかくのチャンスだったのににゃ~。こんな機会そうそうなかっただろうにゃぁ~。」
「……2人はマッスルのことが嫌い?」
と、リズとミャンマーの後ろを歩いていたエルザが聞いた。
「嫌い……て訳じゃないんだけどね。」
「そうだにゃ~。」
「全裸でさえなかったらねぇ。」
「全裸が問題だにゃ~。」
「そうだね、……全裸でなかったらボクもこんなに悩まなかった。」
3人は前を行くマッスルの全裸の背中を見る。
それは即ちマッスルのケツを見るということなのだ。
「ホントーに全裸じゃなかったらカッコいいのに。」
そう嘆息するリズだがエルザは、
「……でも僕が初めて自分で選んだ道なんだ。」
そして4人は冒険者ギルドにやって来た。
目的は新しく仲間になったエルザの冒険者登録だ。
筆記試験も実技試験もそつなくこなしたエルザ。
流石にフルモンティー教会の秘蔵っ子なだけはあった。
試験を終えて冒険者カードを手に入れたエルザを連れて宿屋にやって来て、部屋の手配をした後一階の酒場で食事となった。
「それでは改めて、エルザの加入を歓迎して、カンパーイ。」
「カンパーイ。」
「カンパーイにゃ。」
「か、かんぱーい。」
エリザ以外の3人はお酒の入ったジョッキを、エリザはお酒の代わりにジュースの入ったジョッキを両手でもって、高々と打ち合わせた。
木で出来たジョッキはガラスの様な高い音は起てなかったが、4人のテンションは若干高くなった。
「さてさて、それでは早速ですがエルザちゃんの冒険者カードを見いせてもらいましょうか。」
「は、恥ずかしいです。」
「良いでは無いか良いでは無いか。」
若干オヤジ化しているリズによって促されて、エルザは冒険者カードの内容を表示した。
――――――
名前:エルザ・モンダ
種族:人間種
性別:♀
年齢:13歳
職業:僧侶
クラス:ハイ・クラッシャー
ランク:G
Lv:1
――――――
「ハイ・クラッシャーって、また僧侶ぽくないのが来ましたね。」
「そんにゃことにゃいにゃ。ハイ・クラッシャーはクラッシャーの上位クラスで、敵にかかっている
「そもそもクラスってなんだ?」
マッスルの疑問にお酒の進んだミャンマーが自慢げに答える。
「クラスってのは職業の派生にゃ、おにゃじ戦士職でも
「で、このクラスはどう決まるんだ。」
「最初の1つは職業選択時に最も適性があるものが付くにゃ。」
「で、新しいクラスを習得するには。」
「他の職業のクラスを使ってみたり、ボーナスを捨てて他の武器を使うとか。いろいろあるにゃ。」
「ふーん。なるほど。レベルだけじゃなくてそっちも鍛えないといけないな。」
「マッスルさんの場合それ以前の問題な気がしますが。」
「なんだと~。」
と、そこでこれまで黙て3人の会話を聞きいながらジュースをちびちびやっていたエルザが口を開く。
「それでこれからの方針は?」
「一応はクエストをこなしながらお金を稼いでレベルを上げるつもりだぞ。」
「それで最初はどの魔王を狙うの。」
「……ん?その言い方だと魔王が複数いるみたいだけど。」
「みたいじゃないよ、いるんだよ。」
「……マジ。」
マッスルがどういうことかリズとミャンマーを見ると。
フルフル。
と首を横に振っている。
どうやら2人も知らないようだ。
「え?みんな知らないの。」
「俺はこの世界の生まれじゃないし。」
「ワタシは田舎生まれだから。」
「ワタシは獣人族にゃから。」
「しかたありませんね、せっかくだし神様についてから話しましょう。」
「神様ってマッスルをこの世界に遣わした。」
「その神も含めてこの世界を作りたもうた5柱の神様について話をしなくちゃ、魔王については語れない。」
さすがは僧侶という神官見習であるが、その才能を認められたエリザだ。神様のことになると結構冗舌になる。
「まずは人と光を生み出したる光の神、その名を「ヤァハァ・ウェーイ」という。」
「さすが光の神、パリピで陽キャ感が半端ない。」
「パリピ?ヨウキャ?よく分からないけど話の腰を折らないでよマッスル。」
首を傾げるエルザにマッスルが「はい。」と答えると、エルザは続きを話し始めた。
「この光の神が人を全裸で生み出して、全裸を恥じた人間に罰を与えた神様だ。そしてマッスルを勇者として異世界から遣わした神でもある。」
「全裸の神様だな。」
光属性で創造神でパリピで全裸系、パナイな神。
「そして獣や妖精、そして大地を生み出した神様が「ガイア」という。」
「あれ、それだと獣人族はどうなるんだ。」
「ガイアとヤァハァ・ウェーイが共同で創ったといわれている。」
「そうだにゃ、ワタシの故郷でも光の神と大地の神を創造神としてたにゃ。」
「そして海と海に生きるモノを生み出した「ネプテューヌ」。」
