第4話 神の信徒

1、


「お前が全裸の「勇者」で間違いないな。」

 そう聞いて来たのは白いローブを着た3人のうちの一人だった。

「そうだが、お前は何者だ。」

「失礼しました。わたくしフルモンティー教会の信徒で御座います。」

 そう言って頭を下げる男、それに倣うかのように後ろの2人も頭を下げる。

 頭を下げる際、ローブの隙間ができて中がチラリと見えてしまったが、こいつらもローブの下は全裸か。――――いや、どうやら下着は付けているようだ。

 てか、後ろの2人は若い女だった。

「我々フルモンティー教会は全裸たる神と全裸の勇者の伝承を信じる者です。我々は貴方の信者なのです。」

 「マイナーじゃなかったの。」って顔でリズを見るマッスルに、「マイナーだから誰も信じてない。ってわけじゃないんですよ。」と返す。

「ならなんでそんな恰好をしているんだ。」

 マッスルが3人に向き直り訊ねると、

「我々はまだ修行中の至らぬ身。全裸に成ろうとも羞恥心や背徳感を捨て去ることができず、神の加護を授かることができないのです。ですので我々が外に出る時はこのような恰好をすることになっているのです。」

「ふーん。」

「マッスルさんもローブくらい来たらどうですか。」

「なんてことを言うのです。」

 リズにローブの男がすごい剣幕で詰め寄る。

「この方は「勇者」。神が認めた加護を賜るお方なのです。この方は神より全裸で外を歩く資格を与えられているというのに、なぜそれを隠さなければいけないのですか。」

「ひぃぃぃぃ。」

「おい、リズを怖がらせるな。それよりも俺に何か用があってきたんだろう。」

 マッスルがリズを背後にかばいながらローブの男に訊ねる。

「そうでした。すみません。実はグリーンの街の司祭様が「勇者」さまにぜひお会いしたいと申しており、お迎えに上がった次第です。」

「――――ふーん。その司祭は人を寄こすだけで自分は出てこないんだ。」

「司祭様にはやむに已まれぬ事情がございまして、自ら出向くことがかなわなかったんでございます。どうかご容赦を。」

「「勇者」様、ここで我等と話していては目立ちます。」

 後ろに控えていたローブの女性が話に入ってきた。

 言われてマッスルが周りに目をやると、確かに多くの人が距離を取りながら自分たちに注目しているではないか。

「ここはまず我らについてきて、教会でお話しさせて下さい。」

 そう言って頭を下げる女性。するとほかの2人も深く頭を下げる。

「―――どうするよ。」

「いいんじゃないんですか。見る限りアナタの信者ファンてのは信じられそうですし、むしろ信者って言うなら何かいいモノをくれそうじゃないですか。」

「……お前、意外とせこいな。」


2、


 やってたフルモンティー教会のグリーン礼拝堂は―――ボロかった。

 壁や窓ガラスにはつぎはぎだらけ、礼拝堂の椅子に関しては古市で買ってきたような使い古された統一感のないものだった。

「というか、ここって教会として建てられたんじゃなくて空き家を買い取って協会にしたんじゃないのか。」

「マッスルさん、帰りましょう。なんだかたかられる気配がします。」

 と振り向けば2人を導いたローブの者たちによって扉は固く閉ざされていた。

 そして、あろうことかその3人はローブを脱ぎ捨てて下着姿になったのだった。

「…先輩、や…ヤッパリ恥ずかしいです。」

「耐えなさい。羞恥心を捨てられなければ神の加護は得れないのですから。」

 案内役の内の女性二人が下着姿で互いに手を取りながらに支え合う。

 恥ずかしがり屋の後輩はシンプルな白い下着。

 対する先輩女性はスケスケの赤いランジェリーだった。

 来たことを後悔するリズだったが、逃げ出す前に相手の方が先に現れてしまった。

「よ~こそいらっしゃいました勇者様。ワタクシがフルモンティー教会・グリーン管区長の司祭であるスッタ・モンダで御座います。」

 扉を蹴破るかの勢いで奥から金髪のウェーブが掛かったロングヘア―をたなびかせた、巨乳の美女が現れた。

 それに遅れて下着姿女性がシーツを持って現れて司祭の体を隠す。

 それにポカーンとしていたマッスルたち2人だったが、

「リズ、少し話を聞いていこうじゃないか。」

「……マッスルさんって女性の体に興味があったりするんですか?」

「興味も何も――――イイ女には興奮するぞ。見えないだろうが起つもんは起ってるぞ。」


 ゾッ――――――――――――!


