第8話

「ミーちゃんも今日の食事会さそったんだけどねー」

ハレノヒが携帯電話を取り出しながら言った。

「お昼くらいにメッセージ送ったんだけど返信無かったんだよねー」

「珍しいわね。カミナルって返信早い方じゃない?」

「そうそう。だから心配しちゃったんだけど、もしかしたら────、っていつの間にか返信きてたよー」

携帯電話の画面をクラウディアに見せる。

「なになに……? 『夜勤明けで寝てた。今起きた』って、寝坊かいっ!」

クラウディアは画面にツッコむ。

「ミーちゃん、昨日夜勤だったみたいでねー。もしかしたら寝てるのかもしれないって思って、あまりしつこく連絡しなかったの」

「まあ、アイツって一度寝始めたらよっぽどの事がないと起きないわよね」

「そうそう。疲れてるなら悪いかなって思ってねー」

ハレノヒがカミナルに返事を打とうとする。

「それでどうすんの? カミナルも今から来るって?

「ちょっと待ってねー。────いや、今日はもう出遅れたから来ないって」

もう一度クラウディアに携帯電話の画面を見せる。

「えーっとなになに……。『明日は朝一から仕事。今日は遅くなったから行かない。また誘って』って、相変わらず簡素なメールね……」

「あはは。まあミーちゃんはクールだからねー」

「……なになに? カミナルちゃんも来るって?」

そこで、ピザを頬張っていたアマガサも会話に加わる。

「今日はもう遅いから来ないってさ。てかアンタ、会話から外れると無言で食べ続けるのやめなさいな」

「カミナルちゃん、最近夜勤が多くて超疲れてるって、この間会ったときに愚痴ってたなぁ」

モグモグと咀嚼しながらアマガサが呟く。

「そうなんだ~、大変なんだねぇ。私たち晴れの気象精霊ほど人が多くないから、雷の気象精霊は大変なんだってね」

「まるで他人事みたいね……。────って晴れと雷なんだから当たり前か」

クラウディアが納得する。

「そうなんだよ~。ミーちゃんとも一緒に仕事したいのに機会がなくてさ~。おかげでお互いの状況がメールとか電話でしかわからないの」

ハレノヒが残念そうに言った。

「私とアマガサはともかく、アンタは関係ないもんね。……ってよく考えたら私たち三人と真逆すぎでしょアンタ」

「ハッ! 今気づいた! 確かにクーちゃん意外とは滅多に仕事場で会ってない!」

「今気づいたんかいっ!」

ハッとした表情になったハレノヒにクラウディアがツッコむ。その様子を、相変わらずピザを食べていたアマガサが見ていた。

「ハーちゃんって幼馴染だからよく一緒に遊んでるけど、そうじゃなかったら今頃こうして一緒にいなかっただろうねぇ」

「アーちゃん……。酷いよ……」

「アマガサ! なんてこと言うのアンタは!」

シクシクと泣きだすハレノヒと怒っているクラウディアを見て、慌ててアマガサは訂正する。

「い、いや、ハーちゃんと本当は仲良くないって意味じゃなくて、私たちの天候的に働きだしてから私たちが会うことなんてなかったんじゃないのかなって意味で……。う、うまく言えないけど、昔から一緒にいるからこうして今でも仲良く遊べてるんだなって……」

アワアワとアマガサが弁解する。その様子をみてクラウディアが付け足す。

「要は、働きだしてからだと天候の違いから私たちが仕事場で会うことがない、だから友達になれなかったんじゃないかってこと?」

「そ、そう! そう言いたかったの!」

アマガサが立ち上がり「そう! そう!」とクラウディアに言った。

「まったく……。ちゃんとハッキリ言いなさいよね」

クラウディアがため息をつく。

「ご、ゴメンね? ハーちゃん……」

「ううん、私こそ勘違いしちゃってゴメンね?」

アマガサとハレノヒの二人は、「おお、友よ」と言わんばかりに抱き合う。

「アンタら……、演技だったんじゃないでしょうね」

「ち、違うよ! 私たちの友情が仲直りさせたんだよ!!」

「そうだよ! 私とアーちゃんの友情は永遠だー!」

「それが芝居くさいのよねぇ……」

いい加減面倒くさくなったクラウディアは料理に手を出す。

「アンタらも食べちゃいなさいよ。ハレノヒは明日も朝から仕事でしょ?」

「そういえばそうだったー。はぁー、大変だなぁー」

ハレノヒも料理に手を伸ばす。

「クーちゃんとアーちゃんも明日は朝から?」

「いや、私は午後からね。アマガサは確か昼からだったわよね?」

すでに自分の分を食べ終えたアマガサにクラウディアが質問する。が、

「さあ?」

アマガサは首を傾げる。

「なんで把握してないのよ! ちゃんと帰ったら確認しなさいよね!」

「あはは……。でも二人とも朝はゆっくりかー。いいなー」

ハレノヒは明日の朝の事、そしてこの食事会が割り勘か否かを考えるのだった。

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