「―――――――ん?ネプチューンじゃなくて?」
「ネプテューヌ。」
「そうか。」
多分異世界で解釈とか発音とかでそう聞こえるだけでネプチューンのことだろう。でないと架空のゲーム機ハードの女神さまになっちゃうしな。と一人で納得しておくマッスル。
「それから植物や精霊と空を生み出した「スカイ」。」
「精霊ってのは。」
「火、水、風などの自然現象を起こす意志ある力ってやつだよ。」
おおよそ予想どうりの答えが返って来た。たぶん日本の科学的考え方とは違うのだろう。大体世界観は中世のそれである。
「なぁ、世界の形って知ってるか。」
「球体だよ。まさか平らだと思った。」
「え!世界って丸いの。」
「そうだよ。それを教えてくれるのが最後の神、観測と情報をつかさどり世界を成長させるギルドの神様「ナコト」だ。」
「アタシもギルドに勤めてるときに教わって驚いたにゃー。」
「マッスルは知ってた?」
「あぁ、俺の世界ではそれが常識だったからな。」
「ふーん。マッスルの居た世界ってこの世界よりずいぶん進んでるんじゃないのかい。」
というエルザにホントにコイツは優秀なんだと改めて実感したマッスルだった。
「でもでも、それじゃ端っこの人はどうなるの、どっかに落っこちちゃうの。」
「それは大丈夫だよ。ボクたちが下に落ちるのは世界の中心から引っ張る力があるからで、端っこの人も地面が下になるんだ。」
「え?ん~よくわかんない。でも端っこに行っても大丈夫なんだよね。」
「そうゆう事。」
よく理解していないリズの方が多分この世界の標準なのだろう。その中で重力を理解しているエルザ。この子はたぶん偉人になれる人物であろう。
マッスルはエルザを仲間に出来たのが嬉しいし、エルザを埋もれさせなかったことに誇りに思う。
「ボクは、ボクの意志で世界に出ていきたい。教わるのでなくて自分で学びたい。だからボクは勇者様――――いや、マッスルについていきたい。」
そう母親に啖呵を切ったエルザ。
彼女は初めて母親に抗い自立しようとしているのだ。
5、
「それにしても、ギルドの神様とか冒険者ギルドで聞いたけど本当に居るんだ。」
しかも創造神の1柱だとは、とマッスルがつぶやくのにエルザが追加で教えてくれた。
「ナコトは創造された世界が成長するように観測をしている神様で、そのお力がギルドの真髄、あまねく情報を管理しているそうです。」
「そうにゃ。ギルドカードでどこの街でも情報を参照できたり、他所の街で預けたお金をまた別の街で返してもらうこともできるにゃ。」
「他にもレベルアップやスキル、魔法などを生み出した神様でもあるのです。」
「なるほど、この世界の人達はこの5柱の神様を信仰しているんだな。」
「そうです。たまに変わった信仰を行う宗教もありますけど。」
「フルモンティー教会みたいに?」
「もう、確かにうちは寂れてますけど教義としてはとても古いんですよ。」
「じゃぁエルザも全裸で――――」
「無理ですね。」
笑顔で即答するエルザだった。
「で、かんじんの魔王だが。」
「はい、それにはもう1柱の神が関わってきます。」
「まだいるのか。」
「その神の名は「カオス」。世界創造の時に――――他の神様たちに仲間外れにされた神です。」
「あ”。」
エルザの説明を聞いてこれだけで何となく事情を察してしまったマッスル。
「他の神様たちから仲間外れにされたカオスは他の神たちを怨みました。」
マッスルは顔を覆ってエルザの話を聞くしかなかった。
「そしてカオスは他の神が生み出したものを壊すために5体の魔王と闇、そして魔物を生み出しました。」
(ちっちぇー、想像以上に魔王の真実が小っちゃい。)
マッスルはプルプル震えながら笑いをこらえていた。
「分かったかいマッスル、僕たちが挑むのは神の生み出した世界に匹敵する者なんだよ。」
「そんな、そんなものにワタシ達で勝てるの。」
「あ……くくっ、安心しろリズ。ぷっ――――お、俺に任せておけ。俺だって世界を創造した神様に選ばれた、くくっ、選ばれし勇者なんだから。」
「マッスル。」
リズをはじめ女性3人はマッスルを頼もし気に見つめる。
そこで限界が来た。
「はぁ~ははははははははははははははははははははははははははははははははははははっははっはは、ごほっごほっ。」
実際はただツボに入っただけだが、その笑いは見るものが見れば魔王など楽勝だと言っているように見えた。
そして、それが面白くないものもいるのだった。
そしてエルザの歓迎会、兼、エルザの講義は続いたが、夜も更けて来たのでお開きとなりそれぞれ部屋に戻った。
そしてマッスルが寝ていると。
かちゃ、ぎ~、ばたん。
と、マッスルの部屋の扉が開いて何者かが部屋に入って来た。
(何者だ?)
