第14話 少女の夢

―――「というわけなの…」


鋼蜘蛛との戦闘のあと、謝礼金を少し貰ってラフェル以外久々の御馳走にありつけた。

しかしメリハリは付けなければならない、楽しいムードの後は真面目ムードだ

部屋に鍵を掛け、各々もう部屋から出る用事が無いことを確認し、聴取をスタートした。


彼女…ミライの話によると、彼女の祖父は十三年前の勇者のお供兼魔法の師匠であり、彼の使っていた武器の技術は全てその人が教えたのだとか。腰痛が響いてきて、今は隠居中で一緒に暮らしているらしい。

お孫さん今軟禁状態だけど心配かけてないだろうか…バレたら殺されそうな気がする


そして彼女自身は山奥でひっそりと魔法の、主に魔導具に関する勉強をしていたが、薬草採取に出かけていたところ、二度にわたる謎の爆発により目を覚ましたゴブリン達に追われ、迷子になりながらそのまま逃げてきたわけだ。

二度にわたる…一回目は鋼蜘蛛の爆発だろ? もう一つは…あ、ローモス達がやったレールガンか。



「ふ~ん…十三年前の「賢者」の孫ねぇ~…」

「久々に彼の名前を聞きましたよ~、懐かしいですね~」

「ところでコイツの話に出てきたメガミはお前のことじゃないよな?お前の話も先輩とやらから聞いたんだろ?」

「ですよねラフェルさん?」

「え?違いますよ?れっきとした私ですよ?」


「え」

「嘘…ですよね…?なんか…全然違うんですけど…」

「な、何ですか二人とも…そんな驚いて…」

ギャップの差にレガスともども凍り付く。信じられねぇ、あのメガミがメガミしてる(?)なんて…


「ところで、お前ら二人とも敬語で分かりずらいんだが…いや、一応言葉使いで何となくわかるか。」

「それって遠回しに私の言葉使い汚いって言ってません?」

―――

「で、本題に入るぞ。まず何故お前は魔術とやらを使えるんだ? いったい誰からその技術を学んだ?」

「お、おじいちゃんからです、魔王を倒して明登お兄…勇者さんとも別れて家に来てくれる日が増えたので、その時に。」

「その時に…って、あなた私がどれだけ魔術を使えるようになるのに時間を掛けたかわかってるんですか?ひたすらworld:Cの記録を…モガッ」


すんでのところで颯馬に口を塞ぐ

「(お前がメガミであることはばれてもどうせ信用されないだろうからいいけどお前が管理者であることがばれたらまずいだろ!!)」

「ムググ!!ムームー!!(分かりました!分かりましたから離して~!!!)


プハっ はー…はー…一瞬川の向こうで後輩ちゃんが手を振ってました…」

「そいつ多分まだ死んでねぇぞ。」

「わーるどしー?なんですそれ?」

「気にするなレガス、こいつのいうことは大半がわかんない事だから無視しといていいぞ」

ラフェルがショックを受ける。何気ない一言が、ラフェルを傷つけた。

「ひどいじゃないですか!!もしかしてトレフ村までの途中の話も全部スルーしてたんですか!?」

「もちょい砕いて説明しやがれ!!」

こいつの話はいつも長いから途中で眠くなるんだよな……


軽く咳払いをして話を戻す。

「ンンッ!! 話を戻そう、お前の職業は?」

「おじいちゃんが進めたので一応魔法使いですけど…」

「だけど?」

「魔法が使えないんです」

「「「???」」」


「えっと、なんて言ったらいいんでしょうか、魔法は唱えれば発動するんですけど、途中で消えちゃったり当たってもほとんど威力が出なくて…同い年の魔法使いの人達は皆<ブレイズボール>くらいは使えるのに…」

「あー…魔法には潜在的な能力が必要不可欠ですからね~…いくら魔力があった所でこの世界では「精神力」って言うんでしょうか、要するに魔力を扱う力が無いと魔法は使えません。言うなれば魔力は「燃料」で精神力は「動力」ってところでしょうか。いくら炉が優れた所で燃料が無くなっても、逆にいくら燃料があっても炉が錆びれていては、どちらも同じ平凡な魔法使いには勝てません。

