第10話 一方、ローズは外出先で

 一方、ローズは外出先で、篁恋から貰った写真をある男にメールで送った後、その男の元に電話を入れていた。(以下は英語で話されています)


「光坂達也が、撮った写真を送ったワ」

「ミス、ローズ、この写真がどうかシタカ?」

「これは、光坂が同級生を、画像修正アプリを使って撮ったラシイノ」

「画像修正アプリか。どうりで美人に写ってイル」

「なに、言ってイルノヨ。あなたは! この写真に写っている子を見たことがないから、そんなことがイエルノヨ」

「はあ、どういうコトダ?」

「一見、肌の明暗で、目とか鼻とか口を際立出せているようだけど、修正写真に見られるような不自然さが全くナイノヨ」

「なるほど、修正アプリを使っていないとイウコトカ?」

「ソウナノ。光子グラビティをなんらかの方法でコントロールしている可能性がアルワ」

「ワカッタ。分析班に送って解析サセル。しばらく、時間をクレ」

「エエッ、ワカッタワ」

「このコトハ?」

「もちろん、私たちだけのヒミツヨ」

「そうか。あちらさんには絶対ばれないようにシロヨ」

「分かってイルワヨ。祖国のタメニ」

「ああっ、祖国のタメニ」

 そう言って、ローズは電話を切るのだった。



その後、達也と愛は、ローズがFGCについて、何か尋ねて来るかと身構えていたが、それから、一か月の間、特になにもなく、相変わらず光子グラビティについて、何か発見があったら、ローズで試すように迫るだけであった。


 さて、日々、エロ写真を撮ろうとする達也とそれから守る愛とが、通常運転で過ごす日常が数週間過ぎるうちに、達也に篁恋から問題を持ち込まれていた。

 篁恋をFGCを使って撮った例の写真を撮って以来、やたらと、恋が達也に話しかけるようになっていたのだ。

 しかし今回は、少しせっぱつまっているようだった。昼休み、購買にパンを買いにいくふりをして、愛に目をごまかし、篁に呼び出された屋上に向かった達也。

「あの、篁さん。用事ってなんだよ。俺、購買にパンを買いにいかないと、昼飯抜きになっちゃうんだよね」

「昼ごはんなら、光坂君の分のお弁当も持ってきているから大丈夫よ」

「えっ、いいの。篁さん?」

 達也は弁当を受け取り、蓋を開ける。そこにはタコさんウインナーやハートにくり抜かれた人参など、女の子らしく飾り付けられた豪華なお弁当が目に飛び込んで来た。

「本当に食べていいのか?」

「ええ、」

 返事もほとんど聞かないうちに、弁当に箸をツッコミ、口に運ぶ達也。

「うまー。これって手作りなんだ。篁さんって、料理が上手なんだね」

「えっ、そうかな? でも、光坂君って橘さんの手料理も食べたことあるんでしょ」

「ああっ、愛か。だめだめ、あいつ凄い味覚音痴で、市販のカレールーを使って作っても、殺人的に甘いカレーが出来上がるんだ」

「甘いカレー!?」

「ほら、リンゴとハチミツそれからチョコレート。コクがでるからってぶち込むんだ。隠し味って概念が、愛の料理には無いらしい。俺自身は、隠し味は愛情だけで十分なんだけど。というより、食べる人のことを考えるなら、市販のものは、箱に書いてある作り方を変えずに、作って欲しい」

「そうなんだ。私のお弁当は、愛情たっぷりよ」

 そう言った後、しまったという顔をした篁恋。昨日、お弁当を作りながら、達也のことを考えていたことは、達也には秘密である。

「どうしたの。顔が赤いよ。篁さん」

「えっと、違うのよ。お弁当を作って来たのは、光坂君。あの、ちょっと協力して貰いたいことがあるから」

「なにを協力するの。篁さん?」

「前に、演劇部で、劇の公演会を開くって言っていたでしょ」

「ああっ、あれ、確かシンデレラをするとか言ってなかった?」

「そうなの。で、シンデレラが舞踏会に出かけていくドレスなんだけど、予算が無くて、いいのができないのよ」

「予算の問題を、俺に言われても……」

「そうよね。でも、写真屋だから、レンタル衣装とかがあるかと思ったんだけど? できれば、安くレンタルできないかなっと思って」

「ああっ、そういう事か。ウエディングドレスなんかいいのをレンタルするとウン十万するやつもあるかなら。でも、うちもドレスと言うのはないかな。そういう写真は、結婚式場に派遣されて、撮りに行くことが多いから」

「やっぱり、ダメか……。折角いいティアラとガラスの靴が出来たんだけどな」

「ティアラとガラスの靴だって?」

「そう、いえ、さすがにガラスは……。プラスチックなんだけど、それに予算を食いすぎちゃって」

「ガラスやプラスチックといえど、光の当て方によっては、ダイヤモンドの輝きに匹敵する場合もあるよな」

「えっ、なに」

 ぶつぶつ言う達也に、思わす聞き返した篁だが。

「篁さん。少し思い付いたことがある。そのティアラとガラスの靴、見せてもらっていいかな」

「それなら、部室にあるのよ」

「そうか、だったら、放課後だな。」

「えっ、衣装の件は?」

「ああっ、今、思い付いたことがあるんだ。大船に乗った気でいてよ」

「本当に?」

 思わず達也の手を取った篁だったが、達也の方は女の子にいきなり手を握られて、びびってしまった。なにしろ、愛以外の女の子と手を握ったのは、えーっと、思い出せないくらい昔にあったかも知れないのだ。


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