第5話
その日の夜。
アマガサ達三人はファミレスに来ていた。
「なんでせっかく集まったのにファミレス……」
「まあまあ、いいじゃんいいじゃん! 安いんだし!」
少し残念がっているクラウディアにハレノヒがそう声をかける。
「そうそう。安いのは大事大事……」
アマガサも後ろでうんうんと頷いている。
「アマガサ! アンタが良い店知ってるって言うから案内させたのに、わざわざファミレスなんかに連れてきて!」
「だ、だって……。今、あまりお金無いんだもん……」
アマガサは怒られた子供のように目線を下げながら答える。
「わ、私もあまりお金使いたくないかなー、なんて」
ハレノヒもアマガサに同意する。二人の答えにクラウディアは「はぁ……」とため息をつく。
「アマガサがお金無いのはどうせ無駄遣いしたんだろうけど、ハレノヒはいつもの節約癖のせいかしら?」
「う、うん……、あまりお金使いたくないなー、って。今後なにがあるかわからないし」
「食事に誘ってきたのはアンタでしょーに……」
「ご、ゴメンね? どうも癖でね」
ハレノヒが申し訳なそうにクラウディアの方を上目づかいで見る。
「まあアンタの節約癖は今に始まった話じゃないし、もう慣れてるわよ」
クラウディアも昔からの付き合いであるハレノヒの癖は慣れっこなのかそこまで気にせずに流す。だが、この話題に一人だけ食い下がった人物がいた。
「クラウディアちゃん! 私は無駄遣いなんてしてないよ!」
アマガサはいかにも怒っていますというような空気を出してクラウディアに食ってかかる。しかし普段の濁った目のせいでいまいち迫力がでない。そんなアマガサを冷めた目でクラウディアは見つめる。
「どうせゲームでもまとめ買いしたんでしょ?」
「なんでそれを!?」
アマガサはズバリ言い当てられて驚愕する。
「前に買ったゲームをクリアもしないで新しく発売したやつを買うとかわけのわからないことしてんでしょ」
「しょ、しょうがないんだよ……! 異世界で欲しいゲームがどんどん発売しちゃうのが悪いし……」
最後の方はだいぶ声が小さくなってきていた。
「だいたい、私たち気象精霊は異世界に不用意に接触するのは禁止されてるでしょ」
クラウディアの言うとおり、気象精霊はテンペストボールによる天候操作以外での異世界への接触及び干渉は禁止されている。ただし、完全に独立しているわけではなく、異世界のものがキチンとした機関を通してウェザーリゾートで販売されることもよくある。
しかしそれでもウェザーリゾートで販売を開始されるまでは結構な時間がかかるため、違法な手段で販売されている商品があったりする。まさにゲームなどの旬が短いものなどは違法販売されることが多いのだ。
アマガサはさらに違法なことをしており、なんと自ら異世界に行きゲームを購入しているのである。見つかったら大問題なのは間違いない。
「い、異世界渡航はバレなきゃヘーキヘーキ……」
「バレたら一大事だから言ってんでしょうが!」
「だ、だって……。オンラインゲームは旬を逃したら過疎っちゃうし……。こっちでの販売を待ってたら、異世界の上手いプレイヤーと遊べないじゃん……」
「ええい、わけのわからん事をいうなッ!」
あまりゲームをプレイしないクラウディアにはアマガサが何を言っているのかがわからないため、無理やり言い訳をかき消す。
「まあまあ二人とも。せっかくの食事会が台無しになっちゃうよ?」
ハレノヒがその場を落ち着かせようとする。
「まだ始まってもないけどね。そもそも店にすら入ってないし」
「だから早く入ろうよ~。私お腹すいちゃった」
ハレノヒがお腹を撫でて空腹アピールをする。
「わ、私もお腹すいた……」
「アンタ普段食欲薄いのに珍しいわね。パンだけで生活できるとか言ってるのに」
「きょ、今日は頑張って仕事したからね……。お腹もすくよ」
「普段からそれくらい真面目に働きなさいな」
頑張ってましたアピールをしているアマガサをクラウディアがたしなめる。
「さ。ともかく店に入りましょう。いつまでもこんなところでしゃべってないで」
「あ、待ってよクーちゃん~」
クラウディアが先陣をきって歩いていき、後ろからアマガサとハレノヒが追いかけていく。
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