あなたの場合は後者に当たりますね。ちなみに魔術は魔法と違って精神力はそこまで影響しないので、前に言った通り知識さえあれば誰でも使えますよ。まぁ簡単なものに限りますけどね…」

「どうにかして鍛えられないか?」

「できることは出来ますけどかなり時間がかかりますよ、あなたの短剣の事もありますし、彼女にはそのまま魔術で戦ってもらった方が良いのでは?」

「そういう事言うんだったらもうちょっと食事を遠慮しような。」

「ダメです!満腹まで食べることは私の肉体の意義なんですから!」

「テメェーッ!!お陰で装備整えるのにどれだけ時間がかかったと思ってんだ!!かれこれ二週間はかかってんだぞ!!普通は魔鋼製の装備一式買えるわ!!!」

「まぁまぁ落ち着いてください二人とも、この子困っちゃってるじゃないですか。」



「あの~…鍛える……ってわたし、戦うんですか?あなたたちと?」

「そうだけど?」「そうですけど?」

「容赦ないですね…(既視感)」

「………おうちかえるぅ…おじいちゃぁ~ん…」


「とりあえず今日は遅いし私といっしょに寝よ?ね?」

「うん…」


次の日

会計を済ませ、ギルドに向かおうとすると、なにやら広場が騒がしい

「ワシの孫はどこじゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!ここにいるのはわかっとるんじゃああああああ!!!」

老人が大声で叫んでいる。やっべどう見ても俺たち誘拐犯じゃん…


「ど、どうする?多分俺たちあの爺さんに殺されるぞ…」

「どどどどうしましょしょしょうう…」

「おじーちゃぁーん!!!ここだよーーーー!!!」

「「「あ」」」

低身長ながらぴょんぴょん跳ねている。幼さゆえの高Hzは群衆のざわめきをすり抜けて響く

まずいまずいまずい

「衝撃に備えろ!!」


「そこかぁぁーーーーー!!!ミライーーーーーー!!!!」

群衆を弾き飛ばしてダッシュでやってくる。普通に怖い、腰痛が響いてるんじゃないのかよ

風圧で吹き飛ばされそうになる。

そして急ブレーキし抱き合う二人、ロマンチックだな。さっきのアレがなければ

「あんまり遅いから使い魔に様子を確認させとったんじゃよ、本当に無事でよかった…

 


で、儂の孫を攫うさらうとはおんどりゃぁ準備はできとるんじゃろなぁ?」

「(おい、何とかしろよ食いしん坊、お前知り合いだろ!?)」

「(分かりましたよ…あまり群衆の前でバラしたくはないんですけどね…)」

ラフェルが前に出る

「お久しぶりですね、カルネスさん。」

「お主は…もしやメガミ様か!?いやーその節は世話になったわい!ところで、何故メガミ様が王都ではなくここにおられるのです?もしうちの孫をさらったのならメガミ様でも容赦はしませんぞ?」

「ち、違いますよ……とりあえず個室に行きますか。」

「おい、もう宿代ねーぞ…」

「けっ、若造が。そんなもんたんまりあるわい」

「太っ腹ですね…うぅ~でもやっぱり怖いぃ~」



再び宿屋へ。幸い先程の老人があの「賢者」カルネス・エイゼルだと察した人物はいなかったらしく、ただの過保護なスーパーおじいちゃんという認識だったらしい。

「宿屋を出て早々宿屋に戻るとは…」

「新記録達成ですね☆」

「うるさい」


宿屋の主人に頼んで人数分椅子を用意してもらった。こちらの三人と、エイゼル親子(祖父と子)が対面する形である。

「えっこいせっと…で、メガミ様がいるってことは、その連れの若いのはもしや…次の勇者か?」

「ああそうだとも!俺こそは勇しy(ゴンッ いった~い…」

「ちょっと黙っててください。違いますよ、勇者どころか、私をこの世界に無理やり連れてきた罪人です」

「あれ?おれそんなひどいことしたの?」

「よし、殺そう!<インフェルノ・・・・」

「やややめてください部屋がというか私達まで巻き添えおおおおお!?!?!?」

「ちょちょちょっと待ってください!!今彼に死なれては私のごはんに関わるんです!!」

「何!?この若造が!!??? ありえん…」

「おい、今変なルビついてたぞ。

…というかこの爺さんは前の勇者…つまり前の転生者の事知ってんだろ?ならもう言っちゃってもいいんじゃないか?いつかは打ち明けなきゃいけないんだ。  …かと言って勢いで暴露されても困るんだがな。」

