第3話 バトルスタイル。
1、
はぐれゴブリン。
その名の通り群れを持たず単独で行動するゴブリンである。
こいつらは地面からぽこりと生まれ出てくることが確認されている。そして、個体としての強さは普通のゴブリンより少しばかり強い。
このことからはぐれゴブリンが成長してホブ・ゴブリンとなりゴブリンの群れをつくる。群れで生まれたゴブリンが普通なのでは無くて、こちらが弱いのだと、そしてこの群れのゴブリンはホブ・ゴブリンにならずとも数を増やせる。
という研究論文がギルドにはある。
それはさておき、
ゴブリンの振るう鉈が丸い盾、木と金属で作られたバックラーにぶつかった。
鉈の刃がバックラーの表面を滑る。
バックラーは安物の平たい奴では無くて、亀の甲のように球面状に加工されたものだった。その表面に打ち下ろされた鉈は衝撃をいなされて、あらぬ方向に振り抜かれた。
バックラーの裏からすかさず飛び出したリズは体勢を崩したゴブリンの肩から袈裟懸けに、持っていたロングソード振り下ろす。
「ぐぎゃぁぁぁあぁぁぁっぁぁぁ!」
ゴブリンが断末魔を上げて倒れると、黒い霧となって魔石がドロップした。加えて今回はゴブリンが持っていた鉈が消えずに残っている。
これをドロップアイテムという。
「へ~、やるじゃないですか。リズさんてば今のままでもFランクにはなりますよ。」
そう言って誉めるのはギルドの受付嬢にしてDランク冒険者のミャンマーだ。彼女は小柄でありながらしっかりとした鎧を付けている。しかし兜は付けておらず綺麗な長い黒髪は編み上げられて水色のリボンで止められていた。
ミャンマーは猫人族であり、頭の上のチャームポイントの尖がり気味の耳をピコピコさせながらリズに近寄る。
そうして並ぶとリズとミャンマーの背丈はほぼ同じである。
が、ミャンマーの鎧に比べてリズは軽装で、おへその見える短いシャツに革の胸当てを付け、ホットパンツと太ももまであるソックス、ひざ丈のブーツで、後はちょっといい年代物のバックラーぐらいである。
まさに対照的であった。
特に胸の装甲の厚さに差があった。
それは2人が並ぶとよりはっきりする。
しかしなぜか、防御力の高いミャンマーの方が胸は薄くて、軽装の方のリズの方が胸が出っ張っていた。
――――不憫な。
「こらぁ、そこ、マッスルさん。憐れむにゃぁ。」
同行していた男が2人の胸を見比べて、顔をそらすもんだからミャンマーに気づかれた。
この男マッスルは2人と違って、全裸である。
……
……………
大切なことだからもう一度言っておこう。
全裸である。
―――――
―――――――――――――――
別に間違いはない。
正真正銘、マッスルは全裸なのである。
この男は、全裸なる神が自分に似せて作った人間たちに「裸は恥ずかしい。」と言われ、「オレの体に恥ずべき場所などない。」とキレた神が人間に罰を与えた中で、心から全裸に誇りを持っていた為に勇者として選ばれて異世界からやって来たのである。
そして彼には勇者の証たる「神の見えざる手」という力が働いている。最初の人間が最も恥じらった股間に、燦然と輝いているのである。
さて、それはともあれ。
今回3人が居るのはグリーンの街から少し離れた草原地帯である。
ここにはリズの冒険者登録の実技試験の為に来ている。
現在仮免中のリズ(何故かマッスルは試験をパスして本免をもらっている。)はここで定期的に行われるゴブリン退治で試験となった。
本来は初心者さんの美味しいクエスト、なのだが。現在グリーンの街では魔王の影響で強いモンスターの報告が相次ぎ、人手を欲したベテランが人を集めて行ってしまったらしい。
そのためこのクエが少し宙ぶらりんになっていたので、この機会に消化しようということになったのである。
そして、流石は初心者さま御用達の美味しいクエストだけあって、試験のゴブリン5体の討伐はすでに完了している。
しかし3人はそれでもここで狩りを続けている。
それはここが狩場として美味しいからでもあるが、
「少し魔物の数が多いですね。」
ミャンマーは持っていた弓矢で飛行系の魔物を撃ち落としながらつぶやいた。
「そういえば街に来る途中で出た強い奴も換金所のお姉さんが言うには珍しい奴だったらしいな。」
30cmほどの蜂の群れに群がれながらも、ビシバシと叩き落していくマッスルガ応える。
「実際今だってここらへんでは強い部類の魔物も出てきてます。ほとんどマッスルさんが倒してますけど。」
「ブラウン・ビーの針で傷一つ付かないとか、マッスルの肌はどうなってんのよ。」
リズがあきれた風に言っているが。
「いや、蚊には食われたぞ。」
「逆に蚊には食われるとかその肌どうなってるのよ。」
「しかし、最近の魔物のパワーアップといい、何かあるのでしょうか。」