 そう言われてリズはつい先日、この全裸と一つのテントの中で寝泊まりしていたことに危機感を感じてしまった。

 もしも―――――――、



 もしもマッスルさんがアタシの体に興奮して、それを押さえられなかったら。

 そんな想像がリズの頭の中に広がる。

「なぁ――――リズ、――――いいだろう。」

 耳元で甘くささやかれる言葉。

 緊張で固くなった体をゾクゾクと震わせる。

 それを感じ取ったのかマッスルが体を覆いかぶせてくる。


 フワッ――――。


 リズの鼻がマッスルの体臭をとらえてしまった。

 数日前、ゴブリン退治に失敗してピンチだったところをマッスルに助けてもらって、帰りはマッスルに背負われて帰った。

 その時、夢うつつながらに嗅いだマッスルの匂い。

 父親のとは違う男性の香り。

 汗のにおいを感じさせるものの、シナモンの様な甘い香りも感じられる。

 ピンチから助けられたこともあり、その匂いに安心感を覚えたものだ。

 その匂いが今目の前に迫ってきている。

「いやなら拒めばいい。大きな声で助けを呼べばいいなだよ。」

「―――っ、そんなこと言ったって、こんなところじゃ誰にも聞こえな―――――アッ、アァッン!」

 大きな声が出てしまった。

 マッスルが脇の下から手を差し入れて、胸の方へと撫で上げて来たからだ。

 それが恥ずかしくって、口をつぐむ。

「ふふ、顔を真っ赤にして可愛いなぁ。いいんだよ。どんなに大きな声を上げたって誰に聞かれることは無いんだから。」

 リズはイヤイヤと口をつぐんで首を振る。

「それじゃぁ分からないよ。ちゃんと言葉にして。」

 マッスルはリズの胸をを優しく撫でまわしながら言ってくる。

 気持ちよくって声が出そうになる。

 でも声は出したくない。

「そんなに我慢しないで―――ほら。」

 フルフル。

「自分で口を開けないなら無理やりこじ開けちゃうぞ―――。」

 そう言って、マッスルはリズの唇に自分の唇を近付けて―――


「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

「うおっ、どうした。」

 つい想像が膨らんで大きな声を上げてしまったリズ、それに驚くマッスル。

「な―――、何でもないです。」

「でも顏真っ赤だぞ。」

「何でもないんです。」

「そうか。」

 そう言って、全裸の(局部はシーツで隠されている。)スッタに視線を向けるマッスルにリズは不満を隠せなかった。

「別にいいですけど。」

「ん?どうした。」

「何でもないです~。」

 むくれるリズに???と頭に浮かべるマッスルだったが、司祭様の話を改めて聞くことにした。

「すみません。そちらにもいろいろ事情があるようですが、我等フルモンティー教会が存続するのには実績が必要なのです。」

「分かります。」

 リズが妄想を膨らませている間にも話は進んでいたらしい。

「そういう訳で改めて、我が娘のエルザ・モンダをアナタの仲間に加えてください。」

「分かりました。」

「――――え、えぇぇぇぇ~~~。」


3、


 リズがあっちへ行ってるうちに話が進んでしまい、何やら仲間が増えることになってしまっているようだ。

 リズとしては自分の知らないところで話が進んでしまい(自分のせい。)納得いかないところもあったが、当の人物を見なければ反対のしようもないと腹をくくる。

「それでは紹介します、我が娘のエルザ・モンドで御座います。」

 そう言って手がかざされた扉からは誰も出てこない。

「……………。」

「……………。」

「エルザ。どうしたのですか。ほら、出てきてご挨拶しなさい。」

「……………。」

「……………。」

 しかし誰も出てこない。

「ちょっと~、エルザ~。」

 そう言ってスッタは扉の奥へと走っていった。

「…………で、仲間にするんすか。」

「……とりあえず、本人と話してからだな。」