目を逸らすラフェル

「そうですね、彼なら大丈夫でしょう。」



――――――――――

「というわけなんです。」

「フム、別の世界の人間とな。確かに明登も最初は変わった格好をしとった故、大体の予想はついとったがの。しかしまさかメガミ様が他の世界でもメガミ様じゃったとは驚きじゃわい。」

「「(ぽかーん)」」

案の定現地100%の二人は話についていけてない。そりゃ当然か、今目の前にいる男が別の世界の人間だったりラフェルに至っては世界の管理者なのだから

「こっちとしては青春を謳歌する前に世界に殺されてこっちの世界に連れてこられたんだから散々だよ全く…おまけにコイツの性格爺さんの時代に比べてかなり変わってるからな。いやマジで

例えばこいつ大食いだったr」

「あーーわーーーわーーー聞こえなーい聞こえなーい!!!」

「えっ!!??メガミ様って大食いだったの!?!?!?というか食べる必要あるの!?!?」

「じいちゃん声裏返ってる」


「コホン、とりあえず二人がついていけないのでこの話はまた後で。とりあえずカルネスさん、あなたのお孫さんが魔術、しかも私が使用するものとは別のパターンの魔術を使用し、本人はあなたに教わったと言っているのですが、間違いはないですか?」

「そうじゃ、ワシが教えた。体力から魔力を精製する、ワシは「魔力変換」って呼んどるがの、その応用として己の意識を高める、いわゆる瞑想を使った新しい魔法が完成しての。それは魔法の才能が無くても無意識に魔力の流れをコントロールできるからミライにぴったりだったんじゃ。まさか別の世界の法則だったとはのう。」

「え?あれって魔法じゃないの?おじいちゃん新しい魔法って言ってたよね?」

「やっと時代がワシに追いついたんじゃ、気にするな」


「さて、それじゃぁ魔術のお勉強を始めましょうか!」

「何故このタイミングで!?とりあえずこのおじいちゃん強制送還させたほうが良くない?」

「やっぱこの若造殺すわ。」

「おじいちゃん…勇者さんみたいになってる…」

「ひいいいいいいぃぃぃぃ…や、やめてくださいよぅ…」





―――――――

「で、どうします?お孫さん、私からしてみればこのまま研究させるのも良いですけど、せっかく魔術の才能があるんですから冒険者デビューしてみてはと思うんですが。」

「ワシとしては構わんのじゃが、本人が…」

「(ぷるぷるぷるぷる)」

断固として首を振り続けてる あー、そりゃ誰だって最初は怖いわな。俺だって最初は怖かった 昔近所の犬に追いかけられたときはもう…

「メガミ様なら安心して預けられるし、ちょうどいい機会だと思ったんじゃがのう…」


「あのー…」

「ん?どうしました?」

「私に任せてくれませんか? 今なら行ける気がするんです」

「レガス、お前鋼蜘蛛戦の時までビビりだったのにキャラ変わりすぎじゃね?」

ラフェルが口を挟む

「颯馬、人間だれしも後輩を持つと自然と向上精神が出るものですよ。貴方にも弟か妹はいるでしょう?」

「いや、俺末っ子だから」

「………そ、それでも部活とかで後輩がいたでしょう!?」

「いや、俺ジムに通ってて基本帰宅部だったから」

「………………縄、解きませんよ?」

「ごめんなさい」

何故俺が謝らねばならんのだ…


余計な口を挟まない様に、俺たちは外へ出る。

とりあえず一仕事…ができるほどではないか、街角もとい村角にある喫茶店にでも行くか。ここからなら近い

「心配しないでください、私、こんな性格でも立派な「姉」なんですよ」







「みんな行ったかな…さて、

ミライちゃん、どうしてラフェルさ…メガミ様と行きたくないの? あなたの好きな魔法の知識が増えるかもしれないのよ? そこを教えて欲しいな。」

「だって…怖いし…おじいちゃんと離れたくないもん…」

「そっか…私もね、冒険者になりたての頃初めてクエストを受けたときはすっごく怖かったし、それに冒険者になるってことは、家族とか、皆と離れ離れになっちゃうってことだからすっごく寂しかったな。それに、今も怖いし寂しいよ。

