第25話 愛、やめろよ

「愛、やめろよ。ローズ先生だって、あんな目にあったんだから」

「色っぽい姿なら、恋さんの方がたくさんの人に見られているわよ」

「いや、そうじゃなくて」

「橘さん、そんなに言うなら、今ここで下着を脱ぎまショウカ?」

「ほら、みなさい。ローズ先生は、羞恥心が足らないんだから、目的のためには、ひと肌もふた肌も脱ぐタイプよね。比喩じゃなく」

「橘さん。それってどう意味デスカ?」

「愛も、ローズ先生も待てって。別に脱がなくても構わないって。どうせ、あいつらの狙いは、FGCなのは分かっているんだから」

「たぶん。それで、間違いナイデショウ」

「だから、このタブレットにFGCのプログラムが入っているんだから、これさえ、あいつらに渡らないようにしたらいいんだろ」

 達也は、クリスタルUSBについては、もちろん、ローズには話さない。

「このFGCについて、知っているのは、この三人だけなんだから、お互い助け合わないといけないだろう」

「達也、そうよね。珍しくまともなことを言ったわ」

「そうです。あの刑事の佐藤さんにも言って、私たちを警護してもらうように言いまショウ」


 その時、達也の携帯が鳴った。達也が、電話に出ると、それは恋からの電話だった。

「達也君、昨日は、授賞式の後どこにいってたのよ。探したんだから。携帯に電話を掛けても出ないし」

「ああっ、ごめん。ごめん。その色々遭ってさ」

「もう、仕方無いわね。全国大会の事について話合いたいんだから、今から、演劇部の部室に来てよ。お願いだから」

「そうだな。分かった。今から部室に行くよ」

「待っているからね」

「ラジャです」

 そう言って、電話を切った達也。


「篁さんたちには、絶対にFGCの件ばれないようにネ。とりあえず、私たちの警護の件は、佐藤刑事に連絡しておくカラ」

「ローズ先生、分かってるって。関係ない人を捲きこむわけにはいかないよ」

「達也、とりあえず、演劇部にいってみよう。金賞を採った後どうなっているか気になるし」

「だな」


 達也、愛、ローズは部室を出て、それぞれ目的の場所に向かった。

 達也と愛は演劇部の部室に。ローズは佐藤刑事に連絡を取り、佐藤刑事と待ち合わせ場所に向かったのだ。


 達也と愛は、演劇部の部室に向かいながら、さっきの話を続けている。

「達也。あのね、私、警察の人事を管理するサーバーに潜り込んでみたの」

「さすが、凄腕のハッカー。それで何かわかったか?」

「ローズ先生だけでなく、と佐藤って言う刑事も怪しかったわ。だって、達也の性癖を知っていたんだもの」

「いや、この際、俺の性癖って関係ないか?」

「ほろ、思い出してよ。こないだの事件で、達也に、なぜ、落ちたのか聞いた時、達也がローズ先生の夢中だったことを当たり前のように納得していたのよ」

「なるほど、確かに、知っていたな」

「だから、佐藤刑事の前職を遡(さかのぼ)ったり、通信の内容を覗き見たりしたのよ。ローズ先生は、偽名を使っていて、その前の経歴も全く不明。普通なら、前任の学校とかが在るはずなのに。全く無かったのよ」

「愛、それって前も言ってたよな? 今度は新しいネタでも拾ったのか?」

「そう、ELTの教師なのに、前任の学校がないなんって。でも、佐藤刑事は、分かりやすかった。刑事なのにそれまでの経歴がないのよ」

「愛、どういうことだ?」

「バカね。何をしているか警察内部でも経歴のわからない警察官って可能性は一つじゃない。

確信は持てないけど、あの二人、間違いなく公安でしょ」

「公安って、公安警察、政府のスパイ組織のか?」

「そう。潜入捜査が本職の人が、警察内部に潜入なんてね。ローズ先生は、私たちの監視役で、佐藤刑事は、後方支援みたいね」

「なるほど、それで、あの外国人たちのSEXって言うのは解ったのか?」

「それがね、全然わからないの。なにかの組織だとは思うんだけど」

「そうか、だったら、ローズ先生は公安と謎の組織のメンバーと言うことか? だったら、ますます、要注意が必要だな」

「うん。そうだね。こちらから、罠をかけるチャンスが在ればね~」

「まあ、無理だろうな。でも、引き続き、メールのチャックはお願いするよ。いつ、仕掛けられるか、わかったもんじゃないからな」

「そうね。気を付けるわ」

 達也と愛は話を終え、演劇部の部室に入った。


 一方、ローズは、佐藤刑事と極秘に会っていた。

「ミスター佐藤、光坂に光子グラビティのコントロールシステムについて聞いたわヨ。反射光だけがコントロールできるらしいノ。しかも、有効範囲はたったの直径一〇メートル。達也たちはFGCって呼んでいるみたいだけど、まだまだ実用レベルには遠いわネ」

「そうなのか? 残念だが、まだまだ、遊ばせておく必要があるな。それから、君たちを襲った奴ら、アメリカに捜査を依頼したんだが、弾に残った線条痕から、以前マフィアが使った銃であることが判明した」

「じゃあ、マフィアが、私たちを狙ったってこと?」

「ああ、だから、君たち三人に、極秘に公安が警護に就くことが決まった。マフィアの目的がそのFGCだとして、どんな活用方法を考えているのやら?」

「マフィアも、FGCが、まだまだ、実用レベルには程遠いという事が、わからなかったンジャナイ」

「なるほど、あの演劇の衣装は、それほど素晴らしかったからな。僕も興奮したが、いざ、ビデオを解析したら、反射光を乱反射させただけって回答が返ってきたからな。ミス。ローズの言った通りだ」

「じゃあ、私たちの今後の行動ハ?」

「三人に張り付き、警護しながら、更なる研究の進展を待つことになるかな?」

「待って、とりあえずFGCのプログラムは、光坂が持っているタブレットにあるらしいから、チャンスがあったらそのプログラムを頂くワ」

「なるほど、しかし、くれぐれも無理するなよ。ミス.ローズ、彼らに疑われているようだからな」

「分かってイルワ」

 ローズと佐藤は、今後の方針を決め、しばらく、達也たちを静観することに決めたのだ。

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