 「分かりました。」と入ったものの、あの様子ではまずは本人の意思を確認してからだな。と、考え爽やかに笑顔で答えるマッスルに、リズは――――

「スッタさん、ナイスバディ―でしたもんね。」

「確かに、均整の取れたいい体つきだた。」

「……娘さんもそうだったらいいすねぇ~。」

 と、なぜかとげとげしい口調で返してくる。

「?親と子供は話が別だろう。」

「親子丼でもお望みですか。」

「???何言ってんだオマエ。」

 何故かリズが膨れているか分からないマッスルはあたまに?を浮かべながら、お昼ご飯は親子丼にするか。と考えていた。

 そんなわけで、リズがむくれてマッスルと口を利かないので会話もなく待つこと少し。

「お待たせしました。こちらが娘のエルザです。」

「よ、……よろしくお願いします……勇者様。」

 スッタに連れてこられた子は地味な娘と言っていいのだろうか。

 母親譲りの煌びやかな金髪なのだが、くせっ毛で目元まで隠れるほどに前髪が長いものなので、何処か地味に見えてしまうのである。

 加えて、彼女の態度は引っ込み思案な感じでオドオドしており、目線が分からないのもあって避けられている感じがするのである。

「この子はワタシのような神様の加護を賜れない未熟者と違って、とても優れた素質を持っているのです。」

「や……やめて、おかあさん。ボク……人前で全裸に成るなんて……ゼっ、ぜっ、絶対に無理だから。」

「ボク?」

「ん、女の子じゃないのか。」

 エルザの言葉にマッスルたちが疑問符を浮かべると。

「ご、ご、ごめんなさい。ボ、ボク、女の子なのに自分の事ボクって言っちゃってよく誤解されるんです。」

 と、オドオドと焦るようにエルザは弁明する。

 (ボクっ娘かぁ。)と思い、うんうんと頷くマッスル。

 そしてリズはエルザと母親を見比べていた。

「似てないですね。」

「す、すいません。お母さんと違って全裸じゃなくって。」

「ううん、いいのよ。むしろ全裸じゃないほうがいいわ。」

「え?そうなんですか。お母さんは全裸の勇者様の仲間になれって言っていたから、ボク、てっきり――――。」

「そうよ、ワタシはこのマッスルの仲間だけど全裸じゃないでしょ。」

 そう言うリズの姿を見て、エリザはホッと安堵の息をついた。

 それを見ながらマッスルがスッタに問いかける。

「娘さんを仲間に、という話でしたがこんなに幼いのにいいのですか。おかあさんじゃダメな理由でもあるのですか。

 エリザは小柄な方のリズよりもさらに小柄で、年も幼く見えた。

「勇者様に求められるならわたくしも嬉しいですけど。」

「いえ、そういう意味では――――」

「ですが、わたくしでは駄目なのです。ご覧通りわたくしは全裸で御座いますが、恥や背徳感を捨てきれないのか神様の加護を携わることができいないのです。」

 だからなのだろう。信者がシーツで彼女の体を隠しているのは、そうしなけえば丸見えになってしまうのだろう。

 マッスルとしては見えれば嬉しいが、社会の公序良俗的には謎の光、改め、「神の言えざる手」が無ければ困るのだ。

「その為わたくしは外への出禁を食らってしまっているのです。ですので勇者様にわざわざ足を運んでいただくことになってしまい、本当に申し訳ございません。」

 と、深く頭を下げられてしまった。

「しかし、勇者様の活躍があればわたくしたちフルモンティー教会の立場も上がり、より光の神への正しい信仰が増えるでしょう。そのためにもわたくしたちは勇者様のお力になりたいのです。」

「それで娘を差し出そうって言うのか。」

「それについても。娘はああも恥ずかしがり屋ですが、あれでも協会髄一の才能を持っています。ですが、今のままではその才能を開花させることはできないと思い、あの子に世界を見せてやりたいと思っているのです。ですがわたくしにはその力が足りません。ですので勇者様に託したいのです。」

