第17話
アマガサたちが無事ゲームソフトを購入した日の昼過ぎ。アマガサたちはウェザーリゾートに帰って来ていた。
「ふ~。やっと帰って来れた……」
「そんなに疲れるほどか?」
アマガサとカミナルはとある喫茶店に来ていた。アマガサはオシャレな雰囲気の喫茶店に入るなんて、もってのほかだったのだが、カミナルの強い希望で喫茶店に決まった。前回クラウディアたちと行ったファミレスがよかったアマガサはブーたれていたが、ファミレスが好きではなく、喫茶店が落ち着くカミナルが無理やり決める形となった。
「カミナルちゃんもあんなに寒がってたのに、もう平気なの?」
「まあ、コッチに帰ってくればな。ゲーム屋の中も暖かかったし」
アマガサとカミナルは無事にゲームソフトを購入出来ていた。もちろん五人分である。そのうち、自分の分を含めて三人分の費用を出したのはカミナルであり、一時的な出費とはいえ懐が痛いには痛かった。
「いや~、カミナルちゃんには二人分も出してもらって申し訳ないなぁ~」
「ああ。後で二人分貰うから気にしてない」
「もちろん払うよ~。……ん? 二人分?」
「そう言えばノワキにはこの店にいるって連絡したのか?」
「う、うん……。したよ……?」
アマガサの手持ちがない以上、この場でハレノヒの分のゲームソフトを請求しても意味がなく、逃げられると思ったカミナルは無理やり話題を変えた。アマガサは腑に落ちないようだが会話に答える。
「ノワキは今日の仕事終わりに来るのか?」
「ううん。昼過ぎも仕事があるから、お昼休憩の時間に来るみたい」
ノワキの分も購入したゲームソフトだが、ノワキ本人からは無理やり時間を作ってでも、今日渡してほしいとアマガサは言われていた。なので、こうしてすぐに家に帰ってゲームをしないで喫茶店にて待っているのである。
「そうなのか。まさかとは思うが、お前みたいに仕事中にゲームやったりしないだろうな?午後からもあるんだろう?」
「わ、私だって毎日してるわけじゃないよ! そ、そりゃたまに暇すぎるときはやっちゃったりするけど……。と、ともかく、ノワキちゃんは仕事中は真面目だから大丈夫だって!」
そのとき
「なになに? 自分の話っすか?」
「おっ?」
カミナルが驚いて振り向くとそこには一人の少女がいた。
平均くらいの高さの身長に、銀色の髪をアンダーポニーテールにした髪型。ぱっちりと開けた目元には眼鏡をかけている。
「どもっ! 自分はノワキって言うっす。 カミナルさんですよね? 初めましてっす!」
ビシッと敬礼をしながら自己紹介した少女はノワキと名乗った。
「お、おお。は、初めまして。オレはカミナルだ。よろしく」
ノワキの挨拶に気圧されながらカミナルもノワキに自己紹介した。
「ノワキちゃ~ん、こんにちはぁ。も、もう二人とも自己紹介終わっちゃったんだ……。わ、私が紹介する暇が……」
「たはーっ! ゴメンっす、アマっち。ついつい勢いで挨拶しちゃったっす!」
アマガサに謝ると、ノワキは再びカミナルの方に向き直る。
「カミナルさん、お噂はアマっちから聞いていまっす! なんでも雷の気象精霊だとか」
「あ、ああ。それ以外に余計なこと言ってないか……?」
「あとは……。 そうそう! 重要なことを忘れてたっす! アマっちから重度のゲーマーって聞いてるっす!」
「ああん?」
カミナルはギロリとアマガサを睨む。「ヒエッ……」と言いながらアマガサはノワキの後ろに隠れた。
「大丈夫っす! 恥ずかしがらなくても、自分たちは仲間っすよ!」
「い、いや、そいつの言うほど、オレはゲーマーというわけでは……」
「いやー、残念っす。この後自分に仕事がなければ、朝まで三人で一狩り行ってるんすけどねー!」
「そ、それはもはや一狩りという話では……」
「あっ、それとも自分の仕事が終わってからやるっすか? 自分の家で朝までパーティーでも大丈夫っす」
「おお、もう……」
ノワキの勢いに完全に押されてしまっているカミナルがアマガサに助け舟を求める。アマガサは自分のリュックを開きゲームソフト取り出した。
「は、はいこれ。ノワキちゃんの分のモンスター狩人」
「おお! アマっち、ありがとうっす!」
「そ、それとノワキちゃん。カミナルちゃんが引いてるから、あまりグイグイ行かないほうが……」
「あ、あれ?」
そこでノワキがハッとした表情になった。
「す、すいませんっす! ……じ、自分、好きなものになるとついついしゃべり過ぎて周りが見えなくなっちゃって……」
「ま、まあ、気にしないでくれ。好きなものになると夢中になるのは誰でもそうだ」
そう言いながら、カミナルはどことなくノワキとアマガサが似た者同士だと感じていた。
「せ、せっかく三人揃ったんだし、ノワキちゃんの休憩終わるまで話さない? ふ、二人とも、もっと話せば打ち解けられるかも……?」
「そうだな、せっかく会えたんだし」
「よろしくお願いしますっす!」
そう言ってノワキは席に着いた。
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