第27話 いよいよ、全国大会が間近に迫った
さて、いよいよ、全国大会が間近に迫った。
天翔学園演劇部は、大会の前日から東京に乗り込んでいた。リハーサルは明日からで、機材や物品の搬入を武道館に搬入すると、達也と愛は早速、お目当ての秋葉原に出かけていく。
ふたりとも、パソコンやタブレットを改造してカスタマイズするくらい電子機器に精通しているし、愛に至っては政府機関の機密情報にさえアクセスできる凄腕のハッカーなのだ。
そして、今日は達也のタブレットは、もし、壊れたらというローズ先生や部長の指示で、舞台に使う機材として、武道館の機材置き場に置きっぱなし。愛だけがモバイルを持って出かけているのだ。
秋葉原駅に着き、改札をでると、そこには猫耳を付けたメイドさんが、チラシを配ったり、記念撮影をしたりしている。
「な、なんだ、これは? 秋葉原って電気街じゃなかったのか?」
「何十年前の話をしているのよ。今や秋葉原ってオタクたちのメッカでしょ。でも、萌えじゃなくて、いまでも高架下に行けば、電子パーツ店が在るみたいよ」
「じゃあ、そちらにいってみようか?」
「あれ、メイド喫茶とかには興味が無いの?」
「コーヒーが一杯一000円じゃなければな~」
「じゃあ、私がメイドの恰好をして、コーヒーを入れてあげるから、一000円払いなさいよ。その方が、正しいお金の使い方といえるよね」
「なんで、お前のメイド姿に一000円も! それこそ、無駄遣いだろ」
「ちゃんとご主人さま、お帰りにゃん。お疲れにゃんって言ってあげるから」
「うーん、出来れば、ご主人さま、お帰りにゃんの後は、わたしを食べるにゃん? それとも、私とお風呂に入るにゃん? それとも、私と寝るにゃん? がいいな」
「そんなこと言うか。ばか!」
「ほら、置いて行くぞ。とりあえず高架下に行ってみよう」
怒りで、両手を握りしめて赤くなっている愛の手を取り、すたすたと先をいく達也。
愛は、手を取られてドギマギしている。
「ところで、達也、何を探すのよ?」
「いや、ホントの透視メガネや透視カメラ」
「そんなもん売ってるか!」
達也の手を手前に引き、愛の上段回し蹴りが、達也の顎先にヒットする。
脳を揺らされ、軽い脳しんとうを起こしている達也は膝を付き、目を白黒させている。
「あれ、私の蹴りは躱せるんじゃないの?」
「いや、愛のパンチラに目が行って躱すのが遅れた。お前、今日は光子ブラックホールのパンツ履いてないのか?」
「はははっ、ほら、最近暑くなってきたから、布面積を減らしてね。上はカップのとこだけ、下は二重になっている部分だけ、裏地に貼っているのよ」
「な、なに、それは想像するだけで、イケそうなシュチュエーション。さっそく、FGCを使わなくっちゃって、タブレットは置いて来たんだった!」
愛は、その時また背中じゅうの産毛が総毛立ち、快感と不快感が入り混じる、悪寒がはしったのだ。
(なんか、達也にFGCで狙われるたびに悪寒が走ってない? まさか、私自身が達也のよからぬ考えに対するセンサーになったとか?)
愛が達也の気持ちを読みとれるようになったのが、良いことなのか悪いことなのか自分でも判断が付かなかった。それで、思わず自分でも思っていなかったことを口走っている。
「ホント、罠を仕掛けてきたのに。デート気分で今日の本題を忘れる所だったわ」
愛が何気なく言った言葉も、達也は無視してスマホを見ていた。
「愛、始まったようだぞ。俺のタブレットに電源が入った」
「きっと、ローズ先生ね」
(まったく、達也は私の話を聞いていないんだから。どうするのよこの羞恥プレイの後の放置プレイ。後で絶対許さないんだから)と内心、愛は考えるが、達也との会話は続いている。
「ああ、中々のハッカーみたいだぞ。IDもパスワードもすぐに突破された」
「でも、いくらパソコンの中を探しても、FGCプログラムはみつからない」
「そういうこと、FGCプログラムはクリスタルUSBのキーが無ければひらくことはできない」
「私たちにも、三人ほど公安が付いて来ているわ。きっと、ローズ先生が言っていた護衛ね。達也、そこのベンチにでも腰掛けましょうか?」
「まあ、俺たちにとっては、本当に護衛になるかどうかわからないぜ」
「まあ、あの人たちがいる限りは、SEXは手を出せないだろうね」
達也と愛は、そんなことを言いながら、駅前のベンチに座って、モバイルのパソコンを立ち上げる。
「それにしても愛、俺から得たローズ先生のメールにマルウエアを送りつけて、先生の携帯を乗っ取り、さらに、先生の携帯から、公安と思われる人物にマルウエアを送り込んで乗っ取るとわな」
「そのくらい、私ぐらいの天才ハッカーなら朝飯前よ。スマホはセキュリティが甘いんだから、ほら見て、この地図、スマホのGPS機能から割り出した公安の位置」
「まあ、いままでも、ずっとつけられていたのはわかっていたんだが」
「ローズ先生が、達也のタブレットを見てどう思うかよね」
「まあ、いきなりタブレットから光子グラビティがでると驚くぞ」
「まあ、驚くというより、なにかセキュリティシステムが作動したと思うわね」
「じゃあ、さっそく、おれのタブレットを遠隔操作するか」
「ええっ、わかったわ」
お互い、そう話し合うと、達也は、クリスタルUSBをポケットから取り出し、愛に渡す。愛はそれを自分のモバイルに差し込んだ。
「ところで、光子グラビティは、ホントに、パソコンからタブレットやスマホに送れるの?」
「ああっ、自分のタブレットとスマホで試したことがある。発生させた光子グラビティは波動? と言うか、特定の周波数だから、電波を伝わることができるんだ。後は、音楽を配信するように配信して、スマホのスピーカーから発生させるんだ。でも、コントロールできるのは、スピーカーの神道が届く範囲の周波数を変えるだけ、タブレットの時のように細かい設定ができないから、ぐにゃぐにゃの世界が見えるだけなんだ」
「それでも、いいわよ。自分の周りの景色がそんな風に見えたら、一歩も動けないわよ」
「実際やった俺も、そうだった」
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