 まったくの公私混同である。


 勇者の為に力になりたい。という立場故の発言。――――そのためには娘も差し出す。


 愛する娘の才能を開かせるためには勇者すら利用する。という母親としての発言。――――そのために娘を託す。


 この2つがこの女性の中では両立するのであろう。

 それに対してマッスルは良いも悪いとも言えない。

 マッスルが言うべきは―――


4、


「エルザ、でよかったかな。」

「は、はい。ボ、ボクのことはエルザと呼んでください。」

 緊張でどもりながらもマッスルにしっかりと向かって答えるエリザ。その彼女の目をしっかりと見ようとマッスルはエルザの髪をかき上げる。

「―――ッ、へぅ。」

「いきなりごめんね。でも、エルザの目を見て話したかったから。」

「ボ、ボクの?」

 そう言われてエルザの目にはお驚きと戸惑いが映る。そして少しの迷いの後、しっかりとマッスルの目を見つめ返して来た。

 それを受けて、

「エルザはどうしたい。」

 マッスルはそう聞いた。

「え?」

「エルザのしたいことを教えてほしい。」

「……ボクの、したいこと……。」

「そうだ、エルザのしたいこと。こんなことに挑戦したい。これを成し遂げたい。これだけは許せない。そういったエルザの心が知りたい。」

「え、……でも、そんなこと言われても――――分からないです。」

「……そうか。ならば考えてくれ。」

「?」

「2日後にもう1度聞きに来るから、それまでにエルザのしたいことを考えて聞かせてくれよ。」

 そう言って、「今日はこの辺で。」と言ってマッスルはスッタに挨拶をした。

 スッタは手を組んで神に祈りを捧げるように「ありがとうございます。」と言って見送った。

 後にはポカァンとしたエルザが残された。


「ねぇねぇ、マッスル。」

「ん?どうした。」

「さっきのはナニ。」

 フルモンティー教会を後にしたマッスル等は街の中心へ向かっていたが、その途中にリズがマッスルに詰め寄った。

「「エルザのことを教えてくれ。」とか言っちゃって、勝手に女の子の髪に触るとか何なの。」

 リズは頬を膨らませてそう言ったが、マッスルはソレに気づかずに空を見上げて語る。

「あの子、エルザは確かに才能に恵まれているんだろう。しかし、それゆえに彼女はできないんだ。」

「できないって、なにを?」

「自分の意志を出すことがだよ。才能があったからこそ周囲は期待してしまった。その期待が彼女の生き方を縛り、彼女自身が自分で考えて行動する機会を奪っていった。」

「それってマッスルの勝手な思い込みじゃないの。」

「だから目を見たんだ。」

「目を……だから髪の毛を触ったのか。」

「あぁ、あの子の目を見ながら話を聞きたかったんだが、彼女の目は人を見ているが覇気がなかった。」

「そうか……あの子は大人の言うことを聞くだけだった。とマッスルは感じたんだ。」

「そうだよ。」

「ふ~ん。それであんなことを聞いたんだ。」

「そゆこと。」

「じゃあ、あの子が仲間になりたいって言ったら仲間にするの。」

「あの子自身がそう答えを出したらな。――――なんだ、反対か?」

「反対って言うか……、ワタシ達の意見とか聞いてくれないの。」

「あぁ~、それはすまん。そうだな、リズの意見も、あとミャンマーにも聞かなきゃ駄目だよな。」

「そうよ。ワタシ達は仲間になるんだからマッスル1人でなんでも勝手に決めたらだめよ。」

「肝に命じます。」

 そう言って頭を下げるマッスルはリズと共に街の中を歩くのだった。


5、


 さて、フルモンティー教会でのあれこれの後、マッスルとリズは街をぶらぶらしながらたまにお店に入っては買い物をしていた。

 買ってい来たのは主にマッスルの為の武具と、冒険者の必需品をいくつかである。

 それらの買い物を済ませて宿に帰ってきたら、

「あ~、おかえりにゃさい。マッスルさん。リズさん。」

 猫耳を生やした黒髪の少女が手を振りながら出迎えてくれた。

「よう、ミャンマー。仕事はもういいのか。」

「はいにゃ。引継ぎも終わりましたのでワタシ冒険者に復帰ですにゃ。」

「ミャンマーさん、お疲れ様です。」

 「いえーぃ。」とリズはミャンマーとハイタッチをして労っている。

 マッスルがそれを眺めていると、

「じ~~~~~~~~~~~~~~。」

 と、二つの目線がマッスルの方を見つめて来ていた。

「い、いえ~ぃ。」

「「いえ~ぃ。」」

 視線に負けてマッスルが両手を上げると、左右の手にそれぞれハイタッチが返って来た。

 取り合えず宿の前で話し込むのは悪いのでいったん広い方のリズたちの部屋に行くことになった。

「お、おじゃましま~す。」

「なにかしこまってんすかマッスルさん。」

「い、いや。なんでもない……です。」

 実はマッスルは女性の部屋に入るのはこれが初めて。

 だから緊張してい居るのだ。

 そこ。

 リズと1つのテントで寝泊まりしてたじゃないかとか言わない。

 それとこれは話が別なんだから。

「す~~~~~~~~~~~~。」

「どうしたすっか。急に深呼吸なんかして。」

「いや、ちょっと緊張をほぐそうと思ってな。」

「そうっすか。」

「はははははははは。」

 正直甘い臭いなんてしなかった。

 それはそうだろう。

 なんてったって2人がこの部屋で寝たのは昨日1番だけである。

 それ以前はどこの誰が泊まっていたかなんてわからない宿屋の部屋に過ぎないのだ。

 しいて言うなら、木材の匂いがした。

 かび臭くないのは掃除が行き届いているということで、それだけがなんかの救いになった。

「それで~、2人は何処を見て来たにゃ~。」

 部屋に入って荷物を置いておちついたところでミャンマーがきりだしてきた。

「ほとんど武具屋さんを回って来ただけでしたよ。」

「なんにゃ~、色気のない話にゃね~。」

「そう言われましてもわたしとマッスルはそういう関係じゃないので。」

「そうだったにゃ。」

「あっ、色気ではないですけど、こんなことが――――」

「なんにゃ、なんにゃ。」

