第18話
「それじゃあ改めて。自分はノワキっす。嵐の気象を担当をしている気象精霊っす」
ノワキはそう挨拶をした。
「そうか、お前も気象精霊だったのか。オレはカミナル。雷を司っている気象精霊だ」
カミナルも自己紹介をし返した。
「自分はカミナルさんのことはアマっちから聞いてるっすけど、自分の事は伝えてないんすか、アマっち?」
「う、うん。あまり個人情報は言わないほうがいいかなって……」
「その気遣いをなんでオレのときには出来なかったんだ……」
露骨に目を逸らすアマガサを見て、カミナルがため息をつく。
「あはは! カミナルさんは噂通りのクールな方っすね」
「噂通りって……。変な噂が流れてないだろうな」
「ああ、いえ。アマっちから聞いただけなんすけどね。カミナルさんはクールだけど、ゲームが大好きだって」
「別にクールぶっているわけじゃない。生まれつきだ。 まあ、ゲームは好きだが……」
少し照れているのか、顔を赤らめながらカミナルが答えた。
「あと、ゲーム趣味を隠したいって話も聞きましたっす」
「その時点で隠せてないじゃないか……」
カミナルはアマガサの方を睨みつけた。アマガサはメニューを見るふりをしてごまかしている。
「まあでも気持ちはわかるっす。ゲーム趣味ってだけで、『いい大人が何をやってるんだ』って言ってくる人もいるっすからねぇ」
「そ、そうそう……! だからあまり人に知られたくないんだよ」
理解を得られたからか、カミナルは食い気味で話に乗る。
「でもだからってコソコソするような趣味ってわけでもないと思うっす」
「そ、そうかな……?」
「そうっすよ。別に犯罪をしてるわけでもないんすから。趣味は自由っす! 人の趣味に低俗も高尚もないっす!」
「お、おお……!」
およそ演説と呼べるものではなかったが、ノワキの主張はカミナルを軽く感動させた。アマガサはゲームをやっていても他人の目線が気にならないから平気としか言わなかったが、ノワキの主張はカミナルに響いていた。
「た、確かにそうだ……! 趣味は自由! 馬鹿にされる筋合いはないってことだな……!」
「そうっすそうっす! むしろ恥ずかしがったら趣味が泣くっす!」
「だ、だが……」
先ほどとは一転して、カミナルの声のトーンが落ちる。
「やはり一部の奴らはいろいろと言ってくるだろ……。やはりそれはそれで……」
「まぁー、それはそうっすよね~」
ケロっとした表情でノワキが続ける。
「だったら自分たちの前でだけは趣味全開の話をすればいいっす! それが友達ってもんすよ!」
「そうだよカミナルちゃん! 私たち友達なんだから!」
「それが……、友達……」
さりげなくいいところで話に入ってきたアマガサを無視して、カミナルは再び感動していた。
「オレの友達になってくれるのか……?」
「当たり前っす! 同じゲームをプレイしてるだけで、もう友達っすよ!」
「そうだよ、私たちはもう友達なんだよ!」
またしても話に入り込んでいるアマガサを無視する。
「お、おお……! ゲーム仲間っていうのはこんなに簡単に出来るものなのか……」
恥ずかしいという理由でアマガサたち幼馴染以外にはゲームをやっていることを隠していたカミナル。そのせいでアマガサ以外とはゲームをしたことがなかった。そのことを当たり前だと思っている一方で、少し寂しく思っていたカミナルにとって、思いがけない形でのゲーム友達が出来た瞬間であった。
「こうして今日会えたのも何かの縁っすよ。これからよろしくお願いしますっす、カミナルさん」
「ふふ……。なんか不思議な感じだな。よろしく頼む。それと、さん付けはいらない。呼び捨てで構わない」
カミナルは少し照れ臭そうに微笑んだ。
「そうっすか? じゃあ……。 親しみを込めて、ミナっちって呼ばせていただくっす! 自分もノワキで構わないっす!」
「ふふ、あだ名で呼ばれるのはハレノヒ以来だな……」
照れているカミナルを見て、
「よかったねぇ、カミナルちゃん。お友達ができて……」
「お前も────」
ホロリとワザとらしく感動して泣いているアマガサをみてカミナルが何か言おうとして止めた。
『お前も友達は少ないだろ』と言おうとしたのだが、ふとカミナルは思い出した。こんな性格のアマガサであるが、何故か友人は多いということに。友人の数で言えばカミナル、クラウディア、ハレノヒの誰よりも多かった。何故か。
まだカミナルがアマガサから名前を聞いたこともない友人もいるだろう。
「なんでこいつ、人見知りの癖に友人が多いんだ……?」
「ん? カミナルちゃん、何か言った?」
カミナルのぼそりと言った呟きはアマガサには聞こえていなかった。
「それじゃあ二人とも! 今日はぜひ自分の家に来てくださいっす! 三人で朝までモンスター狩人っす!」
「そうだな。明日も休みだし、お邪魔しようかな」
「そ、そうだね……。ノワキちゃんの家、久しぶりだな~……」
アマガサは明日の朝から仕事があることを思い出していたが、忘れたふりをすることに決めた。
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