私にもおばあちゃんがいるんだ、とっても会いたい、あってお話がしたい。」

「じゃぁ、どうして…?」

「私には夢があるの。昔いじめられていた時に、助けてくれた幼馴染の男の子。彼は今多分王都で衛兵をしてると思うな、前からずっと衛兵になりたいって言ってたから。

彼の姿を見て、私も彼のように皆を守りたいって思ったの。こんな小さな体だけどね。」

「夢…」

「あなたの夢は? 何がしたい?それともどんな自分になりたい?」

「私は…私の夢は…」

―――――――


そろそろ終わったかなと思い、宿屋に戻るとちょうど二人が部屋から出てきた所だった。

「上手くいったか?」

「ええ、ばっちり!」

「b」


「おじいちゃん、私、おじいちゃんに伝えたいことがあるの。」

「ミライ…わかった、全部言いなさい。」

孫の言葉に決意を感じ、カルネスも覚悟を決める

「私、お姉ちゃんたちと行く!そしておじいちゃんよりもすごい魔法使いになるの!」

「……(うるうる)

良く言ったぞおおおおおおおお!!!うおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」

孫を抱きしめるカルネス、あまりの嬉しさに涙が出ている。

「颯馬、やっぱり」

「ああ、こいつ親バカだ。過保護じゃない分マシな方だが

ま、いいんじゃねーの?良い家族がいて羨ましいと思うぜ、俺は。」


次の日

ジェニム村付近の森のとある一軒家にて

「それじゃぁ、行ってきまーす!!」

「行ってらっしゃい、メガミ様、孫を頼みましたぞ」

「任せてください!立派な魔法使いに仕立て上げますよ!!」


見送りを経て、村に戻る

「これからよろしくな、ミライ」

「はい!こちらこそよろしくお願いします!」

そして本人に気付かれないようにそっとミライに耳打ちする

「(お小遣いはこいつに絶対渡しちゃダメだぞ!速攻で胃袋の中に溶けるからな!絶対だぞ!)」

「(コクコク)」

体制を戻し、気になった所を質問する

「ところで、さっきお前達何話してたんだ?」

「ひ・み・つ です。ねー」

「ねー」

「颯馬、ガールズトークに口を挟むのはご法度ですよ?」

「え…」


かくして黒髪ロングで身長140cm前後の10歳ふんわりした顔と優しい目つきでクラスで二番目にラブレターを貰う数が多そうな魔法少女が仲間に加わったのだ!

ちなみにレガスは156cm

――――――

「わたしの夢は、おじいちゃんみたいな凄い魔法使いになりたい。でもわたしには魔法の才能が無いの。だから…」

「大丈夫、メガミ様も言ってたように、訓練すれば必ず使えるようになるよ。何事も努力が大事!」

「でも…」

「私を信じて。昔は臆病でクエストを何度途中で逃げてきたかわからない私だけど、今は何とか颯馬さん達とやっていけてるの。あなたも大丈夫、彼らならあなたの強みを生かしてくれる、あなたを強くしてくれる。」

「ほんとう?」

「ええ、もちろん。だから今の私があるの」


「ところで、おねぇちゃんってどうしていじめられてたの?」

「性格ってのもあるけど、実際はこっちね。」

右目の上にある何かをとるような仕草をする。その瞬間、どこからともなくレガスの右手に眼帯が出現する。

「その目、その眼帯…もしかして」

やはり「賢者」の孫か、魔法に関する知識は豊富だ。

…この場合は常人でも異常だと気づくか。


眼帯が外れたレガスの右目は、左目のように透き通った青色ではなく、充血したかのように真っ赤だった。白目の部分が全て赤いのだ。オッドアイなどと言うレベルではない

「ええ、これのお陰で、私に夢をくれた彼と、私の家族以外は誰も私に近寄ろうとしなかったの。」

眼帯を付けると、そんなもの最初から無かったかのように両目とも青色に戻る。

「もしかして…魔眼?」


魔眼。それは上位の魔物や魔人が持っているとされる、特別な力を持った眼球。


一番人口が集まる王都ですらその存在は希少で、前に一人の魔眼持ちをモルモットにするために研究者達が何十人ものの冒険者を雇ったという事があるため、現在は王の命令により魔眼の研究は全面的に禁止されている。