 興味津々で尻尾をクネクネさせてるミャンマーにリズとマッスルはフルモンティー教会に招かれたことを話す。

 そこであったこと、特にエルザのことについて話したところ。

「にゃ~、その子のうわさは知っているにゃ~。ギルドでも天才って話を聞いたぐらいにゃよ。」

「ギルドでもですか。」

「そうにゃ。だからワタシはにゃかまにするのには賛成だにゃ。けど~。」

「そうですね。マッスルさんの御質問がね~。」

「なんだよ、俺は間違ったことは聞いちゃいないぜ。」

「確かに間違っちゃいにゃいですが~、もったいないとは思いますにゃ~。」

「そう思っても、本人の意思を無視はできない。明後日、答えを聞いてからこちらも答えを出すぞ。」

「それでいいですにゃ~。」

「ワタシもいいですよ。」

 2人の答えにマッスルは満足そうに、そして嬉しそうにうなずいたのだった。


6、


 日が落ちて、濃紺色が空に広がるのを自室の窓からエルザは眺めていた。

『エルザはどうしたい。』

 昼間、勇者マッスルに聞かれたことが頭の中で何度も繰り返される。

『エルザはどうしたい。』

 エルザは悩み俯きながらも、自分の手で前髪をかき上げて、広がった視界に勇者のお姿を思い浮かべながらつぶやいた。

エルザボクはどうしたい。」

 創造の中のマッスルと実際のエルザの言葉が重なる。

「どうしたいんだろう。」

 エルザは髪から手を放し、両足を抱え込んで膝に顔をうずめる。

 思い出される勇者の姿。

 本当に全裸だった。

 全裸でありながら股間には神様の加護たる力が働いていた。

 ただ全裸を晒している母様とは違った。

 言い伝えどおりの神様に認められた姿。

 多くの人が間違っていると言っていた勇者の姿。

 多くの人に間違っていると言われたであろう姿。

 それでも全裸を貫いていた勇者様。

 マッスルのことを思い出すとエルザの頬に赤みがさす。

「どうしたらいいんだろう。」

 膝に顔を埋めたまま顔をずらし夜空を眺めてエルザはつぶやいた。

「今頃勇者様は何をなさっているのだろう。」



「あ~いきゃ~ん、ふらああぁぁぁ~~~いぃぃぃぃぃぃ。」

 マッスルはリズたちの部屋でベッドの上から全裸のまま床にダイブを決めていたところだった。

 びったああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん。

 腹から床に叩きつけられたマッスルだが痛がるそぶりを見せずにすぐに立ち上がる。

「どうだ。」

 そう言って立ち上がったマッスルの腹が打ち付けられた床をマッスルだけじゃなく、リズとミャンマーも覗き込む。

 そこには何もなかった。

「よっしゃああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ。」

「うええええぇぇぇぇぇぇ、どうなってるの。」

「ほんとに、ホンットウに鎧が消えたにゃ。」

「ふふん、鎧はいま俺の筋肉の中にある。」

 自慢げに語るマッスルだが、実はダイブした床の上には今日買ってきた鎧が置かれていたのである。

 マッスルは鎧の上にダイブしたのっである。

 普通なら怪我では済まない。

 しかし、マッスルの腹筋には傷1つなく、赤くなってすらいなかった。

 どころか、床に置かれた鎧が跡形もなくっ消え去ていたのだ。

「これが肉体付与ってアビリティーの効果か。」

 そう言って自分の二の腕を叩くマッスル。

「どんな感じっすか。」

 興味本位でマッスルの胸に手を置くリズ。

 置いてから男性の肌に直接触っていることに気が付いて、顔を赤らめるリズ。

 しかし、そんなリズの反応に気が付かないマッスルは胸筋をピクピクと上下に動かした。

「キモイわ。」

 カーンとっリズのツッコミがいい音を出す中、ミャンマーは難しい顔でマッスルの腹筋を見つめる。

「これ、どういう原理でこうなってるの。」

「え、それはド根性じゃなですか。」

「意味が分からないにゃぁ。」

 マッスルとしてはド根性ガエルについて説明したかったが、異世界の人間にはちょっと難しいかとあきらめた。

「なんにしてもこれでマッスルも武具が装備できることは確認できたわね。」

「じゃぁ、明日は肩慣らしも兼ねてクエストに行ってみるか。」

「いいわねえ。」

「そう言えば、ギルドに初心者向けのいいクエストがあったにゃ。明日はそれでコンビネーションの確認にゃ。」

 そう決まってそれぞ明日の準備をしてから夕飯を取りに向かった。


 明けて次の日、あいにくの曇り空でクエスト日和とは言えなかったが、マッスルとリズとミャンマーの3人は街の近くのクエストをこなしに来ていた。

 場所はダンジョンである。

 グリーンの街にはすぐ傍にダンジョンがある。

 町の基部になっている遺跡がそうなのだが、すでに探索し尽くされている廃ダンジョンでもある。

 しかし、古代の地下墓地カタコンペであったそこは邪気が溜まりやすいのだ。

 そのために魔物が発生しやすい場所であり、しかも街の下水道とつながっているので放置できいないのである。

代わりに、魔石を手軽に調達できる場所でもあるのだが、今は外の魔物が多くこちらは閑散としてしまっているのだ。

「と、いう訳で即席パーティーの腕試しにはもってこいの御場所なんです。」

 3人はいくつかあるダンジョンの入り口から地下へと降りて行った。

 ある程度地下に来ると気温が下がってきてひんやりとする。


「マッスルさん、寒くないですかにゃ。」

「問題ない。俺の裸体は寒さにも強い。」

 そう言ってフロント・ダブル・バイセップスというポーズをとった。

 分かりやすく言うと上腕筋を強調するように両腕を曲げて上に挙げるアレだ。

 途端にリズとミャンマーは暑苦しさを感じて顔をしかめる。

「それより、そんなダンジョンにクエストなんかあるのか。」

「まぁ普段は無いにゃ。けど、人手不足でこっちがおろそかなせいで魔物が出たら困るってことで心配した街の方からの依頼にゃよ。基本は調査で、魔物が少数ならそのまま退治、ヤバそうなら報告、で報酬がもらえるにゃ。」

