第17話 王都へ

「…で、何か収穫は?」

「わり☆何も無かったわ」

「ミライちゃんもう一回杖貸してコイツ消し炭にするから」

「悪かった悪かったから!!あとミライもミライで嬉しそうな顔すんな!!」


しかしわざわざ魔法鞄を買ってまでダンジョンに行ったのに収穫0というのはまずい。そろそろ本気で資金が尽きてきた。


「っていうかここおかしくないか?魔力濃度も他よりちょっと濃い程度だし。普通ダンジョンの最奥って、もっとこう魔結晶とか生えてるもんだろ。」

「ええ、ですからあなたの収穫に期待したのですが…全く…」


「(魔力は自然的に拡散するためこういう閉所は必ず魔力が溜まるはず…なのに何故普通の岩からも魔力を感じない?まるで何かに吸い上げられたような…


ま、気のせいでしょう。しばらくしたらどうせ元通りになりますって。)」


で。問題のこの場所だ

「やっぱりいるよな…」

扉から顔を出すと、わしゃわしゃと大量のケイヴスパイダーが待ち構えてきた。

今回は聖水も無い。突破は無理だろう


「どうする?強行突破は無理だぞ?」

「ぶっこわしちゃおう!!」

「おいおい、生き埋めにする気か?」

「…それ、いいですね」

「は?」


ラフェル曰く、どうやらここは山の麓らしい。つまり、場所さえ良ければそのまま外に出られる可能性があるわけだ。

当然、外れれば死あるのみなんだが…

「…そうだ!!」

ミライが手を叩く

「おじいちゃん、起きてるでしょ?」

『おぉ~ミライ、どうした?何か困ったことでもあったか?』


あー…そういえばこのジジイ使い魔飛ばしてるんだったな…

会話等は双方の魔力によって成立するらしいから普段は見ることしかできないらしいが。


「今の私達の場所と、どの方角が一番地上に近いか教えてほしいの。」

『よしわかった!!じいちゃんにまかせなさい!!


…フム、エレリス大空洞とな。全くあの坊主め、ミライをそんな危険な所に連れて来よってからに…ブツブツブツ』

「おじいちゃぁぁん、まだぁー?」

話がそれたのでねっとりボイスで呼び戻す。意外と扱いには慣れているのかもしれない

『おぉ、スマンスマン。そこから近いのは北じゃな。ちょうどメガミ様が向いている方角じゃ。』

「うん、わかった!ありがとうおじいちゃん!!」

『お安い御用じゃ、また何かあったら頼んでいいからの。』


「なるほど、こちらの方角ですか…

というわけでミライさん、魔力の流れの指向性は補強しますので、よろしくお願いします。」

「うん!!」


ラフェルの元に駆け寄り、示された方角に杖を向ける

そしてラフェルはミライの手首に手を当て、調律する


目を閉じ、瞑想状態に入る。

初めてミライが魔術を使ったときのように、空気が一転する


「我は祈願する 我は告げる I wish , I order.

その手に炎在り、その行く先に光あれ。The hand has flames, there will be irradiated.

我は告げる ここに障害を打ち払わん!! I ordered, Nothing to obstacle closes our ways!!」

六小節の呪文を詠唱する。


魔術の呪文は発動したい効果によってその場その場で変わってくる。

通常の魔術師同士の戦いでは手数を増やすよりも、切り札を伸ばした方が強いが、冒険者という観点からすると、様々な状況の対応力が求められるため、その状況に応じた言葉を選ぶ必要がある。


杖から熱線が発射される

しかし魔力のコントロールが苦手なミライではすぐに線が乱れてしまうが、ラフェルのサポートで指向性を定めて何とか神秘を保つ


「いっけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」


魔力を全て出し切った一撃は、地表を貫通し晴天に溶け込んでいった。

しかし、問題はまだ残っている

放ったのは「熱線」、即ち


「なぁ…これ冷えるのにどれだけかかる…?」

「さぁ…半日くらいじゃないですかね…」

「詰んだ…」


だが、天は颯馬達を見捨ててはいなかった。

そう、先程ミライは誰と話していたか

かの「賢者」カルネス・エイゼルではなかったか


「<ダイアモンドダスト>!」

穴の上から突然冷気が差し込み、溶けた岩が一瞬にして冷却される


「この威力は…」

「おじぃちゃん!!」



「ほっほっほ~、心配だったんでな、ついきちゃったわい☆」

「カルネスさん!!ありがとうございます!!」

「かわいい孫とメガミ様の為ならお安い御用ですわい」

「可愛いだなんてそんな(テレテレ」

「いや、多分可愛いのはミライに対してだけでお前には言ってないとおm痛たたたたた!!!