すぐに警戒態勢になるマッスル。
部屋には粗末とは言え鍵がかかっていたはずだからである。
何者かの襲撃かと警戒する。
その侵入者はペタリペタリとマッスルの寝るベットに近づいてくる。
そして侵入者はベットの傍に立つ。
そこでマッスルは先手必勝と布団をまくって侵入者に挑んだ。
「――――――――――――――エルザ?」
「ボォ―――――――――――――――――――――。」
どうやら寝ぼけているエルザが部屋を間違えたらしい。
「鍵はどうした。」とツッコミたいが、どう見ても寝ぼけているエルザには無意味であろう。
それよりも、
それよりもツッコミたいことがあった。
「お前ズボンはどうした。」
エルザは相当寝相が悪いのか寝間着が着崩れてるを通り越して、ズボンをはいていなかった。
加えて前開きのシャツも着崩れてボタンもいくつか外れている。
そしてシャツの裾は太ももの付け根ギリギリで今にも下着が見えてしまいそうだ。
「お、おいエルザ。」
「あ~~~~~~~~~~~、裸だ。」
目が座っているエルザがマッスルを認識するとおもむろにシャツを脱ぎだした。
「なっ!」
シャツを脱いだエルザは全裸だった。
ズボンどころかパンツすら脱いでいたらしい。
大した寝相だ。
マッスルの目の前には月明かりに照らされた一糸まとわぬエルザの幼い姿があった。
まだ幼く薄い胸、なだらかなお腹のラインは余分な段差などないまま足の付け根に流れている。そして、女性らしさを感じさせる脇からのくびれはしっかりと入っていて、お尻の肉付きが強調されている。
それに目を奪われどう反応したらいいのか分からないマッスルが固まっていると。
「とぉ―――――――――――う。」
棒読みのような声を出しながらエルザがマッスルの上にダイブしてきた。
「うわっ。」
いきなりのことなのでびっくりしたがマッスルにとってエルザはとても軽く何の苦痛にもならなかった。
否、
細いエルザの体、温かい体温とライムのような香りに、反応しないようにするのはなかなかの苦痛だった。
「う~~~~ん、裸だぁ~。男の人の裸だぁ~。夢に見たのと同じ勇者様の裸だぁ~。」
「おい、エル――――ムグッ。」
「ふん、はむ、ちゅぱ。」
エルザを止めようと口を開いたマッスルだったがエルザの口によってふさがれてしまった。
「フ――――チュル、はぁむ、レロレロォ。ちゅるるううう。」
マッスルの口の中にエルザが入ってきて勝手に動き回る。
「チュル、エロアロチュルチュルジュルルルルルルルル。」
(てかこいつ、酒臭い?間違って酒を飲んで酔っ払ったのか。)
「ハァハァハァ―――――――――。」
「ばっ!お前そこは。」
エルザの手がマッスルの胸から下の方へ進んでいく。
「おい、流石にヤバいから。いい加減目を覚ませ。」
マッスルがエルザを本気で起こそうとしたが、寝ボケているエルザは、
「うにゃぁ~~~~、うるさいです~~~~。スリープ。」
「あっ。―――――――――ぐぅ~~~。」
「むにゃむにゃ、お休みなさ~い。」
朝日が昇って結構たつのにマッスルが起きてこない。
いつもなら早起きしてストレッチとかしているハズなのにである。
だからリズはマッスルを起こすために部屋に入った。そこにあった光景は全裸のマッスルと全裸のエルザが同じベットで寝ている姿だった。
ちゅん、ちゅちゅん。
鳥の鳴き声が聞こえる。
「なあリズ、これは夢だよな。朝起きたように見えてまだ夢を見てるんだろ。お願いだ……夢だと言ってくれ。」
マッスルから何かつぶやきが聞こえるがリズの頭には入ってこなかった。
ただただ、目の前の2人の絡まったら体が頭の中でぐるぐると想像を巡らせていた。
「なあリズ――――」
「ふっ―――――――――不潔でえええええええええす!」
響いた声に鳥が驚いて逃げていく。
そして、安らかに眠っていた全裸の少女が目を覚ました。
「ふわああああぁぁぁぁぁぁ。ん~~~~~~、おはようございます。」
「エ、エ、エルザ。貴方なんて格好を。」
「恰好?あれ、またボク寝てるうちに脱いじゃったの。……てか、ここは。」
寝ぼけ眼から少しずつ目が覚めて来たエルザは自分が全裸である事を認識して、そして周囲を見渡した。