「こういう場合は魔王軍の何物かがこの辺りに潜伏しているのがあり得る話だぞ。」
「いえ、前線の結界があるか限りそのような強力な魔物がこの辺りまでやってくることはないはずです。」
「何事にも抜け穴はあるもんだよ。―――フン、このように神の加護にも通用する蚊が居るようにな。」
「…………そうですにゃぁ、これは一度上に話しておくべきかもしれないにゃぁ。」
「――――――にゃぁ。」
「ちょっと、からかわないでって言ったでしょ。マッスルさん。」
「今の俺じゃなくてリズだぞ。」
「―――――っ!」
「――――にゃぁ~。……かわいかったのでつい。」
2、
さて、目標は達成しているわけだが、魔物が居て、倒せばお金になるモノが手に入る。加えて皆の為にもなる。
となればすぐには帰らずに魔物狩りを続けるだろう。
「とりあえずリズの戦闘スタイルを見て行こう。」
ということになった。
それは3人の中でリズが一番弱いからだろう。
ミャンマーはDランク冒険者で、いわば中堅である。
装備もしっかりしていて動きもスムーズである。何より遠近に対応できるところが持ち味だ。
武器も刀の様な―――というか刀が大小2本。加えて弓矢を装備している。
鎧もロングスカートのドレスに、腰回りや肩、胸当てなどの装甲がつけられた和洋折衷なつくりである。
マッスルは神の加護で防御力も攻撃力も全裸にもかかわらず強い。
対して、リズは憧れの父のおさがりゆえに型落ちした装備品で、しかもロングソードは先日ホブ・ゴブリンにおられたために代用品だ。
そもそも、
「リズの場合は装備と戦闘スタイルが合ってない感じだな。」
「そうですね。盾の防御はいい感じですし、たぶん目はいい方でしょう。」
「しかし体が小柄な分ロングソードに振り回されている感じがあるぞ。それだとスタミナの消費も早いだろう。」
マッスルの言葉にリズは小さく息をのむ。
それはまさしく先日のゴブリン退治で痛感したことだからだ。
「少し自分の動きを意識して、体に合った武器にした方がいいと思うぞ。」
「あと、リズさんは魔法適性も高めなので魔法を絡めた戦術を作るべきですよ。」
マッスルとミャンマーはリズの動きを見て助言をしている。しかし、リズ本人にしたら今までのやり方からいきなり変えろと言われてすんなりと飲み込めないものだ。
それが分かったからだろう、マッスルは具体的なアドバイスをすることにした。
「リズ、そう悩むなよ。今武器を変えろと言っても変える武器がないじゃないか。だから今日は敵のきりやすい方法を探そうぜ。」
親指を立ててニッカリとわらうマッスルに、リズは必死に視線を下げまいとする。
視線を下げればせっかくのマッスルのいい笑顔も全裸で台無しになってしまうからである。
「とりあえず剣を使うならいくつか意識しておいた方がいいのが、「突き」にこだわるならサーベルだろう。直線と曲線の違いがあるが防御を立ててカウンターに繋げる。そのため軽く素早く動けるものがいい。次に「斬る」だが、これには「なで斬り」「引き斬り」「当て斬り」の3つがある。この中で「なで斬り」が一番難易度が高い。理由は相手の動きを見切り、相手の速さに合わせて自分も動ける必要があるからだ。だがこれはマスターすればミャンマーが持っているような細い剣でも骨ごと断ち切れるようになる。続いて「引き斬り」だが、コレが中級久留間者向けでもある。正確には「当て斬り」のおうようになるのだが、まず「当て斬り」は文字どうり剣を当てて、剣の切れ味で敵を斬る方法だ。これが一番技術はいらない。が、基本である以上一番威力が出る方法でもある。剣の切れ味、重さ、筋力に技の勢い、これらを総動員して対象を押し切るのが「当て斬り」だ。しかしこれでは相応の筋力が要求されることもあり、また隙も大きくなる傾向にある。これを補うのが「引き斬り」だ。当てたはいいけど押し切る力がない。そんなときに剣を引くことで「斬る」技だ。「引き斬り」は一撃に終わらず次を意識して使う剣技であり、攻撃と防御のバランス、スタミナ管理とを使いこなせるようになれば一番スタンダードな部類だな。」
ぽっかーーーーーーーん。である。
全裸で何も考えずに力のごり押しタイプのマッスルからいきなり長々と剣のレクチャーをされて、リズもミャンマーもポッカーンとなってしまっていた。
「マッスルって意外と考えてたんだ。」
というリズのセリフももっともである。
「いや、俺の昔の友達にこういうのに詳しい奴がいて。」
「マッスルさん友達いたんだ!」
「おいこらリズ、さっきより食いつきいいじゃねぇか。」
「だって全裸のマッスルさんに友達。その人も全裸なんすか。」
「残念ながら違うよ。」
「つまりマッスルさんはボッチで全裸。」