「なるほど、魔物を倒さなくても報酬はもらえるなら美味しいクエストだな。」

「昨日結構買っちゃいましたもんね。お金が稼げるなら助かります。」

「お金だけじゃなて、レベルも上げたいから魔石を手に入れたいな。」

「いつもどうりでもそこそこ魔物はいるはずですからそこそこ稼げるはずですよ。」

 そんなお美味しいクエストをもってきてミャンマーには感謝の念が絶えない。

 と、そんな話をしながら階段を下っていると、洞窟みたいな道から開けた場所に出た。

 そこは赤レンガで造られた神殿のような場所だった。

 明かりはマッスルたちが持っているランタンの明かりだけで、奥の方まで見渡せなくなっていた。

 パンッ。

「うわぁ~。意外と広いですね。どんな魔物が出るんですか。」

 パンッ。

「基本的にアンデット系ですにゃ。あとは大きなネズミや虫系だにゃ。」

 パンッ。

「あぁ~、どうりで。」

 パンッ。

「マッスルさんそんなに蚊が居ますか。」

「いや、いっぱいってわけでなく。」

 パンッ。

「1匹すばしっこい奴がいて。」

 パンッ!

 パアンッ!

 パパンガパン!

「くそ、逃がした。」

「ほらマッスルさん。モンスター出たっすよ。ワタシ達べつに蚊を退治に来たんじゃないんですからあきらめて切り替えましょう。」

「分かったよ。」

 そう言ってマッスルは現れたスケルトンにフロント・ダブル・バイセップスでつっ込んでいった。

 結果だけを見れば5体のスケルトンが一撃で粉砕されてバラバラになって黒い霧に変わる。

 実際はダブルラリアットなのだが、その光景は怒れる猛牛に轢かれる哀れな被害者にしか見えなかった。

「フン、八つ当たりにもならん。」

「んにゃぁ~、マッスルさん。コンビネーションを試そうって言ってるのに1人で突っ込まないでほしいにゃぁ~。」

「すまんすまん。とはいってもそれぞれが何ができるか知らないと連携もないだろう。」

「ここはリズさんを中心に連携を取るべきですかにゃ。」

「ふえ、ワタシが中心ですか。」

「マッスルさんは突出しがちですし、ワタシとリズさんも近・中距離型ですからリズさんの位置を気を付けるのがいいでにゃ。」「つまり俺は出過ぎるな、と。」

「でもマッスルさんの突破力はすごいですし、行ったら1回リズさんのところに戻るって反復運動ルーティーンを作るのがいいと思うにゃ。」

「フロントアタッカーが俺で、両翼センターウイングが2人ってところか。」

「これでセンターガードが加わればいっちょ前にゃ。」

「センターガードかぁ~。エルザちゃんが仲間になったらここかな?」

「さぁ、それは分からんぞ。俺と一緒で突撃タイプかもしれないからな。」

 そう言われてリズはあの内気な少女がモンスターを見たとたんに、「ヤローテメェーブッコロスー。」と言ってメイスを振り回しながら突撃するところを想像してしまった。

「ブッフゥ!ない、ないですよそんなの。あるとしたらこうです。『皆さん、守りはボクに任せてください。セイント・ウォォォォォォォル。』って感じじゃないですか。」

「そうかぁ、プリーストだから俺は食らったら相手は死ぬゴッドブローぐらい使うと思うがなぁ。」

「なんですかそれ、そんな殺意の高いプリーストが居ますか。」

「そうか、プリーストって教義の為なら相当えげつないと思うんだけど。」

「……マッスルさんの世界のプリーストってどんな感じなんですか。」

「異端者は火あぶり、とかするぞ。あと串刺しとか。」

「なにそれ、何処の魔王軍ですか。」

「神の信徒だそうだぞ。」

「狂ってますね。」


7、


「さて、これまでに俺とリズは戦闘を見せてきたが、仲間になったんだからそろそろミャンマーの戦いも見せてくれないか。」

「ハイハイハイ。ワタシも見たいです。」

「そんな風に言われたら照れるにゃぁ。」

 そう言って身をよじるミャンマー。

「ミャンマーのカッコいいとこ見てみたい。それ、イッキ、イッキ、イッキ。」

「……何にゃそれ。」

「マッスルさん、意味が分かりません。」

「あれ、俺スベッた。」

「スベってますね。」

「S・O・S・O、それソソオ。」

 今度は印を組むように両手の指を合わせて何かを表現したかと思うと片手を腰に当てて、もう一方の手で何かを煽るようにしながら上を向くマッスル。」

「……何がしたいんですか。」

「異世界の儀式かにゃんかですかにゃ。」

「うおおおおおおぉぉぉぉぉぉ、パリピ共はこれで盛り上がるってのは嘘だったのかあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 マッスルが地面に伏して慟哭する。