「あれ?なんでマッスルが僕の下にいるの……」
次第に頭が回り始めて。
「ま、ま、ま、まさかボクマッスルに―――――」
「違うからな、俺は何もしてないぞ。」
「あ、あ、あ、ああ、あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ。」
その後、叫びを聞いたミャンマーもやって来てマッスルの尋問が行われたが、エルザが夜に寝ぼけてマッスルのベットにやって来たところを起こそうとしたけど、魔法で眠らされたので途中から何も覚えてない。という証言をされ、エルザも何も覚えていないというのでこのことは事故として扱われ、なにもなかったことにされることになった。
ただ、マッスルのエルザが酒臭かったと言っていたことでエルザには酒を飲ませないようにすることが決まった。
と同時に、なんで酒臭いと感じたのかなぁ~、という詮索もされたのだった。
6、
結局、朝の騒動で出かけるのが遅れたが、4人は冒険者ギルドで手ごろなクエストを見繕って狩りに出ることにした。
行先は近くの森だ。
魔物化したケモノが多数目撃されているらしい。
その調査と討伐がクエストの内容で、退治した魔物の魔石を割り増し価格で引き取ってくれるという美味しいクエストである。
「こういうクエストって他所で狩った奴や買ってきた魔石でごまかしたりするやつはいないのか。」
「それは無理なのにゃ。ギルドは情報の神様の力があるにゃ。ギルドカードなどで何処でドロップしたか分かっちゃうにゃ。」
「なるほどな、ズルはできないか。で、ここの魔物たちを倒したとして数が減ってるとか分かるのか。」
「分かるにゃよ。数が多いところの魔石は質が高くニャルから質が下がれば数が減ってる証拠にゃ。」
「逆に質が高い場所は魔物の数も多くて危ないってことか。」
「そうなるにゃ。今多くの冒険者が出払ているのはかなり質の高い場所があるからなのにゃ。」
「魔物の数が増えるのはどんなわけがあるんだ。」
「いろいろあるにゃ。瘴気が溜まったりボスが現れたり。」
「ボスってゴブリンの群れの中に居たホブ・ゴブリンみたいなのか?」
「それは違うにゃ。そういう強い個体じゃにゃくてボスにはコアがあるにゃ。」
「コア?」
「コアとは闇の神の眷属たる魔王が生み出すとされる超高純度の魔石。」
森に入る前に装備の準備をしながらミャンマーにクエストのことで説明を受けていたら、エルザが会話に入って来た。
神に関わる話は自分の領分だと、そんな感じで会話に混ざってきたのだろう。
しかし、マッスルの顔を見たとたんエルザは顔を真っ赤にして目をそらす。
どうやら朝のことを思い出したようだ。
そんな風にされるとマッスルの方も照れてしまう。
「なんにゃなんにゃ、やっぱり2人共なんかあったんじゃにゃいかにゃ~。」
「な、何もなかったよ。」
「うん、そうだよ。」
「あやしいにゃぁ~。」
「ええ怪しいです。」
そこにリズも割り込んできた。
「お前らまだ蒸し返すのかよ。」
「ですが、2人とも覚えていないのだから、何もなかったとは言い切れないはずです。」
「なぁ、それは悪魔の不在証明って言うんだぞ。」
「なんですかそれ。」
「悪魔なんて正体の分からないものを本当にいないのかと証明するのは無理な話だ。って諺だ。エルザなら知ってるだろ。」
そう言って話を振ると、エルザの前髪からのぞいていた目と、目が合った。
一瞬ビクッとなったエルザがやはり顔を赤くして目を背ける。そして一言。
「マッスル。悪魔はいるよ。」
「え。……あぁ~、そうか、神や魔王の居る世界だと悪魔も存在するか。」
「でも、意味は分かるよ。こっちの言葉でいうなら「裸の勇者の不在証明。」ってところかな。」
「それは俺が怪しいってことか。」
「怪しいじゃん。」
「怪しい。」
「怪しいにゃ。」
「マジか――――」
ハハハ、とマッスル以外の3人が仲良さそうに笑っていた。
どうやら引っ込み思案なエルザも馴染んできたのだろう。
と、
そこで気づいたのだが、エルザのくせっけな金髪が昨日までに比べて綺麗に手入れされている。
