第15話
アマガサがカミナルに買い物の付き添いを頼んだ日の翌日、つまり買い物当日。二人はとある異世界のとあるゲーム販売店の扉の前にいた。
「うぅ~……。まだ痛い……」
アマガサは頭をさすっている。
「いやまあ……。自業自得としか言えないな」
アマガサの後ろに並んでいたカミナルがそう言った。
「だとしても! あんなに強くぶたなくてもよくない!?」
昨日のあの後
『アンタの家にあったこの用紙について説明してくれる?』
『いや、クラウディアちゃん! その……、これは……』
『あと五秒以内に答えないとぶん殴るわよ』
『えっとそれはですね……。今日の折り込みチラシで────、いたっ!!』
『真面目に答えないとさらに強力なのぶち込むわよ?』
『い、いやその……。カミナルちゃんが一緒に買い物に来てほしいって────、いったい!!』
『責任転嫁してんじゃないわよ! アンタの字だし、そもそもアンタの家にあったじゃない!』
『えっとですね……。えーっと……』
『……素直に謝ればあと一発だけで許してあげるわ』
『一発は殴るの!? お願い許し────、イッタイ!! ごめんなさいゴメンナサイ! 私が悪かったですぅ~!』
『本当にわかってんのかしら……』
そして今日
「結局、最後とか言っといてあの後三発もぶったのは酷くない!?」
「ことあるごとにお前が変な言い訳するからだろう? そりゃクラウディアも怒る」
「だ、だって……。早く見逃してほしいし……」
アマガサはいじけたように口をとがらせる。
「そりゃお前、前日に異世界渡航について怒ったのに、懲りずに翌々日にまたやろうとすればキレるだろ」
「だってぇ~……。発売日がぁ……」
アマガサはイジイジとしている。それを見てカミナルはため息をついた。
「まあ、結局付いてきてるオレもオレなんだが……」
「でもでも。クラウディアちゃんからもOKもらったから!」
「それだよそれ。よくクラウディアが異世界渡航の許可出したな。昨日の今日じゃ、お前を監視してでも行かせないようにするかと思ったのに」
「う、うんまあね……」
結局あの後、アマガサはクラウディアにこっぴどく叱られた。説教はアマガサが仕事を始めるまでの時間で終わるはずもなく、アマガサの仕事中も行われた。終わったのはクラウディアの仕事の開始時間ギリギリであった。その間、実に三時間。
一部始終しか見てないが、説教中は、ただでさえ死んだような目をしているアマガサの目がさらに濁っていたとカミナルは語った。
その後、仕事が終わって自宅に帰ったアマガサにクラウディアからメールが届いた。説教の続きかと思ってビクビクしながらメールを開くとそこには、自分の分のモンスター狩人の購入とその購入費用をアマガサが持てば今日の事と明日のことを忘れるといった内容が書かれていた。
「クラウディアちゃんの分のモンスター狩人を買わなきゃいけなくなってしまいまして……。 しかも私が全額払う形で……」
「アイツも買おうとしてるのかよ……。いや、買わせる、の間違いか」
余計に費用がかさんでしまったアマガサは肩をガックリと落としている。それを見てカミナルがさらに追い打ちをかける。
「だったらついでにハレノヒの分も買ってやったらどうだ? アイツ喜ぶぞ?」
「ちょっ!? カミナルちゃん!?」
「普段からアイツに迷惑かけてるんだし、たまにはアイツにプレゼントしてやれよ」
「もうお金ないよッ!」
「ああ、そうだ。迷惑かけられてるのはオレもだし、オレの分のゲームソフトも買ってくれよ」
「カミナルちゃん!?」
本気にして愕然としているアマガサを見て、カミナルがフフッと笑った。
「冗談だよ、冗談。……半分は」
「半分!?」
「ハレノヒの分を買ってくってのはいいだろう。せっかく四人で出来るのに、仲間外れはかわいそうだ」
「そ、それはそうだけど……。今、手持ちが……。 三人分もないよ?」
「お前の分を諦めればいいじゃないか」
「カミナルちゃんッ!?」
またしても愕然とするアマガサ。
「冗談だよ。本気にするな。 オレが出してやるよ。いつも迷惑かけてゴメンくらい言って、ハレノヒにお前から渡せばいいだろ」
「か、カミナルちゃん……!」
いいところを譲ろうとしてくれているカミナルに、アマガサは感動して目が潤んでいた。
(まあ、明日にでもハレノヒの分の代金はアマガサに請求するけどな)とカミナルは心の中で考えていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます