お勉強会
「だってちょうど魔術に関する話題が出たじゃないですか、」
「嫌だ嫌だ!!だってお前の話長いんだもん!!」
「カルネスさんとりあえずコイツ縛っといてください」
メガネを掛ける仕草をするラフェル。
「(クイッ) 魔術と言っても、二パターン存在します。元を辿れば同じですが、過程が結構違うので別のものとしておきます。
まず一つ目、私が使う魔術ですが、これらは決められた手順、決められた言葉を用いて主に颯馬の世界の宗教や神話の効果を再現するといったものです。これは己の意識、自分だけの世界、「
外の常識を小宇宙に投影するため外面魔術と呼んでいます。今考え付きました。
欠点として小宇宙の常識、つまり自分の常識を否定されると、魔術の効果が消滅します。これは普通の人間にも当てはまることですね。
実際は小宇宙だの大宇宙だのの話はかなりややこしいのですが、あくまで「そういうもの」として認識してもらえると助かります。
あと、どちらの魔術にも言えることですが、魔術は世界の在り方を「歪める」行為なので、位相のズレ、もとい運命線のズレが起こります。この世界は位相のズレは呪いのアイテムなんかで代用できる為そこまで影響はないですが、颯馬の世界では颯馬や前勇者の明登さんのような犠牲者が出てきます。ついでに言えば外面魔術の方が異なるルールを落とし込んでいるので、位相のズレが大きいです。」
「おーいレガス、寝るなよ~」
「ひぅっ!? ね、寝てませんよ!?」
「(絶対寝てたな)」
口を塞がれなかったのは幸いだったが、早くほどいてほしい。足と手首がそろそろ痛くなってきた。
「そして二つ目、ミライさんが使う魔術です。これは小宇宙を再現するという点は変わりませんが、その効果は各々の小宇宙に依存します。分かりやすく言うと、前者は誰が使っても効果は同じなのに対し、後者は同じ効果を出そうとすると、個人個人でその方法が異なるということです。
詠唱も効果を具体的に示すものではなく、あくまで自分が発言することで意識を高ぶらせ、小宇宙を自分の色で染め上げる、そうして詠唱を終え高ぶりが最高潮に達すると、世界の定めたルールである「魔術基盤」にのっとり魔力を通じて現実を歪め、奇跡を起こす、といったものです。
他にも小宇宙だけでなく外面魔術のように外の常識を用いることができますが、外面魔術と比べてこの世界での再現は星の位置なども微妙に違う上霊装の入手も困難なので、ほとんどはミライさんのようなここで材料を揃えられるものになります。
ちなみに
なお魔力の精製、循環、基盤へのアクセスに「魔術回路」と呼ばれる特別な器官が必要になります。これは生まれたときに持ちうる本数が決まっていて、子孫に引き継がせることで代を重ねる毎に回路の本数が増えていき、立派な魔術師になるわけです。
ただし、こちらは誰もが持っているというわけではなく、基本的に魔術師の家系しか持ちえないので、必然的に魔術師の人間は徐々に減少しており、急激な後退はありますがその逆はありません。
全員が必ず持っている「魔力回路」とは別物なので気を付けてください。
外面の対義語として内面魔術と呼んでます。というか今名付けました。
大きな違いとして、外面魔術はアウトサイドイン、すなわち外の常識を受け入れるだけなので、正しい知識さえあれば文字通り誰でも、颯馬でもレガスさんでも受付嬢さんでも使えます。
しかし内面魔術はインサイドアウト、おまけに魔術基盤に従わなきゃいけないので出力にも限りがあります。ただこの世界のように大気に魔力が満ちている状態では、燃料は大量にあるので颯馬の世界とは比べ物にならない火力が出せます。
最後に、この魔術の派生形としてアーティファクトが存在します。どちらかと言えば魔導具に近い存在ですが、その殆どが構造の解明が成されてなく一つ一つが神秘の塊です。」
「先生、一ついいですか。」
「どうしました?質問ならどんとこいですよ?」
「長い」です」
俺とレガスが揃えて言う
魔法について研究している二人や、講師のラフェルは興味津々かもしれないが、前衛の俺とレガスは実際殆ど興味が無い。
かれこれ一時間、ついでに俺は手足を縛られたまま話を聞かされているのだ。そろそろ精神がおかしくなってきた気がする。
「とりあえず解いてくれ…そろそろ手足の感覚がなくなってきた…」
「そういえば前から不思議に思ってたんだけどさ、「スキル」と「魔法」と「魔術」ってどう違うんだ?ややこしすぎないか?あとお前使ってない内面魔術とやらにやけに詳しいな」
「魔法と魔術の違いは前(二話)にちょこっと説明したじゃないですか…一応一通り調べて実践してみたので、説明くらいはできますよ。」
「ワシは知らんぞー!!」「わ、わたしもー!」
「あなたたちは半年くらい研究すればわかるでしょうに!!