最初は男の子かと間違えそうになった中性的な顔立ちのエルザだったが、今は女の子の顔をしていると分かる可愛らしさだった。
と気が付いても口にしない。
言えばまた勘繰られるだけだと空気を読むマッスル。
黙って3人を見ていると、髪を指でいじくっていたエルザとまた目が合った。
今度は目をそらされることなく笑い返してきた。
さて、そんなこんなで準備を済ませた一行は魔物が出る森の中へと入ってへ行った。
「それでここではどんな魔物が目撃されたんだ。」
マッスルが先頭を歩きながら訪ねると。
「残念にゃがら目撃者が魔物に詳しくなかったから分からにゃいにゃ。」
「そうか。」
「ここみたいな森では頭上からの奇襲に気を付けるにゃ。」
と、ベテランのミャンマーからみんなに忠告がされる。
「きゃぁ!」
言ってる傍からリズが頭上から落ちてきたものに悲鳴を上げる。
「スライムにゃ。急いで倒すにゃ。口をふさがれたら窒息してしまうにゃ。」
「倒すったって、こんなドロドロの奴どうやって倒すんだ。」
「核にゃ。スライムは核をつぶせば倒せるにゃ。」
「よし核だな。」
と探してみても、全身ヌルヌルになったリズのどこに核があるのか分からない。
「えいっ。」
ゴンッ!と、エルザが装備していたメイスでリズの頭を叩いた。
「痛ったあ~い。」
「ナイスにゃ。今のですライムの核がつぶれたにゃ。」
リズの頭から黒いモヤが出て魔石が落ちて来た。
「スライムは基本真ん中に核がある。だから頭の上から降ってきたら高確率で頭に引っかかる。だからまずは頭を叩けば何とかなる。ブイ。」
ドヤ顔のエルザがそう説明してくれた。
とはいえ、頭を鈍器で殴られたリズはたまったものじゃない。
「え~ん、もうチョット優しくして~。」
「生きたスライムの粘液は消化液だから肌荒れを起こす。」
「我慢します。」
リズが涙目で受け入れた。
「でもまだまだヌルヌルする~。」
「それはスライムのドロップ品にゃ。ゴブリンの剣みたいなもんにゃよ。ちなみに倒したスライムの粘液は錬金術や化粧水として使えるにゃ。こんなこともあろうかと空き瓶とかを用意しておいたにゃ。」
「何で生きてるときと性質が逆転するの~。」
全身スライムの粘液でヌルヌルになったリズに、空き瓶を片手に近づいて、粘液を採取するミャンマーはなんかいかがわしい。
「ふっふっふー、これもお金になるにゃよ。我慢すっるにゃ。」
「う、うぅ~、これもお金の為、お金のためなんだから我慢しなくちゃ。」
ますますいかがわしい。
「……マッスルってああいうの好き?」
マッスルの隣に来ていたエルザが聞いてくる。
「悪くはない。」
「……そっか。」
そうしてその後も何度かリズの頭を叩きながら森の中を進んでいった。
道中ではスライム以外の魔物も出てきたが危なげなく倒して行けた。
主にマッスルが壁役となり、リズとミャンマーが攻撃役、エルザが回復と補助に役割分担して戦って行けた。
「にゃははは、ワタシ達結構いいパティ―じゃにゃいかにゃ。」
「リズの不幸体質が無ければ万全だね。」
「ちょっと。」
「にゃははは、それでも今回もレアなスライムを狩れたにゃ。いいスキルにゃと思うにゃ。」
そんなことを言いながら森の中心にある湖までやって来た。
そこで一行の遠足気分は吹っ飛んだ。
湖の中、歩いていける場所ではあるが洞窟のようなモノが突き出していたのだ。
それは背景から完全に浮いていた。
本来そこにないものが強引につぎはぎされたようにそこにあるのだ。
「……ダンジョンにゃ。」
「ダンジョンってこの前潜った地下墓地みたいなのか。」
「アレとは違うにゃ。あっちはすでに死んだダンジョン。これは今も生きて成長している正真正銘のダンジョンにゃ。」
「正真正銘って。」
慄くミャンマーにマッスルがいぶかしんでいると。
「マッスル、生きたダンジョンにはダンジョンコアになっているボスがいるんだよ。」
と、エルザが補足してくれた。
「ボスは魔王軍の幹部クラスの力を持つものだ。それがこの辺境に出来たのはかなりの大事件になるよ。」
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