「ちっげーし、全裸ではボッチだったけど、ボッチで全裸じゃねーし。」
「違いが分かりませーん。」
「俺は全裸だけどボッチじゃねぇーし。」
3、
それからほどほどにゴブリンや魔物を狩ってから3人は街へと帰って来た。
日はそろそろくれそうだがギルド内はまだまだ活気づいている。
「それではこれがリズさんの冒険者カードです。」
「わー、ありがとうございます。」
試験を終えて正式に冒険者登録を済ませたリズがミャンマーから冒険者カードを受け取る。
早速リズは自分のステータスを確認する。
―――――
名前:リジィエール・フォン・マクシミラン
種族:
性別:♀
年齢:16歳
職業:戦士
クラス:魔法剣士
ランク:F
Lv:1
―――――
「改めて見ても変わらんだろ。」
「マッスルさん、分かってないですね。仮免と違ってステータスの確認もできるんですよ。」
「ほぉう、どれどれ。」
マッスルはリズの持つ冒険者カードから出ている、ホログラムディスプレイの様な画面をのぞき込む。
―――――
HP:780 MP:166
物理攻撃力:78 魔法攻撃力:52
物理防御:69 魔法防御:38
素早さ:34 運:9
―――――
であった。
「こっれてどれくらいなんだ。」
「え~と、どれくらいかな?」
「分からんのかい。」
「人のステータスとか見たことないから仕方ないじゃないですか。」
「おっ2人さ~ん。ちょっといいですか。」
リズとマッスルガ話していると、一度奥に消えたミャンマーが現れた。
その姿はギルド職員の制服でもなく、冒険に出る鎧姿でもなく、ラフなシャツとスカートに身を包んでいた。
髪も降ろしていて、まるで素朴な村娘のようである。
「どうしたっすか?」
耳をピコピコさせて首を傾げるミャンマーにマッスルは「アリだな。」と心の中で親指を立てた。
4、
「それじゃあ、乾杯~~~~~~~~~!」
マッスルとリズとミャンマーは小麦色のお酒が入ったジョッキを高らかに打ち合わす。
「いや~、ミャンマーさんにいい宿を紹介してもらえてよかったです。」
「2人共泊まる宿は決まってるかい。」
ミャンマーがマッスルたちにそう言ってきたのが発端だった。
「いえ、これから探そうかと思いまして。」
「じゃあさじゃさ、ワタシの泊ってる宿を紹介しようか。」
「ミャンマーさんって宿住まいなんですか。」
「これでも一応は冒険者だからね。」
「どうしましす?」って、ミャンマーと話していたリズがマッスルに問いかける。
「俺としては紹介してくれるならありがたいが、何か見返りがあるのか?」
「いやぁ、宿のマスターが客を紹介してくれたら下の酒場で一杯奢ってくれるって言ってたから。」
「なるほどそういう訳なら。」
「よろこんで。」
「じゃぁさ、せっかくだし今日は3人で飲もうよ。」
と、いうわけでこうなったのである。
「とか言っといて、2人部屋一つしか空いてなくてごめんにゃさい。」
飲み始めてから謝るミャンマー。
「いいえ。むしろミャンマーさんこそ私と同室でよかったんですか。」
宿屋の部屋は新しいのが2人部屋しかなかったので、ミャンマーが2人部屋に移りリズと同室に、代わりにミャンマーが使っていた部屋をマッスルが使うことになった。
「むしろリズさんこそ私と一緒でよかったのかにゃ?」
ミャンマーはチラリとマッスルの方を見る。
「あっ、大丈夫ですよ。ワタシ達そういうんじゃないですから。むしろ全裸と別室で助かるります。」
「そうなのかにゃぁ~、それはよかったにゃ~。」
とか言いながら同じ唐揚げを取ろうとする2人。
「あはははははは。」
「にゃははははははは。」
とりあえず、皆がそこそこ飲んで食ってしてからの話。
「そう言えば、さっきリズが冒険者カードを嬉しそうに見てたけど、こいつのステータスってどれくらいなんだ。」
「それは他の方と比べて、っといったところかにゃ。」
「そう、平均と比べて、ってこと。」
マッスルの質問にミャンマーはふと考えて、
「まぁ、冒険者の特徴は千差万別。ですが、自分がどの程度かを把握しておくのは危機管理には必要ですにゃ。」
「てか、酒が入ってから普通に語尾が~にゃ、になってるな。」
「ギルドの仕事中は真面目にって、上司から語尾をにゃおすように言われてるにゃ。」
「それってパワハラじゃないですか。」
異世界でパワハラという言葉を聞いてマッスルが驚く。
「ワタシも実際はめんどいにゃ、でも受付が方言とか使うのは混乱の元、と言われたらにゃっ得しちゃったにゃ。でも、マッスルさんたちにゃらもう気兼ねする必要はにゃいですし、プライベートまで我慢はしにゃいにゃ。」
そう言って「かんぱいにゃ~。」とジョッキを煽るミャンマー。
マッスルとリズも付き合ってジョッキを煽る。
