第34話 放課後、光学研究会の部室に行くと

 放課後、光学研究会の部室に行くと、そこでは、すでにローズが待っていた。

「光坂君、それに橘さん、大変お世話になりマシタ」

「ローズ先生、それで、もう、俺たちの監視はやめたんですか」

「監視って? なんの事かしら?」

「ローズ先生、しらばっくれなくても、俺たち全部知っているんです」

「そうよね。橘さんは私のスマホを乗っ取って、私たちのメールや会話の内容を全部知っているんですものね。

 それにしても、最後は失敗しました。あそこでFGCを使われたことで、隙ができて、あなたたちに透明人間になられて逃げられマシタ」

「やっぱり、私の作ったマルウエアの存在に気づいていたのね」

「そう、あのマルウエアを消去さえしていれば……、こちらが、マルウエアの存在に気づいているとわかると、色々と警戒されると思って消さなかったことが裏目に出ました。それに、光子グラビティは反射光しかコントロールできないって言っていたのに、嘘でしたね」

「ですね。ごめんなさい。でも、透明人間に成れることを知ったのは、あの時が初めてなんです。愛は知っていたみたいですけど……」.

「S.EXも気が付いてましたよ。きっと、そういうことも出来るだろうと……」

 ローズは達也の話に、呆れたように答えたのだ。そして、これが達也だと納得したように首をふったのだ。


 そうして、今度は愛が話しだした。

「それで、ローズ先生は、日本の公安とアメリカのS.EXという組織の二重スパイだったんですね」

「まあ、そうですネ。もっとも、公安はこの高校に潜りこむために使っただけですけど、それにしても、S.EXってなんでしっているんデスカ?」

「ええっ、肩に入った入れ墨、特殊な光に当たると浮かび上がるS.EXは、きっと仲間内で決めた略語。正式名称はスピン オン エグザミン エージェンシー、SEA(民間技術の軍事技術転用調査情報局)に所属しているんですよね。昨日やっとアメリカ政府のサーバーからローズ先生の経歴を見つけました」

「そうなのよ。私が決めたのよ。SEAじゃあ味気ないでしょ。スピンオンのS、エグザミンの接頭語のEXで、S.EX、センスいいでショウ」

「ったく、そのセンスは疑いますが、そのおかげで、素性が全くわかりませんでした」

「そっか、橘さんみたいな凄腕ハッカーでも、苦労したのか……。やっぱり、わたしのセンスは最高ネ」

「その二つの組織から、達也のFGCは狙われた」

「でも、もう軍事技術転用なんてことはどうでもよくなったの。公安もSEAも、あなた達から手を引くことを決めたの。だから、あんなことがあった後でも、のこのことここに顔を出せたのよ。よかったわ。あなた達に、最後の挨拶がデキテ」

「なぜ、FGCの軍事技術への転用を諦めたんですか。昨日、透明化する切り札も見せたのに」

「うーん。それを言ってもいいのかな。まあ、一か月後にはわかることなんだけど」

「ローズ先生、一体、なにがわかるというんですか?」

「そうね。教えてあげる。本当はパニックを避けるために、極秘なんだけど。今、地球に向かって、隕石が飛来してイルノ。その隕石の直径はおよそ二〇キロ、恐竜が絶滅したといわれるユカタン半島に落ちた隕石は予想される最大規模で一五キロダッタワ」

「そんな、地球上の生物が全滅してしまう規模じゃない!」

「その隕石が、約一か月後、正確には、二八日後に、地球のこの学校付近に衝突するワ」

「な、なんで、一か月後なのよ。スペースガードは何をしているのよ」

「そう、スペースガードの発見が遅すぎた。回避するためには、出来れば一〇年、少なくとも一年は準備期間が欲しかった」


「先生なんで、そんなに近づくまで、スペースガードは気が付かなかったんだ?」

 今度は、達也が訊ねる番だ。

「それが、どこから飛んできたのか? この隕石、成分の九〇%以上が、クリスタル、すなわり水晶でできているのよ。おかげで、電波望遠鏡では、電波が乱反射させられて、上手く発見ができなかったのよ。さらに光学望遠鏡でも、距離や位置が特定できないで、正体不明の天体と結論づけた。

 しかし、この正体不明の天体を追跡した結果、ここまで近づいてくれてやっと正体がわかったということなの。

 まあ、そういう訳で、FGCの軍事転用計画は中止。私たちは、隕石を何とかする技術を早急に探さなければならない」

「でも、そんな技術なんて……」

「はーあっ、まったく、不可能よね。ロケットだって、こんな短時間に打ち上げられるか……。そう言うわけで、FGCはお払い箱、高坂君、橘さん、後は人類滅亡まで、青春を謳歌してクダサイ」

「そんなばかな!」

 がっくりと肩を落とす達也と愛。そこにローズが声を掛ける。

「このことは、あなた達に言うつもりはナカッタノデス。でも、あなた達なら何とかしてくれソウデ。FGCじゃどうにもならないノニ」


 そこで、顔を上げる達也。何か閃くものがあったのだ。

「いや、俺たちなら何とかならないか?」

「達也、どう考えても、絶対無理でしょ!」

「いや、地球に向かっている隕石は、クリスタルでできているんだろうそれにクリスタルの内部では核融合が起こっているはずだ。

「そうか、隕石の見え方がまるでFGCを使ってみているみたいなんだ。だったら、その隕石の廻りには光子グラビティが発生している」

「愛、そこに光子グラビティをぶちこんでやればさらに核融合が進んで、隕石はいずれ耐え切れなくなって核爆発を起こすんじゃないか?」

「そうか、でも、宇宙空間よ絶対無理だって」

「無理でも、なんでもやってみるんだ。上手くいけば、隕石の軌道ぐらい変えられるかもしれない。俺たちに諦めなんか似合わないだろ!!」

「――、達也、それで具体的にはどうするのよ」

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