…はぁ、仕方ないですね。現状判明していることだけを簡潔にまとめますよ。
これらの区別はこの世界の成り立ちに関わっているという見解なので、あまり詳しいことは分かりません。今まで観測してきたいくつかの平行世界の中でも、外部からの干渉無しに世界そのものの法則を変えてしまう事例は今の所これが初めてで、他の世界と比べて区別がかなり難しいということを念頭に置いてください。
「スキル」と「魔法」はほぼ同じもので、そこに詠唱や職業などの条件が加わるかどうかというところでしょうか。冒険者カードによって習得されるもので、カードとの深い関連性があるのは分かっていますが、解明には至っていません。今のところはそういうものだと思っていてください。」
「レガス起こす必要ある?」
「ワシは明登からお前さんたちの世界についてそこそこ教えてもらったし、ミライもワシから明登の事を伝えておるから大丈夫じゃが、嬢ちゃんはお前さんの世界についてなんも知らん。普通の"この世界"の住人じゃ、下手に常識の範囲外の知識は与えん方がええじゃろう。」
「そうか…」
今更だがなぜ俺はこいつらと話ができるんだろう。文字だって、どう見ても日本語じゃないファンタジーな文字なのに頭が勝手に翻訳してくれる。
でも…なんというか、英語に近い感じ…?
「そしてこれらと「魔術」の違いですが、ぶっちゃけると内面魔術と外面魔術を足して2で割ったものです。
魔術基盤のようなものにアクセスするのは変わりませんが、詠唱と効果が決まっているからですね。実際は詠唱が精霊と契約を結ぶんでしたっけ?」
「そうじゃ。魔力を対価として元素の精霊と契約を交わし、超常現象を引き起こす。これが元素魔法……もとい属性魔法じゃ。それ以外は回復魔法等があるが、あちらはスキルに近い感じじゃのう。」
さすがは魔法のエキスパート。しかし眠いなぁ
「そして肝心のスキルなんですけど、前任者曰くそのシステムは当時から存在していた、つまり最低でも50年以上前から存在していたらしいんです。そうなるとスキル……いえ、冒険者システムそのものが誕生したのが100から200年ほど前だったのでしょう。
数少ない当時の手記などを集めて分かったのですが、その昔は現在ほど魔力が満ちていなく、魔法もスキルも存在しない世界だったそうです。その中で大量の魔力を受けて変異したり、魔力の濃い場所で生まれ先天的に魔力に対し耐性を持っているなどがあり、スキルのような特殊能力、例えば「
つまり、これらから察するに…」
「ぐ ご ぉ ぉ ぉ ぉ ぉ ぉ ぉ ぉ ぉ ぉ ぉ ぉ」
ラフェルの言葉を遮るように、颯馬のいびきが響き渡る。
すっかり気落ちしてしまったラフェルは、不敬者に天罰を下す
「はぁ、カルネスさん」
「せいりゃっ!!!」
カルネスが手刀を振り下ろす
恐ろしく速い手刀・・・
クリーンヒット!素手でレベル60相当の魔物をボコれる一撃は寧ろ頭蓋骨にヒビが入ってないことが運が良いと思えてくるレベルだった
「ぎゃあああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!」
「今日はここまでです、またお二人が揃うときにいろいろと説明させていただきます」
「あ、あくまたん…」
「私が化け物…?違う、私は悪魔だぁ」
「メガミじゃろ」
どうしてこの世界の人達は皆ノリがいいのか、コレガワカラナイ
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