「ぷっっっっは~~~~~~~。で、ステータスの話だにゃ。まずはリズのステータスを見せるにゃ。」
「はい。」
若干絡み酒のテンションでミャンマーに言われたリズが冒険者カードを取り出す。そして、さっきも見たホログラムディスプレイの様な画面を映し出す。
「ふむふむ、まずは順を追って説明するにゃ。」
唐揚げを一つまみ。
「まずはHPにゃ。780、これは初心者としてはそこそこいいところだにゃ。」
「HPて普通はどれくらいなんだ。」
「防具無しの常人にゃら物理防御は20ってところにゃ。その人が頭を金づちでぶん殴られると500ほどのダメージになるにゃよ。」
「つまりリズは金づちでぶん殴っても死なない、ってことか。」
「ちょっと試さないでくださいよ。」
「だからと言って、防具の無いところに攻撃したらクリティカルが発生することがあるから、油断は禁物にゃ。」
ジョッキからお酒をグビリと。
「そんでMPだがにゃ、これはすごいにゃ。魔法適性がない人は0とかあるし、職業を魔法使いにする人でも100ちょっとにゃ。」
「つまりリズは魔法使い向きだってことか。」
ビールとはちょっと違う甘みのあるお酒を飲みながらマッスルが訪ねる。
「でも物理攻撃も物理防御も78と69で高めにゃ。戦士系としても間違いはにゃいから、クラスの魔法剣士を伸ばしていくべきだにゃ。」
「枝豆とお酒追加にゃ~。」と注文をするミャンマーに、ちびちびとお酒を飲んでたリズが質問する。
「でしたら、魔法攻撃と魔法防御は高い方なのですか。」
「魔法攻撃は魔法使い用の装備無しで52とか逸材にゃ。しかし、防御に関しては普通ってところにゃ。魔法は防ぐより避けるほうがいいと思うにゃ。」
そこに枝豆が来たので3人でハムハムする。
「でも、素早さ34は普通レベルにゃ。あと運が9とか不幸すぎるにゃ。」
「―――不幸すぎる。」
ミャンマーのコメントに枝豆を咥えたまま落ち込むリズ。それを見てちょっと可愛いなぁ、と思うマッスル。
「まぁ、それだから立ち回りは大事にゃ。リズさんは攻撃に寄っているから突出しがちになりやすいにゃ。でも、そこが弱点ににゃるから慎重に行動して、仲間と足並みをそろえるべきだにゃ。」
「――――だってさ。」
「五月蠅い。」
マッスルは先日のゴブリンの巣穴に1人で突撃してピンチになっていたリズを指してそう言ったが、不幸すぎるとか言われたり、弱点を言い当てられたりしてへこんでいたリズにすげなく返される。
注)
作中で16歳のリズがお酒を飲んでいますが、これは異世界だから許されることです。
現実の日本ではお酒は二十歳になってから。
飲まない・飲ませない、を守っていきましょう。
5、
「ところで~、マッスルさんのステータスは~どうなってるのですか~。」
やけ酒か何かなのか一気にお酒を煽ったリズがマッスルに絡んでくる。
「お前、一気飲みは危ないから気を付けろ。」
「それで~、どうなんですか~。」
「いや、俺はまだ見てないんだが。」
「はぁ~、余裕ですか。ヨユウですネ。」
「お前ちょっとウザいぞ。」
コイツにはあまり酒を飲ませないようにしようと思うマッスル。そこにミャンマーから話があった。
「マッスルさん、自分のステータスは確認しといたほうがいいですにゃ。」
と、真面目な顔で言われてしまった。
そう言われては見ないでほっとくというわけにもいかないので、マッスルが股間から冒険者カードを取り出す。
「どこにしまってるにゃ。まって!待つにゃ。テーブルの上にはおかにゃいで。」
もっともな言い分だった。
仕方ないのでマッスルが手に持ったままさっきの画面を映す。
―――――
名前:マッスル
種族:裸族
性別:♂
年齢:0歳
職業:勇者
クラス:ストリートキング
Lv:1
ランク:F
―――――
そしてステータス画面を開くと―――――
「…………これは予想外にゃ。」
「……………………………………………………」
目をごしごし擦っていたリズが「すみませ~ん。お水下さい。」と言って、もらったお水を一気飲みして酔いを飛ばしてから、あらためてステータス画面をのぞき込む。
「…………………………マジ。」
そのステータス画面に映し出されていたのが―――
―――――
HP:1000 MP:78
物理攻撃力:53 魔法攻撃力:43
物理防御:58 魔法防御:21
素早さ:63 運:72
―――――
予想以上に低かったのである。
「えっ、なんで。こんなステータスであんなに強いわけないでしょ。むしろ私より弱いじゃないですか。」
リズが信じられないとばかりに叫ぶ。
酒場に居たヤツがチラリとそっちを見て、全裸に二度見をする。
しかし、もはや絡んでくる奴はいない。
全裸の勇者の噂はすでに街に広がっているのだ。
それよりも問題は勇者のステータスである。