「ホントーに何がしたいのにゃ。」

「多分マッスルさんは使い方を間違っているんじゃないんですか。」

 実はマッスル、裸で過ごせることでこの世界ではテンション上がり気味だったが、もともとは陰キャタイプだったもので、こういう女の子との会話での盛り上げ方を知らないのだ。

 それでもなんとか場を盛り上げようとしたらご覧のとおり、盛大に爆死した。


 結局場は盛り上がらず、マッスルのテンションがダダ下がりになった中でミャンマーの戦いのお披露目をすることになった。

 ちょうどよく、開けた部屋に魔物がたむろしていた。

 マッスルたち3人はそれを物陰に身を隠してうかがう。

 魔物は大きな蝙蝠、「キラー・バット」が3匹と、スケルトンが5体、それとゾンビが8体いた。

「ちょっと多くないですか。」

 リズは自分がゴブリンの群れに数で押されてピンチになったことがあるので心配してそう聞いた。

「あれだけにゃらいいんだけど、他にも出てきたら危ないからその時は助けてほしいにゃ。――――てか、仲間にゃんだから助けてくれるよにゃ。」

 それにマッスルとリズは「もちろんだ。」と答える。

 それを聞いてニャッと笑ったミャンマーは、身を隠していた物陰から飛び出した。

「おぉう、すげぇ。」

 マッスルの下がっていたテンションが少し上がった。

 それだけミャンマーの戦い方がすごかったのである。

 魔物に向かって走っていたミャンマーは、走りながら弓を構えて矢をつがえたかと思うと、


ヒュッ――――――ドスッ。


ヒュッ――――――ドスッ。


ヒュッ――――――ドスッ。


 続けざまに放たれた3本の矢は真っすぐ飛んで天井からぶら下がっていたキラー・バットを射落とした。

 素早く、飛ばれる前に飛行タイプを片付けたことで頭上からの攻撃の心配がなくなった。

 とは言えそれをするのは至難の技だろう。

 続けざまの3連射。その速さもそうだが走りながら矢を当てることが常人では無理だ。

 ミャンマーは弓矢だけでも達人の域にあるのではないのか。

 そうマッスルたちに思わせるほど見事だった。

 だが戦いはまだ終わってはいない。

 キラー・バットを倒したミャンマーは弓をなおすとさらに加速、急な加速により構えていたスケルトンの反応が遅れる、その隙にスケルトンたちの懐に入り込んだ。ミャンマーはそこで腰に差していた刀を抜きざまに一閃した。

 その一閃でスケルトン2体が切り裂かれた。

 スケルトンは骨がバラバラになることなく黒い霧になった。が、これは余分な力を加えずに確実に命を絶った証拠である。

 残心からすかさず斬り下ろしによりもう1体のスケルトンも倒す。

 ここでやっと1体のスケルトンからの攻撃がなされた。スケルトンの持つボロボロの剣がミャンマーに向かって振り下ろされた。

 それをミャンマーはひらりと躱す。それはまるでダンスを踊るかのようだった。ドレスアーマーのスカートの裾がふわりっとたなびく。

 優雅な仕草であるが、ソレで魔物の命が1つ消えた。

 ここまでがあっという間だった。

 動きの遅いゾンビたちはやっとミャンマーの存在に気が付いたかのような緩慢な動きでミャンマーに向かい始める。

 スケルトンが1体とゾンビが8体、まだ半数が残っている。

 それは十分な脅威になるが、しかしミャンマーの顏から余裕の笑みが消えることはなかった。

 それもそのはず、脳みそが腐っているゾンビと、脳みその無いスケルトンでは連携などできようはずもない。

 動きの遅いゾンビをほったらかして最後のスケルトンは無謀にも突出して、あっさりミャンマーに討ち取られた。

 残るゾンビはそんなのお構いなしにゆっくりとミャンマーに近づく。

「出血大サービスにゃっ、『炎刃』。」

 そう叫ぶミャンマーの手にする刀から勢い良く炎が噴き出す。

「『飛翔閃』。」

 そしてもう一つ叫ぶと振り抜いた燃え盛る刀から炎の斬撃があふれ出す。

 その斬撃はミャンマーが叫んだように鳥のように飛翔して、迫り来るゾンビたちに襲い掛かった。

 ゾンビたちは「あ~~~。」とか「う~~~~~。」とか声を上げながら炎に飲み込まれて消えて行った。

 後に残ったのは無傷のミャンマーと、魔物の居た証のドロップした魔石だけだった。


「すごい、すごいですよミャンマーさん。」

 物陰からミャンマーの戦いを見守っていたリズが興奮しながら飛び出してきた。

「リズさん危ない!」

「へ?」

 物陰に隠れていたキラー・バットがリズに襲い掛かったのだ。

「き、きゃあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


8、


「リズさん、無事ですかにゃ。」

 最後のキラー・バットを弓矢で仕留めたミャンマーが、リズの叫びに心配して声を上げる。

 とっさにリズの後ろにいたマッスルが襟首をつかんでリズを後ろにひっぱたから無事、リズは幸いにもかすっただけだった。が、かすただけでも当たり所が悪く、胸当てが外れてその下のシャツがキラーバットの爪に引っかかって破けてしまったのだ。