ほっぺた、ほっぺたつねるな!!」


というわけで無事カルネスに引っ張ってもらった。娑婆の空気は美味いぜ

そしてアーリアの事について話すのだが…

「そうか…明登の奴、子供を置いて行くとはけしからん奴め…

………結局あやつは戻ってこなかったのか…けしからん…」

「カルネスさんにも何も連絡が無いと…一体彼はどこへ…


とりあえずお腹がすきました。ご飯を所望します」

「相変わらずじゃの…ほれ、そういうと思ってちょっと売店で買ってきたわい」

そう言ってサンドイッチを人数分差し出してくれた。

いつもの携帯食を買う店の品だ。王都の店にも負けないと定番の店の

いつも早くに売り切れてしまうため大変だっただろう。


―――

何とか村に戻って来れた。

そろそろこの風景にも慣れてきたな…

「疲れたぁ~…ところで、私達ってまた金欠なんですよね…」

「誰かさんのせいでな。とりあえずまたクエストを受けるか…」

今度は☆の高い定期探索でも受けようか…と思った時


『「Foreigner」のカード保有者に告げます。今すぐ王都に来なさい。

繰り返します、今すぐ王都に来なさい。』


「!!!」

頭の中で声がこだまし、立ち止まる

「?? どうしました?急に立ち止まって」

「あー…いや、何でもない。」

「Foreigner」のカードって、俺が拾ったあのカードの事だよな…

まぁいいか、とりあえず今は金が先決。ギルドへ急ごう


『来いっつってんだろうが無視すんなよゴラァ!!!!』


…ギルドへ急ごう。


『ねぇちょっと何で無視するの!?我王だよ!?南大陸を統べる長生きの王様だよ!!?

お金あげるからいう事聞いて!!お願い!!』


…よし、王都へ行くか。

「そうだ、もういっそのこと王都で稼がない?」

「「「…」」」

「え?」

「突然何を言い出すかと思ったら…正気ですか?王都の冒険者は最低でもレベル20はありますよ。

それに比べて私達ってまだ15にすら届いてないじゃないですか。ステータスの差で普通に死にますって。」

「でも今より稼げるじゃん」


「私は…あまり王都に行きたくないですね、やっぱりまだレベルを上げた方が…」

「大丈夫大丈夫!!多分何とかなるって!!」


「私まだレベル6なんだけど…ひえええん…」

「………(汗)

と、とりあえず王都に付けばもっといろいろな事が学べる…と思うぞ!」


「はい論破!!いいからついてこい!!長寿の王様が俺を待っているーーー!!!」



「レガスさん、あなた颯馬の食事に毒でも盛りました?」

「ひぇっ!?何で私!?」

「颯馬お兄ちゃんなんかおかしいよね…」


「(王様…しかも長寿と来ましたか。間違いなく彼でしょうが、なぜ颯馬が彼を知っている…?

ダンジョンから帰ってきてから…ううん、気づいていないだけでその前から何かがおかしかったのかもしれない。例えば、サンドイッチを食べている最中もそわそわしていたような…)」


「颯馬、あなた私達に隠し事してませんか?」

「し!?ししししてないよよよよ!??」

「嘘おっしゃい!!滅茶苦茶動揺してるじゃないですか!!」

「うるさいいいから王都に行くぞー!!!」

――――――――――――

「とりあえずこのカードを通じて念話をしてみたが…なるほど、中々に便利なものだな。このカードは。

しかしまさかメガミの連れてきた者があそこまで常識知らずとは…いや、「Foreigner」ならば当然か。寧ろ我々の常識に当てはめるのがおかしいのかもしれない。


いや、明登ですら究極のSでありMだったがまだ常識があったからやっぱあいつおかしいわ。」


「陛下、「十二の羽」の整備が整いました。」

「ご苦労、技術班には休息を摂れと伝えておけ。ついでに給料も上乗せだ。」

「ハッ!!」


「よし、これでピースはそろった。十三年間かけて完全に解析した「十二の羽パラダイス・ロスト」、「Foreigner」の適正者。フフフ、堕ちたメガミに「賢者」の孫、そして王都でも10人といない「魔眼」の持ち主か…どうやら彼は、非常に面白い因果の元に生まれたようだ。そして、最後の一人は…」


「裁定者」のカードの力で最後のカード適正者の場所を調べ、微笑が止まる。

「…いや、まさかな、まさかここまで計算通りだったのか?これは想定外だ、まさかそんなところにいたのか…」


「まさか自力で冥界まで行っていたとは、通りでどこを見ても居ないわけだ。つくづく面白い男だよ、仰木明登。」

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