実は装備無しの初心者冒険者よりかわ高いのであるが、それでも装備アリならリズより低いところがあるほどだ。
これで並み居るモンスターに群がられても傷一つ付かないで、逆に返り討ちに出来る理由が分からない。
「…………もしかしたらアビリティーが特殊にゃのかも。」
「アビリティーですか。」
リズがミャンマーのつぶやきに反応する。
「そうにゃ、アビリティーはスキルと違って使う技、では無くて、特定の条件や環境に対して働く能力のこにゃ。」
「それって冒険者カードで見られるんですか。」
「見れるにゃよ。」
さっそくマッスルの冒険者カードのアビリティーを見ることにした。」
―――――
アビリティー
神の加護:A 全裸の誇り:A 肉体美:B 受けの美学:E 攻めの素質:B 格闘技能:C
―――――
だった。
「とりあえずそれっぽいのは神の加護と全裸の誇りですね。」
「詳細を見てみるにゃ。」
―――――
神の加護:A
神より与えられし力。全裸の美学と合わさることでいくつもの効果をもたらす。「神の見えざる手。」「神の蔵。」「肉体付与」が今の能力である。
―――――
全裸の誇り:A
神に認められし全裸にのみ備わる能力。神の加護との相性でステータスに大幅な補正が掛かる。
レベル1ではHP20%、MP20%、物理攻撃50%、魔法攻撃50%、物理防御20%、物理防御20%アップ。現段階では素早さと運の補正はない。
注)神の加護が高いものに対してはこの効果が無くなることがある。
―――――
「なるほど、全裸の誇りってのがステータスアップさせているのか。」
「でもこれだけだとこうはにゃらにゃいにゃ。」
「それよりいいか、このAとかBってなんだ。」
「それはランクにゃ。FからあってSSまであるにゃよ。ランクが高いほど効果が高くにゃるにゃ。」
「育てたりはできるのか?」
「できるにゃよ。けど厳しい修業が必要だったりするにゃよ。けど、上位アビリティーや複合アビリティーに進化することもあって、すごい能力を持っている人もいるにゃ。」
「なるほど、それよりこの「受けの美学:E」だが―――
―――――
受けの美学:E
攻撃を受ける際、物理・魔法共に防御力が30上昇。
その際、敵の攻撃力が防御より低かった場合はダメージを無効にする。
―――――
「それにゃ~。それがあるからどんな攻撃でもぴんぴんしてられたんにゃ。」
「じゃあ、こっちの「攻めの素質」ってなんでしょう。」
―――――
攻めの素質:B
攻撃の際攻撃力に30%の補正が掛かる。また、運がいいとクリティカルの発生率が上がり、クリティカル時には100%のダメージが加算される。
―――――
「一個一個はともかく地味に聞いてくる感じにゃ。」
「でもこれって、ここら辺の弱いもんスターだから無傷で済むけど、別に無敵ってわけでは無いんですね。」
「そうだにゃぁ~。がっかりしたかいマッスル。」
「いや、俺は最初っからチートスキルを持つよりじっくりと育てる派だからむしろ嬉しいぞ。」
「いや、今でも十分反則でしょう。」
6、
それから改めてリズのアビリティーもチェックすることとなった。
―――――
アビリティー
盾の心得:D 剣の心得:C 初級魔法:C 神聖魔法:B 不幸体質:A+
―――――
「不幸体質:A+ってなによそれ~~~~。」
リズは自分のアビリティーを見てショックで泣き臥せってしまった。
「えぇ~、にゃににゃに、「不幸体質:A+」ってのはどうやら強敵や珍種の魔物に襲われやすいスキルってところらしいにゃ。」
「そんなアビリティーなんかいらない~~~~~~~。」
「でもでもにゃ、プラスが付いていることで強敵よりも珍種が寄ってきやすいって書いてあるにゃ。」
「レアモンスターホイホイか。これならパーティーに1人はほしいところだぞ。」
「だにゃだにゃ。周りがしっかりしてれば絶対欲しいアビリティーにゃよ。」
「でもワタシ運も9ですよ。絶対ひどい目に合う気がするんです。」
「そんなことないにゃ。」
と、ミャンマーがリズを慰めている間、マッスルはというと、旅に出た初日にレアモンスターのマッド・ブッシュの変異種に絡まれ、大股開きにされたうえに白濁液まみれにされていたなぁ、と思っていた。
「―――マッスルさん、今あの時のことを思い出していたでしょう。」
「いや、――――まぁ、うん。」
「そしてどうせこの先も同じような目に合うんだろう。とか思っているんですよね。」
「そこまでは思ってないぞ。」
「うわああああああぁっぁぁぁぁぁぁぁぁん。」
泣き崩れてやけ酒を煽るリズにさてどうしたものか、と思案をする残された二人。
そこに、
「あれ、リズさんじゃありませんか。」
全裸が居て誰も近づこうとしないテーブルに堂々と寄っていく男が1人いた。
「う~、あなたは~?」
