第4話

 ある日の夜中。誰かの話し声で目が覚めた。おばさんと、お父さん?

 いつものお父さんとは、まったく違う声音だけれど―。


「現実的に考えて。3人目からは、養育税が3倍よ。とても無理でしょ?」

「でも姉さん、俺、捨てるなんて無理だ。これからもっとがんばって働いて、生活ももっと切り詰めて―」

「これ以上! どうやって!?」

 ばんっ! とテーブルを叩く音とおばさんの怒鳴り声が聞こえ、それから静寂が訪れた。

「あのね。あなた、今、目いっぱい、働いているんでしょ? それで、その収入で、やっていけてる? 違うわよね。私がこうして食べ物とか持ってきて、ようやく親子暮らしていけてるんじゃないの。なのに、どうやって?」

「それは―」

「子どもの養育税は、1人につき月額1万。2人まではね。でも、3人目からは、3倍。1+1+3じゃないわ、3×3、つまり毎月9万、今までより7万も増えるのよ。あなたの稼ぎが、週4万。月にしてざっと、16万。それでどうやって、やっていくの?」

 再び、静けさ。そして弱々しいすすり泣き。まさか、お父さん? 泣いてるの?

 話の意味はわからなかったけれど、いつも頼れるお父さんがあんな風に泣いたことは、私の心に大きなショックを与えた。


        ***


 半年が過ぎて、赤ちゃんの弟が家にやって来た。私もポリーも大興奮! 

 だけど、ポリーの時ほどに、お父さんお母さんは嬉しそうではなかった。どうしてかしら? 一方で、おばさんは上機嫌だった。赤ちゃんを覗き込んでは、ようやく後継ぎができた、これで我が一族も安心ね、と言った。


 その夜はお祭りの夜で、町中大騒ぎ、花火が後から後から上がって、私とポリーは窓からそれをいつまでも眺めていた。


「お祝いね、おたんじょびおめでとって! すごいねえ!」


 ポリーは、お祝いはみんなお誕生日だと思っているのね。ふわふわの赤い巻き毛を撫でてあげながら、そうね、と答えた。

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