なお、保護の為魔眼であると発覚した場合はカルテと共に報告するのが義務付けられている。


「うん、王都でも有名な再生士リジェネレーターの方に診てもらったけど、結局目の色を治すことは出来なかった、その時に魔眼であることを言われたの。

私の右目は、常に命が壊れて見えるの。さっき外した時もそう。それで、当時はわかんなかったけど、スキルを覚えて魔力の使い方を何となく覚えた今ならわかるわ、これは魔力を流すと映った通りの出来事が起こるの。」

「それって…まさか…」

「そうよ、意識しなきゃほとんど起こることはないけど、前に一度だけ泣いてた時彼の体を溶かしそうになったことがあったし、それに…ううん、何でもない。」

「おねぇちゃんもわたしみたいな悩みがあるんだ…」

「そうよ、みんなそれぞれ悩みを抱えているの。でも、いつかは悩みと向き合わなきゃいけない。自分の弱点と向き合ったとき、私達は強くなれるから。

ちなみにこの眼帯はこの村に来る途中で偶然見つけた物なの。だからこっちでやり直そうって思ったのよ。

魔眼ともどもこの話はくれぐれも内緒にね☆」

「うん!」


――――――


地殻干渉型魔力収束砲ティタノマキア

魔王が十三年前に採掘したアーティファクト。その魔力を集中させた一撃は、展開していた王都の地下設備である「十二の羽」を打ち砕き、王都に多大な損害を与えた。続く第二撃はカルネスの対大陸魔法で相殺し、幸いにもティタノマキアがオーバーヒートを起こし第三撃は来なかった。


しかしティタノマキアの効力はその副作用にあった。魔力を収束した砲撃は地殻に干渉し、地脈と呼ばれる大地に廻る魔力の線に共鳴反応を引き起こす。すると本来地下を走る地脈が地上に出てきてしまったのだ。

地脈の魔力が地上に浮き出てきたことにより、南大陸の魔力濃度が急激に上昇し大多数の魔導具が使い物にならなくなった。また魔結晶が以上に膨張し保管庫が崩れたり、急激な魔力密度の上昇耐えられなかった魔物が異形種に突然変異したりするなど様々な被害を及ぼし、王都は壊滅の危機に陥った。

「勇者」仰木明登がこの世界に降り立ったのはこの時である。


そして、濃すぎる魔力は魔力制御が上手くできない子供たちにとって非常に悪影響で、奇病が発生したり悪夢にうなされたり、最悪の場合魔力が暴走して"はじけて"しまう。この場合は魔力を制御する神経のようなものが全滅してしまい、一命をとりとめたとしてもスキルや魔法に関することは一切できなくなってしまう。


普通はまだ魔法やスキルは習得していないためそこまで被害は出ないのだが、天職や魔眼のように生まれつき魔力を消費できる機構を持っている場合は本能的にそこから魔力を消費するため、二次被害が発生する。





レガス。「彼」もまた、ティタノマキアの被害者だったのだ。

暴走した■■■■の「崩壊の魔眼」によって。

"彼女"はそのことを覚えていない。


――――――――――

「(…『孫』ですか。 恐らく養子だとは思うのですが… 私の記憶が確かなら、彼の本当の孫は、何年か前に既に亡くなられた…常に管理をしていたわけではないので何とも言えませんが、確かに還らぬ人となっているはずです。


……突っ込むのは野暮だと思って、閉じこもって何をしているかは問い質しませんでしたが、あなたは魔王を倒してから十三年もの間、何をしていたのですか…?)」


そして、ラフェルは颯馬と話している無垢な少女を見て、疑問の念を抱くのであった。







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