「エリックですよ。この街で門番の衛兵をしていた。今朝あったばかりじゃないですか。」
「あ、ああ~、あのマッスルに言いくるめられてた可哀そうな人。」
「うっ、いえ、むしろ可哀想なのは貴方ですよ。このような全裸に連れまわされて。」
「おい。」
「ならばこのエリックに御相談あれ。このエリックお任せあればどんな悩みも解決して見せましょう。例えば全裸に弱みを握られてても、わたしならあなたを解放してあげられます。」
「ねぇ、何にゃのにゃ、このキザったらしい変態は。やたらと貴方をディスってるけど。」
「いや、この街に入る時にひと悶着あって、で、ギルドまで案内を頼んだ。」
「あっ、それは怨まれてもしゃぁにゃいにゃ。」
「おい、俺は暴力は使ってないぞ。ただ、服を着て生まれてくる奴がいるのかって、服を着てないのが人として正しい姿なのだと。服を着て生まれてくるのはモンスターぐらいだと説いただけだ。」
「十分だと思うにゃぁ。」
「ところで~、エリックさんは何でここに。」
「仕事が終わったので宿に戻ってきたのです。」
「エリックさんは宿に泊まってるんですか~。」
「はい、自分はこれでも冒険者ですので。」
それを聞いたミャンマーが納得いったという感じにうなずいた。
「多分コイツこの街で借金こさえたにゃ。それで逃げ出さないように街で働かされているだにゃ。」
「なる程な、この様子だとナンパとか風俗に貢ぎ過ぎたんだな。」
「ちょっとそこの全裸君、人聞きの悪いこと言わないでくれるかな。」
「都合の悪いこと言われた時だけ反応するのやめた方がいいぞ。ハッキリ言って小物っぽい。」
「こ…小物、――――いやだなぁ、僕みたいな大物に対して小物だなんて。僕はただ困っている女性を助けていただけですよ。そしたらなぜか借金が増えてしまっていただけです。」
「――――カモだな。」
「――――カモですにゃ。」
「すみませーん。鴨葱追加でお願いしま~す。」
………………
「それで、その大物さんが何の用ですかな。」
「いやだなぁ、アナタに大物とか言われると恥ずかしいじゃないですか。」
「?」
「知りません。アナタは今や街の有名人なんですよ。一糸まとわぬ伝説の「勇者」が現れたってね。」
「……それってローカル信仰なんじゃなかったっけ。」
マッスルが隣のミャンマーに確認すると。
「ローカルではあったんですけどにゃ。しかし現物が出てくるとみんな期待しちゃうんですよ。」
そう言えば、何故かマッスルだけ実技試験が免除されたりしていたが、アレは贔屓だったのだろうか。
「どんな気分ですか。「勇者」として皆にちやほやされる気分は。リズさんの様な可愛い子を連れているにもかかわらず、ギルドのアイドルたるミャンマーさんにまで接待してもらって、いやはやうらやま――――――
ぶちりっ!
何かが切れる音がした。
途端に酒場に居た連中が急いで物陰に隠れて行ったのはなぜか。
理由はすぐにわかった。
「おい、こらてぇ、にゃまいってんじゃにゃいぞ。」
真っ黒い、いやどす黒いといってもいいオーラを放ったミャンマーが立ち上がりエリックの胸ぐらをつかんで吊り上げる。
掴んでいるのは服の襟だがエリックは完全につま先立ちになっていた。
「おう、ワタシがマッスルさんに接待してるとか、よくそんな口から出まかせが出るにゃぁ、オイ。」
「――――――――――――――――――」
「あっ、なに口パクパクさせとんにゃ。まだなんか言いたいんかにゃ。」
そんな豹変したミャンマーの前で、マッスルとリズはといえば。
「すみませーん、鴨葱まだっすか。」
「あとジョッキ2つ追加で。」
普通に席について注文していた。
『なんでお前らは平然としてられるんだよ。』と、他の客の声にならないツッコミを受けてた。
とりあえず怒れるミャンマーは放置して、宿を決めたマッスルとリズは明日からの予定を決めることにした。
「それで明日からどうするんだ。」
「マッスルさんはこれから魔王退治に向かうんですよね。」
「それが使命なものもあるが、魔王の情報が少ないのが問題だ。どこへ行けばいいのかさえ分からない。」
「そかー、確かに魔王軍って聞きますけど、いろんな場所に現れるからどこに魔王が居るか分かってないんですよね。」
「それにレベルが低いままってのもゲーマーとしてはほっとけないしな。」
「じゃぁ、ワタシと一緒にレベル上げしませんか。」
「そっちが良ければ喜んで。こっちから言い出したかったが全裸は嫌かと思ってな。」
「もう大体慣れましたよ。」
「じゃ、明日からは一緒にクエストをこなしていこうぜ。」
「はい。」
と、そこにミャンマーが戻って来た。
「どこ行ってたんだ。」
「ちょっとそこの路地裏にゃ。ソレより何の話をしてたのですかにゃ。」