 結果、リズはそのたわわに実ったオッパイをポロリしてしまったのである。

 ちなみにこの世界にブラジャーはまだない。

 よって、リズのオッパイはそのきれいな形も桜色のポッチも丸見えだった。


 じゃきーん、ぺしいいいん。


「きゃあああああああ。なんか後ろで嫌な音がするうううううううううううう!」

 ダンジョンに再度リズの叫び声がする。

 リズは正面に駆け寄ってきたミャンマーに縋り付くように抱き着いて、涙目で後ろを振り返る。

 突然の奇襲と謎の音で混乱するリズだが、振り返ってもマッスルがいるいるだけで謎の音の原因が分からない。

 マッスルの股間の光が若干大きくなっている気がするくらいだ。

「大丈夫かにゃ。」

「はい。すみません、油断しました。」

「次は気を付けるようにするにゃ。」

「はい、しかしさっきの音は何だったんでしょうか。」

「それは多分気にしにゃい方がいいにゃ。」

「ほれリズ、新しいシャツだ。着替えた方がいいぞ。」

「きゃっ、そうでした。」

 リズが着替えている間マッスルは後ろを向いていたのだが、

「にゃにゃ、マッスルさんが何でリズさんのシャツの替えを持ってたのかにゃ?」

「数日あいつと過ごした結果、「こんなこともあろうかと」と思ってな。一応用意しておいたが本当に役立つとわ。」

「にゃるほど~。ところでアレ、何処から出したにゃ。」

「もちろんここから。」

 マッスルはそう言って、大きくなった股間を指さす。

 それを見て「知らぬが仏だにゃ~。」とあきれるミャンマー。

 そのミャンマーの言葉を聞いて、異世界で仏?と疑問を持つマッスルだったが、そこらへんは言葉も通じるし都合のいい力が働いて翻訳してくれているのだろうと結論付けた。


 リズの着替えも終わり、周囲に魔物が居ないかの確認もできたので、3人は今のミャンマーの戦闘の感想を語りながら休憩をする。

「いやぁ~、すごかったすよねミャンマーさん。」

「あぁ、流石ベテランだ。しかし、Dランクでこれだけ強いと高ランクはどんだけ強いんだ?」

「あ、それにゃんだけど、アタシは闘技場とかの決闘ならBランクにも引けを取らないにゃ。」

「ん、じゃあなんでDランクになってんだ。」

「実は私はスタミナの消費が激しくて、防御力も防具頼みにゃので冒険者としてのランクが低いんですにゃ。」

「つまりミャンマーさんは、」

「はい、パティー内では活躍できますがソロは無理ですにゃ。だからこそ昨日まで冒険者を休業してたにゃ。」

「あれだけ強けりゃ引く手はあまただろうに。」

「フィーリングが合わなかったにゃ。」

 そう言ってぺろりと舌を出すミャンマーは冒険者カードを2人に見せる。

「アタシのステータスはこうにゃ。」


――――


名前:ミャンマー・リーゼル


種族:猫人族キャッツリース


性別:♀


職業:戦士


クラス:スイッチファイター


ランク:D


Lv:12


HP:1258    MP:63


物理攻撃力:209   魔法攻撃力:13


物理防御:58    魔法防御:28


素早さ:88    運:42


――――


「装備込みでこれにゃ。ステータス的にはレベルのわりに低い方なのにゃ。けど、スキルが豊富なのが強みにゃ。」

「スキルってあの『炎刃』とか『飛翔閃』とか言っていたやつか。」

「ソレだにゃ。スキルは複数を組み合わせることで効果が変わるからいろんな組み合わせを試しておくといいにゃ。中にはすっごい強力なヤツもあるにゃ。」

「へぇ~、ワタシも色々試したいな。」

「ただ注意があるにゃ、スキルは使用時にスタミナを消費するにゃ。特にスタミナはステータスとして確認できないから管理は重要にゃよ。できるだけ安全な場所で把握できるように訓練するにゃ。」

「ハイ分かりました。」

 ミャンマーの注意にリズは素直に答える。

「つまり、スキルのスタミナを管理するために仲間でコンビネーションをしっかり決めておいた方がいいってことか。」

「そうですにゃ。このなかだとマッスルさんが一番スタミナがありそうですね。」

「そうだな、いまのところこれと言って疲れる感じはしないからな。」

「まぁ、単発でしたし中には隙うじゃないものもありましたからにゃあ。」

「それでは次に行きましょうか。」

「そうだにゃ、今日は2人のスキルとかを中心に使って戦術の構築をするにゃよ。」

「ついでに魔石集めもな。レベルアップポーション買う金も集めたい。」

 そうして3人はダンジョンを回るのだった。

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