「明日からの話ですよ。この街を中心にクエストをこなしてレベル上げをしようかって話してました。」
「いいですにゃぁ、それなら街の中を一度周ったほうがいいんじゃないですか。」
「お、それもいいな。」
「確かに良いですね。お店の場所とか把握しておきたいですし。」
「じゃぁ、明日は観光としゃれこもうか。」
「決定です。」
「それでお2人にお願いがあるんですけど。」
「どうした。こっちもたくさん世話になったし、出来ることなら善処させてもらうぞ。」
「そうです遠慮なくいってください。一緒に冒険した仲なんですから。」
「実はその冒険の件ででして――――
7、
マッスルたちがグリーンの街に来て二日目の朝。
2人はミャンマーの紹介でモーニングが美味しい喫茶店に来ていた。
「ここのBLTサンドが絶品にゃんですよ。」
注文したものが出てくるまでにもミャンマーはテンション高くはしゃいでいる。
というのも―――
昨晩のことである。
マックス達が今後の方針を決めたところでミャンマーからお願いされたのが―――
「実は冒険の件ででして――――、ワタシやはり冒険者として旅がしたいのですにゃ。ですのから2人のにゃかまに入れてほしいんですけど――――――ダメですかにゃ。」
というものだった。
それを2人は、
「もちろんいいぞ。」
「むしろこっちこそお願いしたいところですよ。」
「だな。こっちは初心者しかいないんだ。ベテランが付いて来てくれるのは頼もしい。」
と、心から歓迎したのだった。
それが嬉しかったのか、ミャンマーは朝から大層機嫌が良かった。お尻から見える尻尾もルンルンだった。
「ホントは街の案内もしたかったのですにゃが、ギルドでの手続きがありまして、同行できなくてすみませんにゃ。」
「いいよ、仕事なんだし仕方がない。」
「それに、この街は大きいから一日じゃ見て回り切れませんから、後日おススメなどを紹介してください。」
その言葉でしゅんっとしていた尻尾もピンッと立ったのであった。
そうこうしているうちに注文していたものが届けられた。
3人がミャンマーのおすすめのBLTサンドを、マッスルがそれに加えてベーコンエッグを頼んでいた。
飲み物は3人ともコーヒーだったがブラックで飲んだのはマッスル1人で、残り二人は砂糖とミルクをたくさん入れていた。
「おっ、美味いなこれ。」
「そうでしょう。にゃんでも自家製のパンとマスタードソースらしいですにゃ。」
「ソースは分かりますがパンもこちらで焼いているのですか。」
「にゃんでもこの店の裏に弟さんがやっているパン屋があるらしいですにゃ。」
「それは自家製と言っていいのだろうか。」
「家族が作ってるんですしいいと思いますよ。」
2人は美味しい朝食に舌鼓を打ちつつ、最初の目的地を決める。
「最初はやっぱ武器屋や防具やを見ておきたいかな。」
「マッスルさんには武器はともかく防具は必要ないでしょう。」
「そんなことはないぞ。これを見てみろ。」
マッスルが冒険者カードを取り出し画面を付けると、
―――――
肉体付与
―――――
と映し出された。
「コレは?」
「こいつはな、神の加護の能力のひとつで、全裸のままで防具が装備できるアビリティーなんだよ。」
―――――
肉体付与
これは肉体の美しさを装備品で損なわないためのものである。これにより防具を体の外に装備するのでなく、筋肉の中に取り込むことができるようになる。
―――――
「これはつまり、文字通り肉体を鋼の鎧と化す能力と言ってもいい。」
「ははは、なるほど。だからこん棒で頭を殴られた時「かーん。」っていい音が鳴ったんですね。」
「ははは、叩くなよ。それに今は何も入ってないぞ。」
「はははははははははははははははははははははははは!」
それは二重の意味で面白くリズのツボに入って、大笑いさせた。
そうして3人が食べ終わった頃、
「ごめんにゃ、これからギルドに行かにゃきゃ。」
「ああ、がんばって来てくれ。」
「ミャンマーさん、また後で。」
「…ところでお2人はお金いくらぐらい持ってますか。」
ギルド職員モードの入ったミャンマーから聞かれたのは所持金のことだった。
「2人合わせて8000ギャラってところだが。」
「気を付けてください。それって半月分の日当に当たります。グリーンの街は治安がいい方ですがスリがいないわけでは無いので。」
「まぁ、気を付けますが、……この人からナニかをスロうとするやつはいないでしょう。」
そう言って横目で見るのは全裸のマッスル。
すべてが股間に収納されている以上、股間をまさぐらなければお金をスレはしない。
そして、そんなスリが居るかといえば――――まずいないだろう。
「それでは行ってきまーす。」
「「いってらしゃーい。」」
ミャンマーを見送った後、2人は武具店を探して石畳のメインストーリートをぶらついた。
途中アクセサリー屋さんやスイーツのお店なんかがあったが、2人は冷やかすだけで立ち去ってしまう。
店主としては困りものだろうが、全裸が去った後から客足が伸びるので意外と文句をいうところは少ない。
そうしてぶらりぶらりとしていると。
「あっ、ここが武具屋街じゃないですか。」
メインストリートの中ほどから脇にそれた道だった。
リズが言う通り武具を扱っているような厳つい店構えがそろっている。そして奥からは金づちを打つ音が聞こえてくる。
「へー、ゲームと違っていろんな店が集まってるんだな。」
「?マッスルの言うゲームってどんなのですか。」
「あぁ、俺の世界にはこんな風に冒険を疑似体験できる道具があったんだよ。それだと武器やなんかは街に1つだったりするんだよ。」
「ははは、それだとお店も休めませんしすぐ品切れしちゃいますよ。それに競争相手が居るからより良い物が作られるんです。」
そう言われてマッスルはなるほどと思った。
実際ゲームだと街の武具やの品ぞろえはいつも一緒で代り映えしなかった。
独占禁止法を考えれば、一か所が独占したら値段も跳ね上がるだろう。
ここはゲームじゃない。人が生き、生活している現実なんだ。と、実感を持てた。
「で、どこの店に入る。」
「うーん、こういうのは目的の装備に合わせて店選びをするものなんですけど。」
「じゃぁ、まずはリズの装備を見て行こう。」
「いいんですか。」
「俺はまだここらへんじゃ余裕もあるし、リズは戦闘スタイルと装備がちぐはぐな感じがするんだよな。」
「む、これはお父さんからのおさがりなんですよ。」
「ならば大切にしまっておけ。これからは命を懸けたプロの冒険者だ。装備に妥協はするな。」
「うーむ、分かりました。でも、そう言うならマッスルさんが見繕ってくださいよ。」
「分かった分かった。」
この2人、はたから見れば恋人に見えただろう。―――――片割れが全裸でなければ。
「どうだ振ってみて。」
「うーん、今までと比べてちょっと物足りない感じですね。」
2人は今剣を品定めしている。
リズは今まで使っていたロングソードより短い剣を振ってみていた。
「今までのが重すぎたんだ。振って姿勢が崩れないぐらいがちょうどいい。ん?おい、これを試してみろよ。」
「これって在庫の投げ売り品じゃないですか。」
「武器は値段より相性だ。それにオレの見立てだとそいつはたぶん掘り出し物だぞ。」
「まぁ、確かに鞘もこしらえもワタシ好みの渋い意匠ですが。―――おおう、何ですかこの刃、まるで木刀のようじゃないですか。」
「当たりだな。ちょっと振ってみろよ。」
「えい、お?おぉう、すっごく手になじむ。」
「ちょっと見せてみろ。」
「はい。」
「…………うん、間違いないな。おい店主。コイツ買うぜ。」
「はぁ、そりゃウチのバカ弟子が材料費けっちた失敗作じゃねえか。」
「でも店に並んでんだから売りもんだろ。」
「どうせバカ弟子が勝手に混ぜたんだろ。やめとけ、そんながらくた。」
「いいや、コレが欲しい。」
「はぁ、分かったよ。100…じゃひどいな、80ギャラで売ってやる。けどウチで買ったなんて言いふらすなよ。」
「分かったよ。」
「まいどあり。」
マッスルたちは店を出て少し歩いて他の店を覗こうとするけど、
「―――マッスルさん、さっきからすっごいニヤケてますが、気持ち悪いですよ。」
「あぁ、スマンスマン。あんまりにもいい掘り出し物だったからつい浮かれちまってな。くっくっく、笑いが止まらん。」
「そんなにすごい武器なんすか。」
「それは実戦でのお楽しみってことで。」
その後もいくつかの武具屋を回り、リズの防具を見繕っていく。
「なぁ、どうしてもへそは出さないといけないのか。」
「もちろんです。ここはワタシのチャームポイントですよ。」
「確かに良い感じで引き締まってるよな。」
「あと、くびれの部分に何かあると動きずらいというか。」
「あぁ、お前はケモノみたいに前傾姿勢になるもんな。それなら腹の装甲は邪魔か。」
という訳で、上半身でも胸から上と肩回りの鎧を購入する。
そして同じ理由で腰回りも装甲は無しで、足回りを阻害しない程度の防具を見繕った。
「盾は今よりいいのはあんまなかったし、使い慣れてるやつでいいだろう。―――意外と安くついたな。」
「それじゃあ次はマッスルさんの―――――
「まて。」
街を歩く2人の前に白いフードで姿を隠した3人の怪しい人物たちが近づいて来た。
そのうちの一人が聞いて来た。
「お前が全裸の勇者で間違いないな。」
ちなみに全裸のマッスルの方が怪しかったりする。
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